第3石 サファイア
第11話 女神様との再会
使い魔のプレシャスと寝たはずなのに星空が見える。見覚えのある景色だった。
「アイに会いたくて呼びました。少しは私の世界になれましたか」
顔を向けるとイロハ様がいた。ダイヤモンドのように輝く本物の女神様だった。
「またイロハお姉様に会えて嬉しい。常識を覚えるのが大変よ。でも魔法を使って楽しんでいる。プレシャスも優しくて、一緒に宝石の話をできるのが嬉しい」
「愛しいアイ。あの子から状況を聞いています。アイは常識知らずのようですね」
「元の世界と異なるからよ。イロハお姉様の世界は、新発見ばかりで興味が尽きない」
「楽しんでいてよかったです。私もアイの生き生きした姿が見られて嬉しいです」
イロハ様が抱きついてきた。まだ慣れなくて恥ずかしい。少女の姿だからか、頭を撫でられて頬ずりされた。緊張が和らいだ頃に開放された。
「伝えたい内容があります。ザムリューン国の国境付近に上位魔物が出現しました。家の加護では上位魔物を守れません。危険なときは、あの子が助けてくれるでしょう」
「数十年に一度出現する、強い魔物よね。今いるリガーネッタが危ないの?」
中規模の街だけれど、それほど上位魔物は強いかもしれない。
「アイは私の加護があります。大丈夫です。でも無理は禁物です。愛しいアイが怪我する姿は見たくないです。街への破壊規模はザムリューン国の対応次第でしょう。大陸全土に破壊が進み、世界破滅の要因になれば私が人間に提言します」
「街程度の破壊なら、イロハお姉様は人間を助けないの?」
多くの人間がイロハ様を女神様と崇めている。神殿を建てて信仰していた。
「自然の摂理に反する行為はしません。国ごと消滅するような世界破滅に繋がる場合のみ関与します。人間は弱い生きものですが、魔物を退治してくれます。願いに応えて、特別に神聖魔法を与えました。これ以上は高望みです」
過度な加護はしないらしい。人間も自然界の一部だから肩入れは難しいのね。重要なのは世界破滅みたい。宝石魔法を作るときには注意が必要ね。
「イロハお姉様の考えが少しは分かったと思う。宝石魔図鑑で世界破滅するような悪さはしない。犯罪に荷担するつもりもない。でも自由な発想で魔法を作るのは好き。イロハお姉様の世界にも宝石があると聞いた。見たこともない宝石や品物も集めてみたい」
「宝石魔図鑑は万能ですが最強とは異なります。アイは満足していますか」
覗き込むような視線だった。私の考えを知りたいのかもしれない。
「私には勿体ないくらい素敵よ。宝石魔法の威力は一般魔法と同じで構わない。自由な魔法が作れて満足している。イロハお姉様の世界を今以上に楽しめる」
「アイの喜ぶ姿が見られれば私は満足です。私の世界を好きに楽しんでください。集めた品物をなくしたら大変でしょう。家の地下に収集部屋を作りました。アイの手でのみ扉が開きます。存分に品物を集めてください」
「イロハお姉様の気遣いが嬉しい。色々な品物を集めて楽しみたい。でもどうしてイロハお姉様は、私にそこまで親切なの?」
疑問だった。本物のアイ様による手違いで私は消滅した。その償いで、姉であるイロハ様の世界で過ごせるようになった。私一人のためにイロハ様が、ここまで気を使うのが不思議だった。
「本物の妹であるアイとの絆だからです。最近の妹は少し反抗期です。地球の人間が科学技術で発展したのも反抗期の現れでしょう。その妹が私を頼ってきました。アイは私と妹を結ぶ掛け替えのない存在です。私なりのお礼です」
「私自身が何かした訳ではないけれど理由は分かった。衣食住が揃っていてプレシャスもいる。私には充分すぎるくらい、お礼をもらっている。宝石魔図鑑も嬉しかった」
「アイが喜んでくれれば私は満足です。それに本物のアイが私の世界を楽しんでいる。錯覚だとは理解していますが、アイはそれほどまでに妹に似ています」
また抱きしめられた。恥ずかしいけれど嫌いではなかった。イロハ様が女神様だからか温かい気持ちになった。
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