第152話・秋葉公式HP

 いろいろなことが一気に進んだ。秋葉家本社ビルの着工、春風家ティザーPV動画完成、秋葉家公式ツイッター開設。そして、秋葉家公式ホームページのソースコードが完成した。

 そのソースコードは現在、僕とママが放送用に使っているPCと順平さんのPCに保存されている。


「よろしくね。広報担当さん!」

「うん! 任せて!」


 今、秋葉家で一番の拡散力を持つのが僕のチャンネル。だから、僕は広報を担当することになった。ママからもらったこの役割、誰にも譲る気はない。

 だから、僕は自信満々に言い切って、防音室に向かった。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 深く息を吸い込む。緊張は、少ししている。でも、大丈夫。僕が失敗したって、それも含めて愛してくれるのが秋葉家のファンたちだ。

 だから、僕は、放送開始ボタンを押すことになんの躊躇もなかった。


「お兄ちゃん! お姉ちゃん! 今日も来てくれてありがとう! じゃあ、やってくよ! 何も知らない秋葉リンが、秋葉家HPを見て、リアクションするだけの放送!」


 そう、今回の放送内容はただそれだけ。視聴者さんの目に初めて秋葉家HPが晒される。それと同時に、僕も初めて見る。

 正直な話、とてもワクワクしているのだ。


銀:公式HPキタ━(゚∀゚)━!

里奈@ギャル:一日万秋の思いで待ってた

デデデ:拡散は任せろ! バリバリ!

さーや:やめて! ごめん、拡散はして!

Mike:さーやも馴染んできたなぁ……


 コメントはとても賑わっている。


「え!? まって、同接やばい! 五百万!? なにこれ……」


 そう、それが一番やばかった。僕のファンなんて大抵は日本語のわからない海外勢で構成されている。つまり、他の秋葉家視聴者が見てくれているのだろう。


Alen:五百万は草生える

お塩:レジェンド乙


 そんなコメントが、爆速で流れていった。


 もうあまりに早すぎて、コメントが追えない……。と言っても、今回はリアクションを取るのが本題。コメントはそこまで見なくていいのだ。


「さて、じゃあ早速本題行くよ! ジャン!」


 僕は秋葉家のホームページを開いた。

 秋をイメージした色使いのホームページ。さすが順平さん。すごく、綺麗だ……。

 それは、視聴者さんたちも同じ意見みたいで、みんな感嘆のコメントをくれる。


「さて、所属VTuber……定国お兄ちゃん……35歳……35歳!? あぁ……うん、確かに貫禄あるしなぁ……」


 それは、バーチャル年齢とされていた。それが、全員に設定されている。定国お兄ちゃんはダントツで年上だ。

 孔明お兄ちゃん28歳。みっちーママ26歳……。ここで、僕の実年齢より歳下になってしまった。非常に残念だ。

 そんな感じで、秋葉家のバーチャル年齢は大半が僕より歳下である。


「さて……僕は……12歳!? アウトだよ!! それ、もう、小学生じゃん!」


 実際には僕は+15歳である。あまりに実年齢とかけ離れすぎて、それを演じきれるかが心配だ。


銀:12歳は解釈一致だなぁ……。

さーや:でも最近の子発育いいから、もうちょっと年齢設定下げても良かったんじゃない?


「やめて……僕をこれ以上、幼くしないで!」

 ちなみになのだが、それは春風家にも設定されていた。そして、僕と春風サクラというVTuberが同じ年齢である。


赤羽隼人:おぉ、サクラちゃんとリンちゃんが誕生日まで一緒! 


 他にもカサ・ブランコのVTuberたちも続々とコメント欄に現れた。


「うん、同じ年齢なんだよね……。もう、僕はサクラちゃんとのコラボがどんな内容になるか分かっちゃったよ……」


 多分サクラさんは蒼さんだ。そして、多分、コラボではどっちが末っ子かを争う事になるんだと思う。

 ちなみに所属VTuberのバーチャル年齢最年長は、春風辺騎さん。辺騎と書いて、ナイトと読ませるらしい。これには注釈があって、本当はさかきと読むらしい。なんと38歳だ。アラフォーだ。僕よりずっとおじさんだ。

 その春風家のところにはリンクが設置されている。これが、ティザーPVのリンクだと思う。


ベト弁:ティザーのサムネになんか貴族居ね?

初bread:貴族だけ画風が違う件……

ダン・ガン:待ちきれないぜ……


「よしッ……再生しよう!」


 そのサムネイルもかなり面白い。多分配置を考えたのは、ママだ。

 中央がその貴族。もう、僕にはもうその中の人が誰か想像がついて、思わず吹き出しそうになった。そして、その人の顔は辺騎さんのアイコンと一致してる。

 この人……伯爵だ……。

 なんとか堪えて、僕は再生ボタンを押す。

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