第136話・付和雷同

 刻々と状況は変化していった。ツブヤイッターでは三つの僕に関連したハッシュタグが生まれた。


 うち二つは日本で生まれ、それを受けて海外で一つが生まれたのだ。

 最初に生まれたのが、日本で生まれたタグである。


LiLia公式

#世界的VTuberの不正

やっぱりVTuberってそんなもんなんだなって思う。顔を晒す度胸もないオタクの集まり……。

そりゃ、不正もするよね……。


 このタグを使っているのは、NANAMIさんを信じたミュージシャンや芸能人、そのファンの人たちが大半を占める。


 だが、そのファン数は凄まじく、パンデミックのようにネット上に広がっていく。

 それに対して、最初に声を上げてくれたのが銀さんだった。


SilverIris

#秋葉リンの不正について

ありえないと、断言します。

コラボをさせていただいたことがありますが、秋葉リンさんはとても純粋な方です。

デビュー当時からファンをやっておりますが、そんなことをする人格ではないと思います。

また、オタクと呼び馬鹿にする風潮に関して、私SilverIrisは悲しく思っております。


 それをきっかけに、ダムが決壊したように『#秋葉リンの不正について』のツイートは一気に増えた。

 特に影響力が大きかったのは、Ryuさんのファンをやっていた人のツイートだ。


歌劇King

#秋葉リンの不正について

あの歌が偽物なら、歌手という職業はこの世界から消えるだろう……。

感情表現の極致だと、私は思っている。だからこそ、私は彼女のファンであるし、これからもそれを変えるつもりはない。

エフェクターであれが実現できるなら、だれが歌っても一級品になる。歌手にとっての絶望である。


 それは、多分わー!ぐわー!?さんのつぶやきだろう。


そると

#秋葉リンの不正について

そもそも、秋葉リンにはプロの音楽家をやっているファンが多数いる。それが見抜けないエフェクターがあるならなんでただの司会が見抜けた?

考えて欲しい。そうすれば気づく。ありえないことなのだと……。


アリアン・アルト公式

#秋葉リンの不正について

Necoroです。一緒に歌った経験がありますが、確かにその時よりほんの少し上手くなっていました。

しかし、ほんの少しです。

隣で、マイクすら通していない歌を聞いて、そう思いました。

エフェクターを使ったわけではないと断言できます。


 他にも、特に芸能人でもないファンの人もこのタグに参加してくれてている。

 同じように一気に拡散したけど、すぐに限界が訪れた。僕は国内ファンが少ないからだ。


 だが、海外に関してはその限りではない。僕は海外にとてつもなく大物なファンを抱えていたからだ。

 そのツイートは、立花お姉ちゃんによって翻訳されたものがダイレクトメールに届いた。


Simon official

#なぜ秋葉リンが炎上したのか?

とにかく情報を求めたい。

私は彼女のファンである。

彼女の歌は史上最高と言っても過言ではない。批判の余地などないはずだった。

日本語が使える人にお願いしたい。彼女が炎上した理由や経緯を教えて欲しい。


 シモンさんは、僕のファンの中で最も巨大な影響力を持った人だ。そのおかげで、僕は五千万近い海外ファンを獲得することができた。


 そんな影響力を持った人が、呟けば世界の側のトレンドが一瞬で塗り変わった。

 『#なぜ秋葉リンが炎上したのか?』それは国内ではほとんどつぶやかれないタグ。だが、世界のトレンド一位を獲得した。


 シモンさんの元に次々と情報提供のリプライが発信される。そして、シモンさんは僕に直接リプライを送ったのだ。


Simon official

@秋葉リン

もし、今苦しいならアメリカに逃げてきてほしい。

日本の芸能界に影響を与えられる影響は少ないけど、英語圏ならかなりの範囲で何とかできる。

今はアメリカに居る。来てくれるなら、歌手としてになるけど世界ツアーの約束をする。


 そのツイートは元をたどれば、一度Mikeさんに送られたものだった。シモンさんが、MIkeさんに翻訳を依頼して、翻訳されたものが僕に届いたのだ。

 世界の規模で見れば、僕には味方の方が圧倒的に多い。だけど、所詮日本は箱庭だ。


 言語の壁で隔絶されて、英語のツイートは多くの人に無視される。

 英語は、日本人にとって、読むのが面倒なのだ。

 だからこそ、シモンさんの声は、日本のトレンドに届かない。


 『#なぜ秋葉リンが炎上したのか?』それは、英語を読もうと思わない日本人に曲解された。秋葉リン、僕の名前が入っているということだけが注目され、僕は世界でも炎上していると判断する人が多数いたのだ。

 そして、炎上は一時的にさらに加速した。

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