7把 お買い物
「すごい人だね。」
「うん。今日は服が安く買える日みたい!」
2人がデパートの中に入ると、各コーナーには人だかりができていた。
どうやら、バーゲンセールを行っているらしい。
「よし、じゃあ行ってくるから待っててね!」
「あの中に行くのかい?」
「大丈夫だよ、取って食われたりしないから。」
つる美はメンズの服売り場を見つければ、いなりに待つよう話すと人の渦の中へ飛び込んでいった。
彼はなるべく人がいないところで、待機をするもすぐソワソワし始める。
彼女のことが心配なのだろうか?
しばらくしてカゴいっぱいの服を持ってきたつる美は、服を一着ずついなりへあててサイズを確認した。
「サイズは問題なさそうだけど、気に入るものはあるかな。」
彼はそう言われて、服をしげしげと見つめるもどれがいいのか分からないといった様子で首を傾げる。
「あとは肌触りとか大事だと思うから、触ってみて。」
「これはいいかもしれない。」
つる美とともに実際に触り生地の質感を確認して、なんとかパンツ3着とトップス5着分を選び終えた。
「結構な出費にはなったけど…学校に行くにはこのくらいあった方がいいからね!」
「つる美さん、ありがとう。」
彼女はお会計を済ませれば、お札が少なくなったお財布を見て苦笑いをした。
しかしいなりのためだと思い堪える。
彼は袋を受け取るなり、嬉しそうに尻尾を振っているようだ。
「あ!いなり、尻尾!!」
「ん?」
浴衣の下に隠れていたはずだが、出てきてしまったのだろうか。
つる美は慌てて大きな手を広げ、尻尾を隠した。
だが、周りからは注目の的だ。
彼女は恥ずかしくなり、どうしたものかと周りをキョロキョロしていると突然体が宙に浮いた。
なんといなりがお姫様抱っこをしたのだ。
そしてそのまま小走りにデパートを出て、人気の少ないところへ移動をした。
「つる美さん、大丈夫かい?」
「うん。と、とりあえず買い物も済んだし帰ろっか!」
彼は相手を下ろすと、心配そうに顔を覗き込み尋ねる。
彼女の顔がほんのり赤いからだろうか。
それに対し、つる美はなんでもないというように話せば、いなりの背中を押して家路に向かったのだった。
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