第7話 筆頭の初仕事 解決編

「こっちに来い」襟首を捕まれ高梨教官に引きずられ端っこに来る。

「有働に佐藤 橋架君が拐われた居場所はわかるがうかつに近付けない」


「教官、俺が行きます、場所を教えて下さい」頭を下げてお願いする。クラスメートが不安そうに俺を見ている、野々瀬さんが俺が行くなら自分も行くと言って来た。


高梨教官が野々瀬さんを押さえる

「有働は、最悪の世代だ、マミちゃんを危険にさらす事は出来ない。と言うことで変態クンとミヤお願いね。私ら法律に縛られてるから動け無いし」険しそうに吐き捨てる。あの顔を見ると本当は自分が行きたいのだろうと予測が付く。何よりいつもの雰囲気とは全く違う怖さが有る。


野々瀬さんが驚き怒った顔で抗議した

「最悪の世代を相手に高藤を向かわせる何て、殺す気ですか?」野々瀬さんの必死さが伝わる。


最悪の世代は能力が強すぎ国を滅ぼすと言われる若い世代の個人に与えられた称号、この国に存在すると言われている数人に当てた称号で、要は誰も敵わないと言ってるようなものだ。それにしても殺す気かって!俺そんなに頼りなく見えるのかな?


高梨教官が野々瀬さんを押さえ

「筆頭がここでで張らないと筆頭の意味が無いでしょう?それに最悪の世代はミヤも一緒だし問題無いよ。大体、男がこう言う時にカッコつけないで何時カッコつけるって。こういう時は男に任せんだよ」ニコニコしながら言う。高梨教官、今だけはあんたが好きだ言えそうです。普段からこんな感じなら良いのに。


「野々瀬さん、心配してくれて有り難う。何か俺嬉しいよ。本当に皆に嫌われたって、本当におもってたよ。この2人の大人のせいで!」ちらっと見るとペロッてしてます。やっぱ、嫌いこの人。


「でもあの最悪の世代だぞ。命を大事にしなきゃ」野々瀬さんが泣きそうな顔で見ている。何だみんないい人じゃん。良かった。何とかこの人達とやっていけそうだよ。


野々瀬さんに近づき小さい声で

「野々瀬さん、無事に帰って来たら俺とデートして、そう約束してくれたら俺意地でも生きて帰って来る。キョウカさんも無事に連れ戻す、約束するよ」そう笑うとおもいっきり平手打ちされる。

野々瀬さんが「必ず帰ってこい」何か悲しい顔で言う。俺がおちゃらけた感じでグーサインを出す。さらっと無視された。


ごめんね。こんな時何て言って上げれば良いかわからなくて。


志島副教官と一緒に薫小隊長の元に行く。2人がいる場所まで案内してくれる事になった。


現場に着くと炎の壁が出来ていて侵入を押さえ拒んでいた。

「キョウカさん聞こえるかな?変態クンです。聞こえたら返事して」そう声をかける。自分を変態クンって、恥ずかしい!


「駄目!!!危険だよ。逃げて!」動きを感じないけど、この必死さは何か伝わるね。


でもこの子何ていい子なの?自分の事より俺なんかの心配してくれるの?こんないい子、見捨てられないよね。本気でそう思った。


「大丈夫、俺意外と丈夫に出来てるから」って、意味違うか。


志島副教官に合図を送り炎の壁の前に立つ


「キョウカさん、変態クン入ります」


そう声をかけると炎の壁に手をあてる、バイブレーターの能力では無いがいつまこういった物を阻害する事が出来る。両手を使い炎に穴を開け中に入る。有働が驚いたように俺を見た。


「どうやって炎の壁に入れた?」有働の言葉を無視してキョウカさんを見る。


キョウカさんは服がボロボロの状態でうつむいていた。服は破かれ胸が見え。下着が丸見えだった。俺の中で何かが弾ける。小さい頃の思い出が甦る、お姉ちゃん。俺はキョウカさんの前に来た…怒りで我を忘れそうだ!!!!!


近所に住んでいた、10歳年の離れたお姉ちゃんがいた。家族じゃ無いけど。その人はいつも俺の事を気にかけてくれて、いつも優しくしてくれた。特にあのデパート崩落事件の後からとにかく世話を焼いてくれて、飯を作れる迄になったのもお姉ちゃんのお陰だ。


俺が10歳時、お姉ちゃんの結婚式に呼ばれた。家族の席に座り、ばあちゃんと2人興奮したのを覚え入る。そんな幸せの絶頂をある事件が台無しにした。


俺がばあちゃんに頼まれお姉ちゃんの家に行くと、なぜか鍵が開いていて、中を覗くと家の中がぐちやぐちやになっていた。心配になり家には入るとお姉ちゃんが死んでいた。来ていた服が乱暴にち引きちぎられ子供でも乱暴されたとわかった。家に急いで戻りばあちゃんと一緒にお姉ちゃんの家に来るとばあちゃんがお前は入るなと言って警察を呼んだ。何故か昔の記憶が鮮明に甦る。


キョウカさんの前来て顔を向けないように上着を渡す「この上着、頭からかぶって俺の戦闘は見ない方が良いから」


「カッコつけんな、俺は最悪の世代だ。まして俺のテリトリーの中じゃ誰のどんな能力も使えない。お前より優秀なキョウカでさえこんな有り様だ」


有働の言葉を俺が無視して、志島副教官に声をかける


「ミヤ、上にかけるもの、キョウカさんの為に準備しろ」


「は、王子様気取りか。そんなに筆頭は偉いのか」

そう吠えると炎の玉が飛んで来た。俺が打ち払うと有働が何が起きたかわからない顔をしていた。


「ミヤ早くしろ。俺も我慢の限界だ」


俺の声に反応して辺りに空気の波が出来る、危うく炎の壁が揺らぎ消えかかる、消すところだった。そんな事したらキョウカさんの恥ずかしい姿を周りに見せる事なる。今は我慢、我慢。


志島副教官が防火服を着込んで中に入る。炎の壁を無理やり超えて来た。有働が警戒しだす。ミヤが有働を見て睨む。

「私は今回何もしない。有働、お前は越えちゃ行けない事をしたんだ。死ぬより怖い事が有るって身を持って知りな(怒)」


「お前も、最悪の世代の1人か?」有働が緊張しながら確認した。

「私もそうだよ。でもあんた勘違いしてない。本当の最悪の世代は1人だよ。私達はその人の替え玉だ」


「はん、そんな伝説を信じてんのか?笑えるな。やっぱ俺が筆頭になるべきだった。この学園のレベル知れるな」有働が勝ち誇ったように喋る。


志島副教官が有働を無視して俺に話しかける。

「ごめん、遅くなってキョウカさんもう大丈夫」

「ミヤ、くだらない事に感情的になるな(怒)。キョウカさん頼んだぞ」志島副教官が黙って頷く。ちょっとホッとした。ホッとしたけど余計に苛立ってきた。


俺とミヤが有働を無視して事で有働の怒りが頂点に達する。


「てめえら俺に死んで詫びろ」体全体に炎をまとい向かって来る。


有働の前に立ち動きを止める。左手をかざしバイブレーターの能力を出す。空気が震えるように揺らぎ有働が身を守る為に纏ってかいた炎を消す。その隙に有働の胸に右ストレートを放つ。当然能力込みだ、簡易的なバイブレートクラッシュ(超振動粉砕)を放つ。この動作に1秒かからなかった。有働が心臓を押さえ折れ込み、血を吐いた。恐らく、骨はいったな。


有働が力をだせずに倒れ込んだ為か、周囲と隔離するための炎の壁が消えた。

思わずキョウカさんを見るがなんとか恥ずかしい姿は免れた。


有働に近づき胸に指を置く。有働の顔が恐怖で歪む。そのまま心臓の鼓動を邪魔するようにバイブレーターをかける。有働の心臓は自分で制御出来ずに苦しみ出す。特別機動隊が駆けつけた時には虫の息になっていた。


高梨教官が医療班を連れて来た。有働の蘇生を行い、有働は何とか一命を取り留めた。

高梨教官が近付いて来ると平手打ちされる。涙を溜め「ばか野郎。お前に人殺しは早すぎる」そう言って叱られた。なぜか高梨教官が俺に抱きつき泣いている。


「ミヤ、キョウカさんも医療班に」そう言うと「こら、学校の中では教官でしょ(怒)!!大丈夫、傷も残さないから」そう言ってくれた。

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