第139話・明転
『お、きたな。予想通りの時間だ』
孔明お兄ちゃんのその一言が、この大規模な、そして短い炎上の終わりが始まることを告げた。
Line経由でひとつのURLが送られる。それは、7ちゃんねるのものだった。
【真実究明】秋葉リン炎上【海外はリンちゃんの味方?】
1:以下名無しにかわりました海外ニキ観測部です
おい、海外でも燃えてるって思ってる奴、全然そんなことないぞ。
むしろ海外の大物がリンちゃん擁護に動いてる。
証拠がこれだ。
ツブヤイッター.jpeg
そこには、シモンさんから送られた僕宛の日本語のツイートが画像として添付されていた。
それを皮切りに、7ちゃんねるの住民たちが動き出す……。
2:以下名無しにかわりました海外ニキ観測部です
海外のツイート翻訳してみたけど、大きく二つに分けられる。
炎上した経緯を説明したツイートと、なんで燃えてんの? みたいなツイートだ。
3:以下名無しにかわりました海外ニキ観測部です
これさ、秋葉リンって別にエフェクター使ってなかった疑惑あるんじゃないか?
ファンの人居ないか?
てか、使ってなかったとしたら、ガチで人外じゃね?
4:以下名無しにかわりました海外ニキ観測部です
ファンだけど言わせて欲しい。リンちゃんの歌枠はいつも弾き語り。エフェクターを使ったなら楽器の音が歪むと思う。だけど、そんなこと全然なくて、とにかく綺麗なんだ。楽器の音も、歌声も……。
でも、それも要素の一つに過ぎなくて、本当に圧倒的な歌唱力に支えられてる。
よかったら、アーカイブを見て欲しい。
5:以下名無しにかわりました海外ニキ観測部です
だとしたら、NANAMIが批判的なコメントするなんてありえなくないか? IeCoの言うとおり乗っ取られてるのか?
6:以下名無しにかわりました海外ニキ観測部です
その説は本当にありえると思う。NANAMIが全否定したのは、これが初めてだ。
7:以下名無しにかわりました海外ニキ観測部です
これ、テレビ局やっちまってるだろ!? ファンにシモンがいなかったら、この陰謀は完遂できたかもしれない。でも、シモンが擁護に回ったら、リンが偽物だって言い張るのは無理だろ……。
8:以下名無しにかわりました海外ニキ観測部です
>>2 でQEDだな。アーカイブも聞いた。音程どうこうが偽物だとしても、あの感情表現だけは本物だとしか思えない。
9:以下名無しにかわりました海外ニキ観測部です
引用リツイート回せ! 祭りだ! 国内トレンド塗り替えるぞ!
10:以下名無しにかわりました海外ニキ観測部です
よっしゃきた! RT祭りだ! 海外ニキに加勢だ!
11:以下名無しにかわりました海外ニキ観測部です
心を全部支配されるようなあの歌が、偽物だなんて思えない。
12:以下名無しにかわりました海外ニキ観測部です
付和雷同してた奴らを、こっちに引きずり込め! リンちゃんの歌もなら、それができそうだろ!?
13:以下名無しにかわりました海外ニキ観測部です
それ行けるな! 日本のTLをリンちゃんの歌のURLで染め上げろ!
14:以下名無しにかわりました海外ニキ観測部です
盛り上がってまいりました!!!!
それは、悪質なウィルスがパンデミックを起こすがごとく、ねずみ算式に発言者を増やしていった。
次々と、海外ツイートが翻訳され、日本語に直されていく。そして、日本のツブヤイッターは一時間後に完全制圧された。
『さて、次の手だ。リンは放送を開始してくれ。間違ってもスパチャはONにするなよ?』
「はい!」
短い時間に日本は二度も塗変わった。テレビには、それだけの力がそもそもあるのだ。その力が、僕にそのまま流れ込んできてしまった。
怖くないといえば嘘になる。芸能人としての立ち振る舞いをしっかりと意識して、一分の隙も許されないだろう。
それでも、僕には支えてくれる人が居る。なら、決まっている。僕はただただ今までどおりを貫くだけだ。
「台本は?」
『こんかいはアリだ! 今送った! それと、リン。今回の件、カゲにぃとも相談してたんだが、偽計業務妨害になる。一銭にもならない示談をまとめていいか?』
状況は急激に動き出した。というより、孔明お兄ちゃんが裏でマルチタスク処理を実行していたのだ。
「いいですよ! どんな示談にするんですか?」
『偽計業務妨害をなかったことにする。代わりに、クロノ・ワール五期生とマネージャーをもらおうかと考えている』
その決断をするためには、ママの同意が必要だ。あくまで秋葉家はママが興したVTuber集団である。
「賛成! 嘘をつかされてるシズクちゃんがかわいそうだもん! 集合場所はママの家にしよっか!」
だが、そもそもの話、ママは辛そうな人を放っておけない。だから、それに賛同するのは当然のことだった。
『ありがとう! じゃあ、行動開始だ!』
通話が切れる。
僕はすぐに防音室に向かい、ママは電話どこかへ電話をかける。
きっと孔明お兄ちゃんと、カゲミツお兄ちゃんはこっちへ向かってきている。
反撃の準備が整ったのだ。
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