第174話・辺境の惨状

 後日、とりあえず海外での滞在日数は最低15日間。そして場所はイギリスになった。


 イギリスといえば、言わずと知れた英語圏の国家。そして、現代においても貴族制度を残している国だ。


 そこで、急遽組まれたの今回のコラボである。


「領民たち、並びにKC諸君。ようこそ、我が辺境へ! これより、はくしゃんぽの時間である! 我が見回るぞ!」


 そう、貴族といえば伯爵だ。自ら辺境伯を名乗ってはいるが、伯爵が本来持っている爵位は伯爵。辺境伯を名乗るのであれば、権力的に考えれば侯爵のほうが近い。だが、残念なことにソーランド王国には侯爵がない。公伯騎男、この四つしか爵位がないのである。普通男爵は領地を持つため、騎士爵より階級が高い。だが、ソーランド王国ではなぜか騎士爵のほうが値段が高いのである。


「領民のみんな! 僕のKC! こんにちは! 今日は伯爵の領地に遊びに来たよ! それと、見て! これ、いつの間にか作られてた王子様風差分! かっこいいでしょ!?」


 本当にママは仕事のしすぎで心配になるのだが、僕のそんな差分を用意していた。頼むからそんなの後回しにして休んでほしい。

 今回は2D版を使用している。3Dより可動域は狭いけど、伯爵はまだ3Dを持っていないから仕方ない。

 ちなみに、桜ちゃんにはお姫様差分が将来的に作成されるらしい。


銀:かっこいいっていうか……超可愛い……

里奈@ギャル:男装してるお姫様にしか見えない……

さーや:やっばぁ……可愛い……

スギナ:うわ、めっちゃ可愛い子連れてきたじゃん!

ドクダミ:何この子……お持ち帰りしたい……

カヤツリグサ:あれ? 春風家の子じゃないよね?


 どうやら、伯爵は独自のファンも獲得しているようだ。強烈なキャラクター性を持ついじられ系伯爵は、とても親しみやすいのだろう。


「そう、春風家の者ではなく本家の方だ。分家が辺境伯なのだ、本家は公爵様である! 失礼のなきようにするのであるぞ!」


 もう十分失礼されている気がする。かっこいいつもりだったのに、四方八方から可愛いと言われているのだ。


 でも、それを言及する前に言いたいことがある。


「伯爵のファンの人、みんな雑草の名前じゃん!」


 そう、名前からして伯爵いじりなのだ。


「ふふん、気づいたであるか!? しかも、雑草の中でも早期に対処が必要な厄介な雑草を名乗っているのである! おそらく、例年の雑草被害はこの領民共のせいだ!」

「ダメじゃん!」

「しかし、我が領地はほぼ雑草組のおかげで回っているであるぞ! 肖像画を多く寄贈してくれる! おかげで、他領から食料を買い付けることができるのである!」


 そう自慢しながら、裏でこっそり保存したファンアートを伯爵は見せてくれた。何故だか、ものすごく多い。しかも、ツブヤイッターで直接投げつけてもらえるのが羨ましい。


 僕のファンは、直接送りつけてくれないのだ。みんな、僕のことを綺麗に書いてくれるのに、ステルス投稿ばかりするのだ。おかげで、僕はファンアートのエゴサーチが大変だ。


「でも、畑ダメになってるよね!? もうやめたら!? 農業!」


 それもひとつの道だと思う。芸術品を生み出すタイプの領地に設定変更するべきな気がする。


「我……伯爵の才能無いであるか……?」


 と、伯爵は落ち込んでしまう。


オヒシバ:無いね!

コニシキソウ:よっ! ポンコツ伯!

カタバミ:スプリングウィンド領ではドクダミくらいしか取れなぁい!!!

お塩;伯爵がかわいそうで、目からお塩出てきたぜ……。

わー!ぐわー!?:無料でコンサート開いてあげるから、落ち込むなよ……

チャイが好きィ!:バンドやろうぜ! 開催地スプリングウィンド領な!


 さすがに、僕もちょっと伯爵が気の毒だった。伯爵ファン、もうちょっと手加減してあげていいんじゃないだろうか。これでも一応領主の設定なのに……。


「まぁまぁ、人望はあるよ! だって、肖像画いっぱいもらえるんでしょ?」


 正直、ファンアートをもらえる速度は僕を凌駕しているのではないだろうか。

 しかも、中にはやたらクオリティの高いものもある。本当に貴族に献上されたのではないかと思う程の者もたくさんだ。


「リン卿が天使なのだあああああああああ! さすが公爵家なのだあああああ!」


 どうしよう……。伯爵がちょろい。ちょっと慰めただけで大号泣だ。そもそも、流れ作っちゃったの僕なのに。これじゃまるで、マッチポンプだ。


「てか、卿!?」


 奇しくもそれが、本日の本題への切り口だった。

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