第5話『2022年9/23①』
今の話は莉乃にもしたよ。彼女はその時側にいたら助けてあげられたのに、と言ってくれた。
たしかに彼女の行動力ならそれも可能だったかもしれないけど、それは困る。
だってミカが生まれないからね。
俺はミカがいないと生きていけない。それは間違いない。
もしいじめが莉乃のお陰で終わっても、ミカがいないその後の人生がどうなっていたかわからないだろ?
とりあえず、今のみたいになってないのは間違いない。
***
「じゃあ、土屋君。本当にミカちゃんのこと好きなんだね?」
「まぁ、うん」
なんか照れる。
「ミカちゃん。貴女も土屋君のこと好きなんだね?」
(うん!)
「うん! だってさ」
「そっか…じゃあ一ついいこと教えてあげる。人間とイマジナリーフレンドは籍を入れられない」
「(うっ…)」
「付き合うのって、書類も手続きもいらないじゃん? 婚約もそう。ただ、結婚は違う。例え土屋君とミカちゃんが婚姻届を書いても受け取ってもらえない」
(そ、そこをなんとかできないのかな…?)
「そうだよ。そのために君が協力してくれるんじゃないの?」
「どのため? まぁ、結婚できない人達って、イマジナリーフレンドに限った話じゃなくて、同性カップルとかもそうなんだけど、それには一応パートナーシップ制度ってのが認められててね。ちなみに調べてみたけどこれもイマジナリーフレンドは対象外っぽいです」
「じゃあダメじゃん⁉︎」
「それに、イマジナリーフレンド、ましてやイマジナリーガールフレンドがいる彼氏って抵抗ある人多いみたい。最悪精神科とか勧められるかも」
「莉乃だって同じようなことしてきたでしょ」
「それはごめん。それで、何で急に結婚の話始めたの?」
そう、今日は俺が莉乃に結婚について相談したのだ。
「あぁ、母親がね『彼女いないのか』って訊いてきて。まぁ、いるっちゃいるけど相手が相手だから話しづらくて。でもミカと別れるつもりはないしさ。それで考えてみたんだ。もしミカと結婚できなかったら俺は一生結婚しないと思う。そしたらまた母親に『いつ結婚するんだ。いい人いないのか』って質問攻めに合う気がして」
「なるほど、じゃあ……」
(別にわたしのことお母さんに言ってもいいのに)
(変に理解されて、気まずくなったら嫌だろ)
(ごめんね、わたしがこんなだから)
(いや、ミカがイマジナリーフレンドじゃなかったら出会えてなかった。どっちにせよ大変だったよ)
「コホン」
莉乃の咳払いで現実に引き戻される。
「お二人の世界で楽しんでるところ申し訳ないんだけど、私の話を聞いてほしいかな」
「(ごめん)」
「提案なんだけど、土屋君が私と二股するのはどうかな?」
「(…は⁉︎)」
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