第8話 (第9,10話)
ギルドマスターであるカイリはのんびりとしていた。その日の仕事を終わらせ、あとは時間が過ぎるのを待つだけだった。そんな中、いきなりドアが空いたため、驚いた。
入ってきたのは働かせていたエルだった。エルはとても焦っているように見えた。何か仕事でミスでもしたのだろうかと思った。しかし、エルの口から言い放たれた言葉を聞いていた驚いた。
「スラムの住民が冒険者に襲われた!」
俺はその言葉を聞いて誰がやったのかを考えていた。
基本、冒険者はスラムからきた冒険者以外はスラムに関与することはない。そのため、今までスラムに対する不満や直接的な行動はなかった。そのため、ある程度は犯人を絞り込むことができる。
今思いついている者はワクイとその取り巻きたち、あとは酒ばっか飲んでいてあまりクエストを受けない複数のE、Fランク冒険者たちだ。しかし、酒飲みの冒険者たちはなんだかんだいって素行は悪くない。さらにグループでいることが多いため、誰か一人に話を聞けばすむ。
しかし、ワクイ達は分からない。なぜなら最近は冒険者ギルドに来ていないからだ。だが、俺はワクイ達の犯行だと思っている。あいつらはエルを陥れようとして逆に仕返しをくらったからだ。
エルがスラムに住んでいると思っているあいつらならやりかねない。今すぐに制圧すべきだと俺は思った。
ギルドマスタールームから出た俺はロビーにいる冒険者たちに向かって叫んだ。
「Cランク以上の冒険者たちに告げる!今からスラムに向かい暴徒と化した冒険者を制圧する!」
この言葉を聞いた冒険者たちは雄たけびをあげた。
冒険者の間ではエルの存在は大きかった。自分たちが経験してこなかった辛い経験をしてきた小さい子供であり、今はギルド内をあわただしくいったりきたりしているかわいい後輩でもあるのだ。
冒険者の中にはスラム出身の者もいる。基本はよくてDランクだが、まれにCランク以上になる者もいる。今回雄たけびをあげた冒険者の中に一人だけ居た。
その冒険者の名前はココといった。彼女はスラムで生まれ育った。父親がおらず、母親は病に伏せながらも彼女を産んだ。その後、彼女の母親は、彼女が10歳になると同時に死んだ。彼女は母親から
「10歳になったら冒険者ギルドに行きなさい。そうすれば生きるために必要なことは学べるから」
と言われた。彼女はその言葉に従い、冒険者ギルドに向かい冒険者になった。
最初は今のエルと同じようにお使い依頼を受けていた。たまにほかの冒険者にお願いをして剣術の訓練、指南を受けていた。最初に剣の訓練のお願いをされた冒険者はめんどくさがっていたが、彼女に天賦の才があったため、次第に魔物との戦闘の仕方や注意点などを教え始めた。
それを見た周りの冒険者達も教え始めた。また、本来は出来ない街の外まで出向き、魔物との戦闘を複数の冒険者達の手助けや指導を受けながら行った。
彼女は冒険者達から教わったことを全て吸収していった。
15歳になってからはものすごいスピードで昇級していった。わずか1年でCランクにまで登りつめた。
これは異例のことであった。
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