第59話・MixCanticum

 今回のモデル撮影は短く終わった。だから午後、放送ができた。


「お兄さん、お姉さん! 今日も来てくれてありがとう! この前は変な終わり方してごめんね!」


 前回のライブ、そういえば涼が急に現れてしっちゃかめっちゃかになってしまった。


秋葉リンの兄:りんちゃん!!


「なんでお兄ちゃんいるんだよー!?」


 絶対これアレだ。中身は涼だ。僕には妹属性が似合っているとか言ってたし、間違いない。


 でも、こんな時でも僕は涼を実兄だと思い込まなくてはいけない。僕はみんなの弟であり続けるのだ。


銀:お兄ちゃん助かる

里奈@ギャル:性転換してくる

デデデ:てかさ、お兄さんお姉さんじゃなくて、お兄ちゃんお姉ちゃんにしない? そっちのほうが多分需要あるよ。

Alen:お兄ちゃんって呼んで欲しい。

Milke:私も、そしてシモンも呼んで欲しいらしい

初bread:シモン氏今日も来てるのかよ!?

お塩:おいおいやべぇなこのライブ。世界的な音楽プロデューサーが来るとか……

わー!ぐわー!?:シモンが兄堕ちした

ベト弁:このひとでなし!

Pine:いやひとでなしではないだろ? 型日ファンに怒られろ!

Glenda:イギリスの誇りがあああああ!

Elsa:Glenda……あなたもすぐにそうなるでしょう……


 Glendaさんは初見さんだ。さらっと来てくれた。


「初見さんいらっしゃい! じゃあ、これからみんなのことはお兄ちゃん、お姉ちゃんで呼ぶけど……いいかな?」


 ちょっと恥ずかしいけど、そもそももう十分恥ずかしいことは経験済みだ。大の大人が女児服を着て雑誌に載る、これより恥ずかしいことはあんまりないと思う。だから、それを思えばこんなのどうってことない。


銀:ちょっと恥ずかしそう……可愛い。もちろん読んで欲しい

里奈@ギャル:うへへ、お姉ちゃん……

Glenda:私がお姉ちゃんよおおおおおおおおおお!

Elsa:はやっ!?

Mike:シモンがGB押したがってる……

Alen:シモン……


 ほかにもコメントはたくさんだ。でも、全部その呼び方を望んでいるような声だ。だったら、僕はみんなをお兄ちゃんお姉ちゃんで呼ぶのは当然だ。


 さて、それはさておき……。


「そういえば、今日はKidsMonMo9月号の撮影だったんだ! それでね、とある人とコラボの話が出て、OKしといたんだ」


 その告知だって忘れちゃいけない僕のお仕事だ。


銀:ッ! しゃあああああああああああああ!

Glenda:え? なにそれ?

Alen:日本の子供向けファッション誌。秋葉リンはモデルもやってる。

Elsa:私たち、日本に住んでないから買えないけどね……

Mike:見たくてしょうがない……シモンも嘆いてる……

お塩:シモン氏ってそんなキャラだっけ?

わー!ぐわー!?:堕ちたんだよ

チャイが好きィ!:バンドやろうぜ! 会場アメリカな!

Glenda:なんで私は日本に住んでないんだろう……

里奈@ギャル:9月号楽しみだなぁ……あ、そうそう、リン君関連のブログあったよ。ちなみに、燃えてない。https://amoblo.jp/mirorin/entry-49490751

デデデ:お家芸が奪われた!!!


 そんな感じで、海外の人たちは日本に住んでないことを嘆いた。日本人は、9月号を楽しみにしているみたいだ。


「みんな、気づかないふりだよ! あと、ブログのことは後で見ておくよ!」


 アモブロは正直盲点だった。VTuberといえば日本ではヲタクだ。アモブロはそんなヲタクとはちょっと違う世界にも影響を与える。


 まぁ、僕はそもそも音楽系の有名人っていうヲタクじゃない人たちにも認知されているけど。でも、プロやそれに近い人たちだった。アモブロの人たちは非ヲタの素人の人もいる。受け入れてもらえるかな……。


里奈@ギャル:ダレダローナ……

銀:ワタシタノシミ……

デデデ:オレサマ、オマエ、マルカジリ

ダン・ガン:おいこら!

みっちーママ:こら、リン君で遊んだらめ!

銀:わーい、め! されちゃった!

里奈@ギャル:えへへ……ごめんなさーい


 みっちーママはすごい。このままカタカナチャットが続いて読みにくくなりそうだったのを、一瞬で戻してくれた。


「さ、じゃあ本番行くよー! リクエスト、どんどん送ってー!」


 そう、僕のライブの本番は歌だ。雑談はおまけ。


銀:「ありがとう」

Mike:SingingSea

Alen:Monochrome

Elsa:WindWalk

Glenda:MalumDiva

お塩:Rubrum

里奈@ギャル:「満月」


 コミケを終えて、すっかり僕たちの出したアルバム『MixCanticum』が定着したみたいだ。だって、みんなオリジナルソングばっかりをリクエストしてくれる。


「じゃあ、一曲目、ありがとう!」


 僕は今日も歌う。歌うのが好きだから。こんな大好きな歌うことを、みんなが求めてくれるから……。

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