6把 お出かけ

「…なんだか変な感じがするよ。」

「でも狐ってバレたら大変だから、絶対帽子は取っちゃダメだからね?」

「わ、分かったよ。」

次の日早朝から2人は出掛ける準備をしていた。

つる美はどうにか耳が入る帽子を探すといなりへ被せるが、彼は慣れない様子だ。


「よし!それじゃ行くよ!」

「うん。」

身だしなみを整え出かける準備を終えた彼女達は、自宅の戸締まりをして駅へと歩き出す。


「いなりは街中へ行くのは初めて?」

「そうだね、麓の町へしか行っていないからね。」

「そっか!なら新しいことが沢山あると思うよ!」

「そうなんだね、でも今は不安のほうが大きいな。」

つる美の言葉に不安そうな表情をして呟くと、言葉とは裏腹に楽しみなのかしっぽを小さく振っている。


「はい、これで電車に乗れるからね。」

「ありがとう。」

駅につくと彼女は切符を2人分購入して、1枚をいなりへ渡す。

彼はまじまじとそれを眺めると同じように改札を通り抜けようとした途端、改札の扉が閉まる。


「あれ?」

「ごめん!使い方を伝えるの忘れてた!その切符を横のとこに入れるとゲートが開くの。」

いなりはびっくりして、列から外れると首を傾げる。

先に改札を通ったつる美は彼の様子を見て謝り、通り方を説明をした。


「こうか。ニンゲンの考えるものはすごいね。」

「驚いたよね、本当にごめん。」

いなりは無事改札を通り抜けるとその機械に関心した様子だ。

対して彼女は人間の当たり前は動物からすれば、当たり前では無い為気をつけなければと気を引き締めた。


そして2人はしばらく電車に揺られ、都心の街までたどり着いたようだ。


「ここが大きな街か、人も多いしお店も沢山あるね。」

「でしょ?あそこのデパートなら服とか沢山売ってると思うし行こっか!」

「うん。」

目的地にたどり着くと、いなりは辺りをキョロキョロ見渡しながら歩く。

つる美は彼の様子を微笑ましく思いながら大きなデパートを指さした。

2人はそのお店の方へと向けて歩き出す。


果たしていなりに合う服は手に入れられるのだろうか?














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