第12話 堅固なサファイア魔法
食事を済ませて今日の予定を考えた。テーブルの上にはプレシャスがいる。昨日の夢を思い出した。
「イロハお姉様に会ったよ。上位魔物が現れたみたい。何か知っている?」
「国境付近に出現したと聞いています。どの国に向かうかは不明です」
「プレシャスは上位魔物相手でも平気? この街が危なくなったら戦ってくれる?」
「上位魔物は別格です。戦わずにアイ様を守るように指示されています。中位魔物までならアイ様の希望で手助け可能です」
「上位魔物に近づかないのが一番ね。遠くからでも確認できるの?」
「近くに来れば気配でわかります。アイ様には危険が及ばないようにします。安心してください」
「危なくなったら助けてね。魔物の気配を感じ取れるのは、使い魔の特性なの?」
「相手の気配を感じ取れる力なので、訓練すれば人間でも可能です。すべての生きものには気配が存在します。この家にはイロハ様の気配が残っています」
魔物や使い魔だから考えすぎたみたい。人の気配を感じる経験は日常生活であった。
「私も魔物の気配をわかりたい。凶暴な魔物に遭遇する危険も減る。自分の身を守れる力もほしい。今日は防御魔法を覚える。上位魔物は別にしても街や森へ行くのに役立つ」
「魔法を作るのですね。どの宝石を使うのでしょうか」
プレシャスが近寄ってきた。目を輝かしている。プレシャスも宝石に興味を持ってくれた。一緒に宝石を語れるのは嬉しかった。
「色々とあって迷う」
「宝石の種類によって、魔法の効果は変わるのですか」
「基本はどの宝石でも構わないみたい。でも魔法の効果を連想できる宝石ほど、威力を最大限に発揮できる。連想だから、私が感じたままに宝石を選ぶつもりよ」
どの宝石でも魔法が成立するのは嬉しかった。色々な宝石で楽しみたいから、異なる宝石を使って魔法を作りたい。
「好きな宝石で使えるのですね。今回はどの宝石ですか」
「宝石はサファイアで決めた。理由はルビーと同じ。硬度が高いのよ」
「サファイアはどれでしょうか」
宝石魔図鑑を出現させて、頁をめくった。青色の宝石が立体的に出現した。
「見た目はルビーと異なるけれど、同じ鉱物のコランダムになるのよ。赤色のコランダムがルビーで、青色がサファイアよ。それ以外の色はファンシーカラーサファイアね」
「同じ鉱物なのに呼び方が異なるのですね。興味深い話はありますか」
「一番は色の違いでの呼び方ね。赤色と青色以外は、ファンシーカラーサファイアと呼ばれている。たとえば似たような色合いで、ルビーとピンクサファイアがある。でも価格はルビーが高いのよ。近い色合いになると私には区別がつかない」
宝石は大好きだけれど専門家ではない。微妙な違いはわからなかった。宝石も好みと価値に違いが存在する。ブラックオパールは裏側が黒色ほど価値は高い。でも私は裏側が灰色で、淡い色合いを見せるルースが好きだった。お手頃価格で買えるのも嬉しい。
「ルビーには稀少な色がありましたが、サファイアもありますか」
「ファンシーカラーサファイアでは、パパラチアサファイアが有名ね。ピンク色とオレンジ色が混ざり合った色合いよ。通常の青色ではコーンフラワーブルーね。上品な色合いと鮮やかさが特徴よ。今回の魔法はコーンフラワーブルーで決まり」
コーンフラワーブルーの写真を見せた。立体映像には色合いや産地など、表示させる種類を選べるのが嬉しかった。
「柔らかな青色で清々しい気分になります。どのような魔法効果を持たせるのですか」
「基本は壁にしたい。魔物の体当たりや攻撃魔法を防げる強さがほしい。色合いはコーンフラワーブルーよ。でも向こう側の状況を知りたいから壁は半透明にする」
「大きい壁が出現するのでしょうか」
「宝石魔図鑑には、数名が入れる半球形状の壁で書くつもり。基本は壁だから手に持てる盾にも変形できそう」
心の中で想像して魔法を唱える。宝石魔図鑑よりも優先されて自由度が高かった。
「ルビーの剣にサファイアの盾ですか。一度見てみたいです。でもアイ様、無謀な立ち振る舞いは控えてください。怪我してしまうとイロハ様が心配します」
「注意する。呪文も考えて、書き終わったら庭で試すね」
魔法の効果と呪文を宝石魔図鑑に書き込んだ。魔法の準備ができた。プレシャスと一緒に庭へ向かった。魔法の練習にはちょうどよい広さがあった。
「さっそく試してみる。
ルースが出現して青い光が飛び出した。青い光は半球形状の壁になった。まるで半分にした巨大シャボン玉の中にいるみたい。壁は厚みを感じさせなかった。
「宝石のような青色で透けていて幻想的です。見た目は防御魔法と思えません」
「宝石を使うから見た目も重要視したかった」
「矢車とは何を指しているのでしょうか」
「コーンフラワーは矢車草の別名ね。サファイアの色が矢車草の青色に近かったのよ」
「国によって言葉が異なるのと同じですね。魔法の威力は確認しますか」
「防御能力は森で試してみる。あとは盾に変形できるかね。一緒に剣も出したい。矢車サファイア。星剣ルビー」
サファイアの横にルビーのルースが出現した。サファイアの上には青色の丸い盾が、ルビーの上には赤色の剣が完成していた。右手に剣を左手に盾を持った。両方とも私が簡単に持てる軽さだった。宝石魔図鑑をしまった。ルースのみが私の近くで浮いている。
「この状態で半球形状の壁のみを消してみる。クリア」
剣と盾が残ったままで、半球形状の壁のみが消えた。二つのルースもそのまま存在している。複数の魔法が発動していても、心で思った魔法だけを消せるとわかった。
「複数の魔法を使い分けるとは、アイ様は魔法になれてきたようです。精神的な疲れはありませんか。この世界の魔法では魔力を使うため、複数同時は訓練が必要です」
「今のところ疲れは感じない。魔法の確認が終わったから森へ行きたい。防御力の確認と食材も確保したい。動物を狩って肉料理もよさそう」
プレシャスと一緒に家の中へ戻った。
イロハ様の発言を思い出した。
「イロハお姉様が地下に収集部屋を作ってくれた。何処から入るか知っている?」
「寝室の中に目で見えない扉ができています。アイ様が手を合わせると開きます」
目を覚ましたときには気づかなかった。寝室に扉があるのね。プレシャスと一緒に寝室へ向かった。中に入って見渡したが扉はなかった。
「扉は何処にあるの? 昨日までと変わらない」
「ベッド近くの床に模様があります。手をかざしてください」
床は気づかなかった。よく見ると一つだけ異なった模様があった。模様の中央部に右手を乗せた。音もなく扉が現れた。取って部分で持ち上げると簡単に開いた。
「中に入ってみる」
地下への階段があって壁が明るく光っていた。階段が終わると別の扉が現れた。この扉の中央にも同じ模様があった。右手を当てると両側に扉が開いた。中に入ると何もない空間があった。
「収集部屋だから何もないのね。充分な広さがあるから、いっぱい品物を置けそう」
「アイ様が集めた品物で埋め尽くせば、イロハ様も喜ぶでしょう」
「この世界での楽しみが増えた。イロハお姉様に感謝したい」
集めた品物で収集部屋を埋め尽くす。夢を思い浮かべて収集部屋をあとにした。
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