第35話 大聖女がやってきた
ハンターギルドから家に戻った。先ほどプレシャスと一緒に夕食を済ませた。
「今日は討伐や踊りで疲れた。でも楽しかった」
「アイ様が楽しまれて、イロハ様も喜んでいるでしょう」
「プレシャスも強くて凄かった。中位魔物なら余裕で倒せるの?」
「ほとんどの魔物には問題なく勝てます。ただアイ様の楽しむ姿が優先です。わたしが倒しても面白くありません。アイ様の活躍をイロハ様は楽しみにしています」
「イロハお姉様の世界を楽しむには、中位魔物を倒せる力が必要?」
魔物退治は手段であって目的ではなかった。過度な力は考えていない。
「複数の中位魔物を、仲間と一緒に倒せるのが目安です。旅の途中では盗賊に襲われることもあります。複数相手に対応できる実力が必要です」
「襲ってくるのは魔物だけではないのね」
いくらプレシャスが強くても、一度に守れる範囲は限度がある。仲間も重要だった。
「アイ様、大聖女の気配がします。残りの気配も今までと同じ二人でしょう」
「気配だけで誰かわかるの?」
「特徴ある気配なら特定できます。大聖女の気配は独特です」
マユメメイはイロハ様に会っている。気配に特徴があるのかもしれない。席を立って玄関へ向かう途中で、マユメメイの声が聞こえた。
一緒にいたのはタイタリッカさんとキキミシャさんだった。普段はこの三名で行動しているみたい。テーブルのある部屋へ案内した。
「すぐに飲み物を用意する。座って待っていて」
飲み物を配り終わって席に着いた。目の前にいるマユメメイが私の顔を何度か確認している。またイロハ様の気配を感じているかもしれない。
「アイはハンターギルドで何していたの?」
イロハ様ではなかった。日中に如何していたか知りたいようね。
「今日は初めての討伐依頼だったのよ。魔物を退治してハンターギルドで報告したよ」
「無事に達成できてよかったの。でも酒場にも行っていた気がするの?」
酒場に行くところを見ていたようね。気づかなかった。プレシャスなら気配で分かったかもしれない。でも危険はないから言わなかった可能性もある。
「踊り子で働いているのよ。今日はパメナナさんと一緒に踊って楽しかった」
「他の人と一緒に踊っていたの?」
マユメメイが立ち上がった。驚いているようでもあった。
「パメナナさんは踊りと音楽に興味があったみたい。話の流れで一緒に踊った」
「ワタシもアイと一緒に踊りたいの」
「いつでも歓迎よ。マユメメイの踊っている姿を見たい」
「今日にも踊りたいけれど」
マユメメイがキキミシャさんに視線を向けた。何か確認しているみたい。
「今日はこのあとに予定が入っていますわ。あまり長居はできないかしら」
「無理は言わない。でもこの街を出発する前に、もう一度この場所に来たいの。またアイにも会いたい。この場所は神殿よりも落ち着くの」
「明日なら少しだけ時間を作れます」
「キキミシャ、調整をお願い。アイに会う時間を作ってほしいの」
「神殿に戻りましたら調整しますが、昼食の時間帯なら平気だと思います」
キキミシャさんが答えた。日程管理はキキミシャさんの仕事みたい。
「王都に戻るの?」
「ちょっと用事があるの。また戻ってくるから安心して。明日の日中は平気?」
大聖女としての仕事があるのね。しばらく会えないかもしれない。寂しくなる。マユメメイとはもっと一緒にいたい。でも私が言えば困らせるだけよね。
「大丈夫よ。明日は手料理を作って待っている。時間があれば一緒に踊ろうね」
「楽しみなの。今日は予定があるから、もう少ししたら帰るの」
明日の会う時間だけを確認した。慌ただしさの中で、マユメメイたちは街へ戻っていった。明日の昼食は気合い入れて作っておきたい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます