第5話

「エル君、そしてソウキョウ商会長。本当に申し訳なかった。」


 カイリギルドマスターは頭を下げた。ギルドマスターが頭を下げることはほとんどない。ギルドマスターが頭を下げるのは緊急クエストを冒険者に頼むときや、感謝を述べるとき、それと偉い方々といる時だ。

 いち冒険者に頭を下げることは基本的にあってはならないことであり、商会長に頭を下げるときは何かアイテムを注文するときぐらいだ。

 今回頭を下げたのはギルドマスターがそれほど重大な事件だと思っている証拠だ。


「ギルドマスター!頭を上げてください!」


 僕は驚いて声をかけた。ギルドマスターが謝罪をして頭を下げるとは思わなかったからだ。

 ソウキョウ商会長の対応は違った。


「まあまあ。カイリギルドマスター殿。とりあえず頭を上げてください。私はただ居合わせただけです。エル君もこう言っているので頭を上げてください。そうしないと話が進みません。」

「そうか。ありがとうございます。ソウキョウ商会長。そしてエル君。本当にありがとう。所属冒険者が迷惑をかけた。」


 カイリギルドマスターは頭を上げてから二人に言った。そして迷惑料として金貨1枚を支払うことを約束してくれた。僕はこのことは断ろうと思ったが、カイリギルドマスターが引かなかったこととソウキョウ商会長が受け取ったほうがいいと言ったからだ。


「今日、君に言いがかりをつけた冒険者のワクイと受付のパードの処分はどうしたい?エル君。君の望む罰を彼らには課そうと思っていてね。」


と、僕に罰の重さをどうするか聞いてきた。

 僕はギルドマスターが決めるものだと思っていたため困惑した。するとソウキョウ商会長が教えてくれた。


「通常はギルドマスターが罰の重さを決めるんだ。だが今回はギルド職員が関わっているし、さらには問題を多く抱えていた冒険者を罰することができるんだ。さらに君が被害者ということもあって君に罰の重さを聞いているんだ。」


 僕はソウキョウ商会長の説明を聞いて納得した。しかし、疑問に思ったことがある。


「なぜGランクの僕にここまでしてくれるのですか?」


 そう。僕はGランクだ。なので通常は好待遇は受けられない。素っ気なく対応されるだけだ。なのにここまで好待遇される理由がわからない。これにはカイリギルドマスターが答えてくれた。


「お前はGランクの中でも一番稼いでいるんだ。そんな奴がほかのGランクの奴らと同じ待遇を受けていたらおかしいだろう?あとは今回の件のお詫びも兼ねている。お前はスラムに住んでるって聞いた。さすがに金貨3枚渡したらほかの奴らが寄ってくるだろう?最悪殺されちまう。そういうことを防ぐにはこれが上限だと思った。しかしこれだけだと少ないからな。だからだ。」


 僕はギルドマスターの話を聞いて涙を流した。

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