道連れ

川野笹舟

道連れ

 帰り道、黒猫に出会った。

 五秒ほど見つめあった。

 写真でも取るか、とスマートフォンをポケットから出し、顔をあげると、もういなかった。あたりを探してみたが影も形もなかった。

 諦めて、ふたたび家に向かい歩いていると、前方にいる男が、僕とまったく同じ服装をしていることに気づいた。恥ずかしさより気味悪さが勝った。

 そのまましばらく歩いていたが、どうやら彼も僕と同じ方向に目的地があるようで、ずっと後を着いていくような形になった。


 家の前のコンビニが見えてきた。

 彼の後を追跡し始めて既に五分ほど経っていた。

 特に必要なものがあるわけでもないが、買い物でもしていくか、と考えた次の瞬間、彼が僕に先んじてコンビニへ入店した。

 いよいよ気味が悪くなり、僕は予定を変更して、コンビニには寄らずに帰ることにした。

 アパートの二階にある僕の部屋に入る直前、何気なく先程のコンビニの方を見ると、入り口の横、黒猫が僕を見つめていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

道連れ 川野笹舟 @bamboo_l_boat

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ