第36話・ソロママ

 僕の配信が終わったら夕飯、そして、満さんの配信だ。今日の夕飯は、ローストビーフ。なんと、満さんが作ってくれたのだ。満さんの料理はプロ顔負けだと思う。


 当然、味はすごくい美味しかった。


 あと、初めて包丁を握らせてもらった。といっても、付け合せのミニトマトを半分に切るだけ。それなのに、僕が切ったトマトは、大きさがまちまちだった。


『こんばんわー! みんな今日もお疲れ様! みんなえらいえらい』


 ママの放送が始まる。当然のごとく、ママの配信には僕の放送から流れた音楽家な視聴者たちもいた。


銀:今日はソロママかぁ

剣崎:ママー!

里奈@ギャル:ママ待ってたー!

秋葉リン:ママー!

お塩:ふむ……ママー!

初bread:Welcome! あ、ママー!

Mike:オーマイガッ! リンの放送が見れなかった!

Alen:ママー!

デデデ:ママー!

わー!?ぐわー!:リンちゃんロス辛いンゴ!

ベト弁:ママって楽器やるの?


 ママの枠のコメント欄はいつも騒がしい。そしてついに、お塩さんがママに染まってしまった。


『ママは音楽ダメダメ! 音痴だし楽器も下手くそだよ!』


 でも、ママにそんなことは関係ないと思う。だって、ママにはほかに才能が有る。


ベト弁:じゃあリンちゃんに楽器送りつけてごめんね。どうしても、弾いてもらいたかったんだ。


 僕にヴァイオリンを買ってくれたのはベト弁さんだ。ベト弁さんがかったあと、Ryuさんの視聴者の人たちは自分が買えなかったことを悔やんでいた。僕にヴァイオリンを買うことが、なんだかプレミア価値があるみたいに思われてて笑っちゃう。


『気にしないで、ママもリン君にヴァイオリン弾いてみて欲しいもん!』


ベト弁;良かった……

里奈@ギャル:リン君ヴァイオリン始めるの?

剣崎:俺たちの弟がどんどん人外に……

銀:天使は人間じゃないからな……

ダン・ガン:どうせ一ヶ月で超絶技巧になるんだろ? 俺知ってる

Mike:オーマイガッ! リンちゃんのヴァイオリン、早く聴きたいです!

Alen:きっと演奏聞かせてくれる頃には、めちゃくちゃ上手くなってるだろうな

秋葉リン:一生懸命練習するよ! でも、ギターもまだ中途半端だからなぁ……

お塩:基礎知識だけ勉強すれば、リンちゃんのギターはプロレベルになると思う。頼むから満足してくれ。

初bread:もしヴァイオリン上手くなったらベト弁は「わしが育てた」できるね。羨ましいなこんちくしょう!

バッバ;ベト弁許すまじ


 そんな感じで、ママの枠は最近ほとんど僕の話になってしまう。


 お悩み相談のダイレクトメールが来ていないのだろう。


 それと、料理動画も最近アップロードしていない。今度、二人でやらないかと誘ってみよう。


『リン君のヴァイオリン楽しみだなぁ……。三日ぐらいで届くんだよね!? 早く三日経たないかなぁ』


 でも、ママは僕の話を楽しそうにしてくれる。だから、きっとそんなに罪悪感を感じなくていいのだろう。


秋葉リン:ヴァイオリンは楽しみだよ! 僕の中ではかっこいい楽器だから!


 僕はコメントした。すると、ママのモデルが微笑んだ。


『こういうところ、男の子で可愛いなぁ……』


 男の子らしさと可愛らしさは相反するものじゃないのだろうか……。


里奈@ギャル:この絶妙な男の娘感よ!

銀:てか、ゴスロリ着てるあたり、なにしても可愛いと思う。

デデデ:ただし美少女に限る!

お塩:てかさ、ゴスロリギターなVTuberって超独自路線だよね。弾き方も独自路線だけど。

初bread:しかも演奏が音楽家として評価しないわけにいかないレベルなんだよなぁ。


 男の娘、僕は気になってそれを検索した。少女のような外見をした少年という意味らしい。


 僕、別に少年じゃない。むしろおじさんだ。少女のように見えるおじさんの場合それは何と言うのだろうか……。


『ねー! 可愛い見た目で、かっこよさ求めちゃうとかまさに男の娘だよね。それに、リン君の演奏がプロ並みだってママでもわかるよ!』


 たった一ヶ月練習しただけで、プロ並みって言われちゃうのも僕には違和感だった。


里奈@ギャル:ヴァイオリンも独特な弾き方したり?

秋葉リン:流石に思いつかないや……


 ヴァイオリンの弾き方は一種類だけだと思う。弓で弦をこするだけ。でも、弦を弾いてもいいのかもしれない。


 この日も、ママの放送は大盛況で、ほとんど僕の話でおわってしまった。

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