第4話 不思議なオパール魔法
覚えたい生活魔法と宝石が決まった。
「魔法に使う宝石はオパールよ」
「わたしの名前になった宝石ですね。遊色効果の意味も知りたいです」
まだ説明していなかった。オパールの頁を開いた。
「遊色効果とは七色に光がゆらめく姿で、プレシャスオパール特有の現象よ。眺める角度によって色が異なる。ぴったりの名前と思った」
「写真の宝石も色が変化しています。わたしの体を表現しているみたいです」
気に入って喜んでくれたみたい。これから長いつきあいになる。プレシャスとは仲よくなりたい。
実際のオパールを思い出した。
「身につけているペンダントは、ブラックオパールよ。元の世界から持ってきた貴重な宝石よ。イロハお姉様の加護も付加されている。何の加護か分かる?」
「イロハ様の溺愛ぶりがわかります。でも今は知らないほうがよいです。それよりも宝石をよく見せてください」
プレシャスは食い入るように眺めだした。顔の向きを変えている。遊色効果を楽しんでいるみたい。中石は一目惚れしたルースだった。元の世界と繋がる唯一の品物ね。
プレシャスが顔を上げた。見終わったみたい。
「覚えたい生活魔法は明かりと水と火よ。三種類の魔法に合うのがオパールね。明かりはホワイトオパール、水はウォーターオパール、火はファイヤーオパールよ」
「複数の種類があります。何が異なるのですか」
「一つ目は産出される地域よ。ホワイトオパールは地色が白色で、最大の産出国で多く採れている。ウォーターオパールとファイヤーオパールは別の産出国ね。この二つは色合いが異なるのよ。言葉どおりに水の青色と火の赤色ね」
写真の下側にはオパールの種類が書かれていた。ファイヤーオパールを触ると、色鮮やかなルースが出現した。斑がきれいに輝いている良質なルースだった。
「宝石の内部が鮮やかに変化しています。細かい紙吹雪を見ている感じです」
「この産出国特有の斑よ。斑は色の見え方ね。遊色効果がない赤色もファイヤーオパールと言う。個人的には今見ているルースで呼びたい。次はホワイトオパールよ」
オパールの種類を変えた。白色に七色の斑が踊っていた。
「不思議な宝石です。わたしの名前に関連するオパールに興味がわきました。またあとで教えてください」
「夜にでも教えるね。今は魔法を早く作りたい。今回の魔法は効果を継続できるようにしたい。形状も凝りたい。ホワイトオパールは可愛いハートシェイプよ。水の魔法はペアシェイプで決まり。火の魔法は多面体カットで輝きを増したい」
オパールは硬度が低いからカボションカットが多い。でもせっかくの魔法よ。好きな形状やカットのルースを見たい。
「明かりの魔法は中心部から全体的に照らす。水の魔法は噴水のように吹き出すと面白そう。火の魔法は激しさがほしい」
効果を細かく指定した。呪文も考えた。書いている間もプレシャスが覗いていた。
「これで完成よ。唱えてみるね。最初は明かりを灯す魔法よ」
初めて魔法を使う。詠唱後は変更できない。でも心の声で調整は可能だった。深く考えなくても平気みたい。ゆっくりと深呼吸した。宝石魔図鑑を手に持った。プレシャスが私を見つめている。
「
宝石魔図鑑が自動で開いた。ホワイトオパールのルースが飛び出した。私の周囲を漂っている。そのルースからハートシェイプのルースが出現した。浮いた状態でハートシェイプが明るくなった。
「凄いです。呪文は異なりますが周囲を明るくさせる魔法です」
「無事に魔法が成功してよかった。元となるルースが出現して、そのルースから魔法が発動されるみたい。次は点けたり消したりするね」
心の中でも可能と書いてあった。想像してから『オン』『オフ』を交互に唱えた。心の声に反応して明かりが点滅した。最後に『デリート』でホワイトオパールが消えた。
「無言で変化するのは初めて見ました。何を試したか興味があります」
「心の中で唱えたのよ。宝石魔図鑑は私の心と繋がっているみたい。魔法発動もできるか試してみたい」
先ほどと同じく想像してから『輝きオパール』と心の中で唱えた。
ルースが出現して、ハートシェイプに明かりが灯った。
「想定どおりに魔法が発動できた」
「驚きました。でもアイ様、人前では必ず詠唱してください。この世界の魔法は必ず詠唱します。呪文が異なる程度なら平気ですが、無詠唱は問題が起きます」
心の中での発動は便利だった。でも怪しまれて捕まるのは嫌だった。
「普段は声を出して詠唱する。心の中は魔法の威力のみ変更する」
「この世界を楽しむには、そのほうがよいと思います」
「イロハお姉様の世界を楽しまないとね。明かりのルースのみを消してみる。クリア」
基本のルースが残ったままで、ハートシェイプのルースのみ消えた。この状態で輝きオパールを唱えた。新たなハートシェイプが出現して明かりが灯った。
「次は水の魔法よ。
今度はウォーターオパールが出現した。文字通りに噴水のように水が吹き出した。
「ちょっと待って、水浸しになる。デリート」
ウォーターオパールが消えた。水も止まった。プレシャスは部屋の隅にいた。
「驚きました。避けるのが遅れて毛が濡れました。魔法発動時は気をつけてください」
「床が水浸しね。今度から注意する。次は火の魔法よ。でも屋内では危険よね」
庭に移動した。この場所なら周囲の木々からも離れている。プレシャスは離れた位置で待機していた。事前に心の中で想像すれば魔法に反映できるはず。火の大きさをロウソク程度に想像した。
「
ファイヤーオパールが出現した。そのルースから多面体カットのルースが現れた。ルースの上で火が揺らいだ。規模は想定どおりの大きさだった。
「近くで見ても平気ですか。急に火は暴れませんか」
「事前に大きさを調整したから大丈夫よ。この大きさなら火種には便利ね」
無事に最初の魔法を作り終えた。
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