第124話・決着
今日を僕は最終日にしたい。でも、そのための道筋は立っていた。
今日、といっても、それはゲーム内の今日。そして、誰を処刑すれば終わるかはわかっている。
「三日目、開始です! プレイヤーは中央広場に集まってください!」
フォルセさんの声。
さぁ、行こう。この狂ったゲームを終わらせるのだ。僕のできる最高効率で。
中央の広場には、8人が集まった。昨日は狼の襲撃によって誰も死ななかったのだ。考えられる可能性は、狩人が襲撃対象者を守ったこと。
「狩人COですよー! 今日の守り先は、霊媒師さんですー! さぁ、全てを明かしましょうー! 秋葉リンさーん!」
本物だ、明日羽さんが本物だったのだ。守られたのは僕、狂人すら飼い慣らして、僕たちは今から勝利を掴む。
「霊媒CO! ツカサさんは人間でした! そして、重長さんは人狼でした! 麗音さん、あなたが人狼ですね!?」
最初に出てきた人外は、隼人さん。ここが人狼である可能性は考えにくい。
「あぁ、負けた負けた! 人狼は麗音じゃなくて、俺だ。もうどうやってもひっくり返せねぇよ……。投票先は俺な!」
そう、この盤面は詰みだ。この人狼には私怨が渦巻いていて、とてもじゃないがまともな人狼とは言えなかった。ここから、人狼が巻き返す手段はない。
麗音さんが、真占い師とすれば僕の霊媒に矛盾が出る。そこで、人狼陣営は本物の霊媒師を立てなくてはならない。そのために潜伏させていたのが重長さんだろう。
それを僕ら村人陣営は、処刑することができた。
ただ、あえて自分を狂人に見せる生存戦略は面白かったと思う。
命をかけた局面では、あまりに大胆な生き残り方だ。
人狼陣営は運悪く、僕をパンダにしてしまった。それが敗因だと思う。
でも、それでもだ……。
「なんで? これから死ぬのに、一瞬の延命すら考えないのですか?」
僕はもう、心がずっと折れそうだった。他人を殺す判断をしなくてはいけない状況と、いつ殺されるかわからないこの状況に。
「うーん、まぁ、俺が処刑されればわかるさ……」
決着は、余りにも簡単についた。本当に良かった、シルフェさんも多分限界だ。これ以上続けば、本当に心が折れかねないと思っていたところだ。
あるいは、それを見て展開をひとつ省略したのだろう……。
「にしても、個人勢強いじゃねーか! 麗音様もびっくりだ!」
そう言って麗音さんが笑う。
今終わるというのに、心は晴れなかった。だって、もう人が死んでいる。
「ところで、なんだが。俺、麗清が好きだ」
隼人さんのそれに、麗清さんは動揺した。初めて、麗清さんが動揺するところを見た。
「な!? ひ、人の子は好きですが……は、隼人さんとはそこまで深いお付き合いではございませんでしょ!?」
麗清さんと隼人さんはお互いに男性。これが所謂ボーイズラブなのだろうか……。
「んなこと言われてもなぁ……その、余裕たっぷりな感じがマジで好き。麗清、付き合ってくれ!」
僕らは一体何を見せられているのだろうか……。
「わたしはぁ……リンちゃんとシルフェちゃんをお持ち帰りしたいですねぇ……」
と、そこに明日羽さんから爆弾が投下された。
「え!? ぼ!? 僕!?」
これは、生き残ったあとの話なのだろうか。きっと僕たちは全員刑務所に行く。僕らの手は、ひとり残らず血で染まっているから。
だけど、今一瞬だけはそれを忘れられた。
「麗音様はなぁ……実は緑とズブズブなんだよなぁ……」
「麗音……恥ずかしいから言わないでほしんだけど……」
なにか、なにかが決定的におかしい。シリアスなムードが消え去って、和やかな雰囲気が流れ始める。
「おやおや、決着がついてしまったようですね! どう思いますか? フォルセさん!」
「そうですね、カップリング開拓大会になっていますね! ではその和やかな雰囲気のまま行きましょう! 最後の投票ターイム!」
僕たちにはまた、投票用のタブレットが配られる。
投票先は全員一致の隼人さん。
「よし、じゃあ行ってくる……」
そう言って、隼人さんはフォルセさんの方へ歩いて行った……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます