第365話 遺構「再開1」
0365_25-10_遺構「再開1」
遺跡の魔物が討伐され、そして探索者のほとんどが死亡してたら数日が経った。
探索者で生き残った1人は、今も高度治療施設の中で集中治療を受けている。
ハリスさんの高度な聖属性の魔術と、コウの町にある最高の医療設備と医師達の努力は続いている。
助かるかは、まだ判らないそうだ。
ギムさん達と視察団チーム、そして冒険者チーム2つ、オルキさんのチームとマイトのチーム紅牙。
紅牙の皆は兎も角、他の人達は疲労が酷く、数日の完全休養が申し渡された。
この機会に私は慰安を名目にして、個々のチーム毎に面会をした。
視察団チームの方達も元気そうで良かった、研究所で面会した時と変わらず不敵な笑みを浮かべているミサを筆頭に全員が攻略に前向きだった。
冒険者チーム、オルキさんのチームが今回 一番疲労が酷かった。
逆に、マイト率いる紅牙は損耗が少なく、今度こそは活躍したいと言っていた。
これは役割の違いだと思う、ミサは紅牙のメンバーが居たおかげで戦力の分散をせずに済んだと評価していた。
魔法使いのハルを伝令として別行動させたり、休憩中の見張りを率先して行ったので、ミサとオルキさんのチームが万全の状態で挑めたんだとか。
そして、ギムさん達。
酷い怪我は無かった、本当に良かった。
同席しているハリスさんもホッとしている。
そして、爆薬を用意していたのを責めたんだけど、これ持ち込んだのはミサたち視察団チームだった。
視察団チーム経由で領軍の奥の手の一つ高性能爆薬を今回の為に持ち込んだそう。
遺跡を崩落させて封印は、最初期から計画されていた1つ。
それでも、自分達毎 魔物を埋めようとしたのは駄目だ。
回りに他の人達が居ないのを確認して、つい責めてしまう。
「ギムさん、皆さんも爆薬を使って自分達毎 埋めようとしたのは、同意できません。
撤退しながらとか方法が無かったんですか?」
「そうですよ、ギム、貴方らしくない。
残される辛さは私達がよく知っているはずです、それをマイさんにおわせてはいけません」
ハリスさんも、言葉以上に怒っている。
静かに怒っているハリスさんの威圧感は、始めて感じる物でちょっと驚いた。
これには、皆さんも恐縮してしまっている。
「うむ。
こればかりは、あの時の判断として間違っては居無いとは思うが。
いや、軽率だったな急ぎすぎたか。
心配を掛けた、済まない」
「そうですね、私達だけで何とかしようとしてしまいました。
魔物が奥に行く可能性から、対処を急ぐ必要が有りましたが時間稼ぎを狙っても良かったかもしれませんね」
「じゃなぁ」
ギムさんが謝り、ブラウさんジョムさんが言うが、うん、その言葉は私の心を
まんま、前回の魔物の氾濫の時、巨人とオーガ種への、私の対処と同じだからだ。
そして、私は間違えたんだと思う。
ギムさん達が私の影響で今回の判断をさせてしまったのなら、それは私の罪だ。
私はどうすれば良いのだろう?
「マイちゃん、マイちゃんの性じゃないわよ。
私達の判断は私達の責任なの、だから気に病まないで」
シーテさんが私の頭を優しく抱きかかえてくれる。
シーテさんは本当に私の考えている事なんて筒抜けなんだな。
塞ぎ込んでしまった頭を上げると、皆が私を見ている。
また心配を掛けてしまった、駄目なぁ本当に私は未熟だ。
しっかりしないと、私を助けてくれた人達、この町に居るフミも。
私に出来る事は有るはずだ。
「ギムさん、次の遺跡探索は私も同行できますか?」
「うむ。
その方向で申し込んでている。
後方待機にはなるが、最深部には行けるように話している。
もっとも、町の方は渋っているから、今度は無茶は出来ないだろう」
そうだった、前回は後方支援と言いながら、同じチームの後方に位置するという屁理屈を強行して侵入した。
町は同じ行動を許してはくれないだろうね。
やり過ぎてしまったとは思う。
「そうですか」
「ですが、魔導師様と聖属性の魔術師が居れば、最深部での魔物との戦いは圧倒できたはずです。
結果論ですが、戦力不足と魔物との相性の問題で魔術師不足が露呈していました。
確実に遺跡の最深部を探索するのには、万全な態勢を取る必要が有ると、具申しておきました」
ブラウンさんは少し意地悪な言い方をしながら笑う。
魔物、最深部へ落ちたオーガ種の数をしたのなら、十分だったはず。
黒い雫や魔物が増殖している事を加味してもだ。
対処が困難だった場合は、遺跡ごと爆破する予定だったとも。
予定外だったのは、2体の見たことも無い魔物。
報告では分類できなかった新種だそうだ。
時空断に似た闇属性の魔力を使う魔物。
詳しくは判らない、視察団チームの方でも問い合わせ中との事だった。
「じゃな、まぁ、再開は準備が整ってからじゃな」
「うむ。
緊急に対応しないてはいけない、探索者と魔物の脅威が無い今、急ぐ必要は無い。
むしろ、奥にある改良されたダンジョンコアと思われる物へは、慎重に対処する必要が有るだろうな」
ああ、そうだった、頭が痛い。
私が見ただけでも数個の改良されたダンジョンコアとその加工品らしい物が有った。
このまま地下に保管してしまった方が良いような気がするけどね。
「どうするんですかね、あれは」
所有権としては当然だけど領主様にあり、そして国王様の物になる。
なので、どうするかは私達が考える必要は無いのだけど、それでも気には成る。
「判りませんね、北の村で発見された改良されたダンジョンコアが魔物の氾濫を引き起こしたと王家は知っていますし、多くの領主達も知っています。
今、改良されたダンジョンコアを欲しがるとは思えません。
領主様も同じでしょう、厄介物の扱いには困ると思います。
遺跡を封鎖する可能性が高いですが、探索者に知られていると言うことは秘密にするのも難しいです。
……どうするんでしょうね」
考えながら話したのかな、ブラウンさんが途中で思考放棄した。
今、どうするのかは考えるだけ無駄かな。
「まぁ、のんびりしましょ。
もう1つの出口の方の調査も進んでいるみたいだし、そちらの報告も待った方が良いわね」
それから暫く、雑談をした。
ちょっと楽しくなって笑い声が出てしまい部屋の外で待機していた守衛の人達が心配になって入ってきたのは、ご愛敬だね。
■■■■
遺跡の探索が再開されることになった。
それは、私がギムさん達に慰安を名目に会ってから、さらに十数日が過ぎている。
既に先行して調査や確認している冒険者チームからの報告で幾つか判った事が有る。
まず、もう1つの出入り口とその先。
昔の搬入口としての役割が有ったらしい。
それが土砂で埋められていた。
小さい、といってもアー・オーガが通れるぐらいの入口が偶然空き、その場所に魔物の氾濫で生き残った魔物が居着いた、との見解だ。
外は深い森で北の村の方へは急な勾配の有る山を越える必要が有る事が確認された。
残った魔物が居たとしても、村へ行く可能性は低い。
当面、幾つかの冒険者チームが周囲の探索を行って、取り逃した魔物が居ないか、痕跡を探すそうだ。
搬入口として使われていたという事は、何処かから道が繋がっていたはずだけど、その痕跡は確認できなかった。
そして、遺跡の広場から地下の方に開いた穴。
こっちの方は深刻だった。
何か大型の物を地下深くの最深部まで運ぶ為の縦坑が有ったらしい。
その設備自体は壊されていて再現は不可能、また、魔物が落ちて最深部まで到達してしまったのは、途中に有った隔壁が壊れていた為でもある。
壊れた原因は、推定だけど、前回の魔物の氾濫の時に巨人が山を攻撃した時だろうとの事。
今は、魔物が落ちた時に崩落した岩である程度塞がっているみたい、危なくて全ては確認できなかったとのこと。
報告書に書かれていた結論として、遺跡の上層部は最深部にある施設を隠す為の偽の施設ではないか、と考察されていた。
遺跡は使用されていた痕跡が無かったこと、生活に必要な設備の痕跡が無かったこと、が理由に掲げられていた。
今、先行で探索している冒険者チームによって最深部に簡易施設が作られている。
魔物が破壊しようとした扉の先、ここへ向かうチームは、簡易施設で十分に準備をした後に突入する事になる。
ギムさんにお願いして、扉の破壊をしない方向で進む事を強く提案した。
これは、その先にあるのが改良されたダンジョンコアである事と、その後に封印する時に扉が修復出来ない可能性が高いからだ。
改良されたダンジョンコアが地表に影響を出さずに済んでいるのは、最深部の扉とその先の施設が無事だった可能性が高いからね。
で、私とハリスさんの同行は止められた。
勝手に先行した前歴があるからね。
ギムさん達とは別のチームに護衛されて後方から安全を確保された中で移動することになった。
そして、私達は全員地下の簡易施設に到達した。
そこでノンビリ様子を伺っている。
「ブラウンさん、扉の方はどうなっています?」
「マイさん、開閉の仕組みは判ったようです。
が、動作させる為の動力や経年劣化で駄目になった部分を修復するのに時間が掛かっているようですね。
破壊せずに進むとなると難易度が跳ね上がりますから」
ギムさん達は、人工ダンジョンの探索を行っていた経験を持つ。
その経験からだろうね、それに同じ経験をしている視察団チームも居るから、話し合っているのだろう。
一般的に、遺跡の探索の際は、破壊しながら侵入するそうだ、補給も出来ない放棄された地で何日も時間を掛けられない。
遺跡の施設その物は持ち替えるのは困難だから余程の価値がある物でも無い限り破壊か元に戻すことを前提としていない解体をしてしまうそうだ。
結局、地下最深部での待機は2日を経過した所で、中断という決断がされた。
扉の修復に十分に時間を掛けるという判断だ。
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