第6話 (第6,7話)
僕は涙を流した。僕のことを心配してくれる人がいたことに。ここまで親切にしてくれたことに。
「おいおい。どうした、いきなり。」
「すいません。ここまで心配してくれたり、親切にしてくれた人は初めてで・・・。」
僕は素直に答えた。するとカイリギルドマスターとソウキョウ商会長は驚いていた。
「この年でスラムに住んでいるのは何か理由があると思っていたが、こんなやつは初めてだぞ・・・。家族はどうしたんだ?」
「僕は家族に捨てられました。世界が灰色に見えているんです。このことを家族に伝えたら急に殴られるようになりました。そのあと、音、におい、動き、感情、人間の行動などに色が付きました。それも伝えたら家から追い出されたんです。」
と、今までの出来事を二人に話した。すると二人は絶句していた。それはそうだ。家族からの扱いは最悪だし、僕の見ている世界がほかの人と違うからだ。
少しの時間が過ぎ、やっと二人は現実に戻ってきた。すると、
「エル君、君は今スラム街に住んでいるんだね?そしたら商会の従業員住居があるから今日からはそこに住みなさい。そして毎日清掃と荷物の運搬をしなさい。これまでと変わらず給料は出す。いいね?」
とソウキョウ商会長。いきなりの提案に驚いていると、慌てた様子のカイリギルドマスターは、
「エル、お前のギルドランクをFにあげる。そしてギルドからの指名依頼としてギルド倉庫の清掃と整理をしてもらう。そのあとは俺が指名した冒険者から体術や剣術を指導してもらえ。いいな?」
と言ってくれた。二人の気遣いが僕は嬉しかった。だから僕は、
「ありがとうございます。よろしくお願いします。」
と返事をして頭を下げた。
あれから数日がたった。僕はあれから、朝起きてからご飯を食べ、商会での仕事をし、昼食を食べてからギルドに行き、仕事をこなしてから、紹介された冒険者の方々に体術や剣術などを教えてもらい、夜ご飯をギルドで食べてから商会の従業員寮に戻り、風呂に入ってから寝る、という生活をしていた。
商会の仕事もギルドの仕事も今までと変化はないが、商会の従業員の方々やギルド職員の方々からの視線や態度が変化した。また、一部の冒険者の方々の態度も変わり、指導を受けた後に指導でできた傷を回復してくれたり、アドバイスをくれたり、ご飯を奢ってくれたりと、いろいろよくしてくれた。
ただ、これをよく思わない冒険者もおり、ウソの噂を流したり、わざと僕に聞こえる声で嫌味を言ってきたりと嫌がらせをしてきた。
だけど僕は嫌がらせは気にならなかった。これまでの生活より過ごしやすく、さらには仕事にやりがいを感じているからだ。今までは仕事をどんなに丁寧に、素早く終わらせても褒められることはなかったのに(ギルドの受付嬢からは褒められていたが)、褒められ、さらには感謝されることもあるようになったからだ。さらには、今まで学びたかったが学べずにいた体術や剣術を学ぶことができ、冒険者の方々とのつながりもできたからだ。
こんな生活を送っていたある日、スラムに住んでいる冒険者が駆け込んできてこう言った。
「助けてくれ!スラムの住民が冒険者に襲われている!」
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