4把 山の仲間達
「あ!にいにだ!」
「にいにおかぁり!」
「んぅ…にいに!」
狐が2時間ほどかけて山を登ると、小さな小屋が見えた。どうやら彼の仲間もいるようだ。
三つ子の小さな子ねずみ達は狐の姿に気づいたのか、嬉しそうにこちらへ駈けてくる。
「皆ただいま。」
「おぉ、帰ったか。どうじゃった?」
「師匠!良い人が見つかったんだ、だからしばらくここを離れるよ。そういえばあねさんとにいさんは?」
狐は三つ子に頬ずりをして微笑んでいると、ゆっくりとした足取りで老いた狐がやってきた。
彼は山の麓でのことを告げると、2人の姿が見当たらないと師匠へ確認をする。
「二人には今小屋に大事なものを取りに行ってもらっているんじゃ。」
「大事なもの?」
「そうじゃ、チヅさんの認定証をな。」
狐の言葉を聞くと、老いた狐は小屋の方に目を向けそう告げた。
チヅさんとは以前この小屋に住んでいた、彼らの世話をしていた人間のことだろうか。
「認定証?」
「あぁ、彼女はうどん大学を首席で卒業したからな。それがあればチヅさんが認めた1人だけ、うどん大学に試験なしで入学出来るんじゃ。」
「本当かい?良かった。」
師匠と彼が話をしていると、小屋の方から見つけた!と声がして2人はそちらへ視線を向ける。
「師匠、認定証ありました。」
「おお、ご苦労じゃった。」
「あれ、アンタ帰ってたんだね?おかえり!」
「にいさん、あねさんただいま!」
小屋から現れたのは、丁寧な口調で話す鶴とやんちゃそうなうさぎだった。
「ほれ、これを持って行くんじゃ。大学へ入るときに役に立つからのう。」
「ありがとうございます、師匠。」
「あと、わしが教えた化け術も活用するんじゃぞ。」
「はい。頑張ります。」
狐は彼の言葉に頷くと、手を忍者のポーズにして人間へ化けたではないか。
そして師匠から認定証を受け取り、ポッケへ入れまた元の姿へ戻った。
「じゃあ皆ありがとう。そろそろ帰るね。」
「にぃにともっと遊ぶ!」
「ぼくもにぃにとまだあちょびたい。」
「んぅ…まだ、一緒にいるぅ…」
彼が麓へ帰ろうとすると、三つ子のねずみ達は寂しそうにくっついて離れない。
「ほら、皆にぃにも新しいお家に帰らないと行けないからバイバイしよう?」
「そうそう!アンタらいい子にしてたら、また帰ってくるからさ!」
あねさんとにいさんがねずみ達をなだめると、仕方なく3匹は狐から離れる。
「ごめんね。あねさん、にいさん、師匠ありがとう!またくるよ。」
渋々離れた三つ子にそれぞれ頬ずりをすると、皆へお別れの挨拶を交わす。
そして彼は皆に見守られながら山を下りたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます