愛情たっぷり！ 歳下ママに産み落としてもらったから、僕弟Vtuberになります！ ～僕を拾ってくれたママが全力で才能を見つけてくれたから億万長者！ 帰ってこい？ あなたたちは僕を捨てたんですよ！？～

第153話・春嵐

『私、ナイト・スプリングウィンド辺境伯と申します！』

　僕は、動画を一時停止した。

「まって！？　春風どこいったの！？」

　声は予想通り伯爵だった。深く渋みのある伯爵の声は、用意されたディザー用イラストとマッチしている。貴族らしい華美な服装と、深く年輪の刻まれた風貌に。

銀：辺境伯ｗｗｗｗｗｗ

デデデ：一発目からキャラが濃すぎる……

赤羽隼人：好みだなぁ……でも俺には麗清さんがいるしなぁ……

フォルセ・アフィグル：隼人ｗｗｗ

　そのキャラの濃さに、もうみんな大爆笑だったみたいだ。コメントもどんどん流れていく。

「ちなみに、この人本当に伯爵なんだよ。ソーランド王国の伯爵位持ってる」

　言っておいたほうが面白いと思って、言ってみた。すると、またコメントが加速する。

Alen：設定じゃないんかーい！

里奈＠ギャル：それ面白すぎるって。ガチ伯爵なVTuberなんていなかったじゃん！

三森アイナ：秋葉家ずるい！　後輩にこんな人欲しかった！

　あまり、この一言に時間をかけてもいられない。胃もたれするようなキャラを覚悟して、僕は再び再生ボタンを押した。

『これよりご紹介するは、我らスプリングウィンド家の弟妹たち。とくとご覧あれ！』

Mike：画風が変わった！？

シルフェ・ソヌス：あのあたり画風が違うからとか言われそう……

清水川麗清：未散さんは、豊かな画力をお持ちですね。本当に人の子なのでしょうか？

　ママはすごいと僕も思う。何せ、次の人の紹介に移ると、別の人が書いたようにすら見えるのだ。

『当主が失礼！　本家末弟の弟子になるのが夢の春風唄だよっ！　春風家の長女やってるから、よろしくね！』

　やっと、とてつもなく濃いキャラから解放された。そして、その声はNANAMIさんのそれだった。だけど、僕が前世を言うわけにはいかない。

　というか……。

「本家末弟って、僕！？」

　ロックオンされている……。

初bread：秋葉家マジか！？

お塩：大型新人なんてもんじゃねーぞ！？

秋葉リンの兄：秋葉家は音楽業界を征服するつもりか！？

　まぁ、音楽業界の人にはバレるよね……。元日本一の歌姫だし。

　歌うま勢はやばいのかもしれない。唄さんことNANAMIさんにロックオンされてる僕。誘えば受けてくれる、Necoroさん。提携している涼のプロダクション。

　作曲も、Ryoお兄ちゃんと定国お兄ちゃんが居る。

　もしかしたら、本当に天下取れるかも知れない。

　停止していなかったせいで、次の紹介に移った。

『えーっと。バーチャル一般人の春風創介です。プログラミングとか、得意です！　春風家を今後共よろしくお願いします！』

「あぁ……普通の人だぁ……」

　創介さんは順平さん。その一般人という特徴が、キャラクターの濃い春風家の中では清涼剤になってくれている。だからこそ、創介さんはとても魅力的に映った。

さーや：ウケる……一般人なのが逆に逸般人

ハルト：休憩所かな？

腐海の魔女：で！？　ホモなの！？

　多分、ホモではない。そもそも、ホモではなくゲイというべきだ。

　腐女子向けコンテンツは隼人さんに担当してもらいたい。

『春だー！！！　春だ春だ春だ！』

「うわっ！？」

　僕が温度差にびっくりしたところで、ツッコミが入った。

『まだ、12月ですよー？』

『ふぅゆだー！！！』

　疑いようもなく、クロノ・ワールからの移籍組の二人だ。

『ユエはもう少し落ち着きましょうねー？』

『落ち着いていられいでか！？　春、それは出会いの季節！　つまり、ラブコメ開幕じゃあああああああああああい！　というわけで、春風のマシンガントークドスケベモンスター！　春風ユエです！』

「ドスケベはまずいって！！！！」

　ツッコまずにはいられなかった。元美月シズクさんは、秋葉家でもセンシティブを貫くみたいだ。

『ユエは馬鹿だけど、とってもいい子ですよー！　和泉共々よろしくお願いしますねー！』

　霰さんは、春風和泉という名前になったみたいだ。

『なにおうー！？　妹の分際で生意気だぞ！』

　ユエさんのその声は、フェードアウトしていった。音量を絞られて、それが０になるまで二人で言い合いをしていた。ユエさんは、本当にマシンガントークモンスターだ。

Necoro：温度差で風邪引きそう……

Wighdodo：楽しげなお二人だとワイトは思います……失礼、滑り散らかしました

Ghowl：和泉さんの方が好き……かな……

　アリアン・アルトのみんなもいつの間にか来てくれてたみたいだ。

　さて、最後の一人。僕のライバル設定の、サクラさんが来る。

『春、全開！　一日16時間の全力疾走と8時間の睡眠！　みんな、ついてきてね！　歌も、ダンスもまだまだこれからだけど、体力なら負けないよ！　バーチャルフィジカルモンスター、春風サクラ！　リンよりもおねえちゃんなのです！』

「僕のほうがお兄ちゃんだからね！」

　ティザーで宣戦布告されるなんて思っていなかった。

　でも、サクラさんは蒼さんだ。体力も人外だし、パワーも人外だ。下手したらノラお姉ちゃんを超えるかも知れない。

Zompig：推すでござる！！　正統派ロリ！

銀：うーん、可愛いコラボの予感！

わー！ぐわー！？：アイドルソングが似合いそう！

　これで、ティザーPVを無事に見終わることができた。

「疲れた……春風家、すごい濃いなぁ……」

　でも、多分サクラさんで疲れるのは僕だけ。ファンのみんなにとっては休憩所として機能すると思う。すごくいいバランスだ。きっと春風家は成功すると思う。

Necoro：そういえば、アリアン・アルトは秋葉家のお隣さん扱いになったよ。

フォルセ・アフィグル：カサ・ブランコもお隣さん扱いをいただいてますよ！

シルフェ・ソヌス：私は友人……

「あ、本当だ！」

　公式サイトの一番下には、お隣さんとしてアリアン・アルトとカサ・ブランコが記載されている。

　アリアン・アルトはまだアイコンがなくcoming soonと書かれていた。だけど、全員の名前が記載されていて、アイコンスペースが確保されている。もしかしたら２Dモデルくらいは用意されるのかもしれない。

　そして、僕の友人としてシルフェさんも載っていた。

　これから、秋葉家はこの人たちといっぱい関わっていくことになるのだろう。

　なんだか少し、ワクワクしてきた。