第18章 研究所
第256話 研究所「一日」
こんにちは、マイです。
このたび魔導師の資格を得て時空魔術研究所の所長になりました。
研究所は、コウの町の東側、コウの町の東の村との中にあるコウの町に近い廃棄された小さい村を改修して作られています。
公表年齢は現在10歳。
廃棄された村の唯一の生き残りで魔法学校に5歳で入学。
在学中に、偶然の出会いで、先王様と元筆頭魔導師様の目に留まった。
その時に起きた事件が元で、お二人の推挙を得て魔導師になれた。
たぶん最年少での魔導師だと思う。
本来なら魔導師の素質が有ると言うことで王都に召喚されて魔術師または準魔導師として数年から十数年の研鑽する期間を経て、その結果を精査されてようやく魔導師の資格が有るか判断される。
それを、先王様の意向もあり、一足跳びに魔導師の資格を得た。
そして4年目が終わる時に魔導師として魔法学校を卒業した。
そう、私は魔導師になってしまったんだ。
苦労する、困難だ、絶望的に可能性は低い、コウの町へ戻れないかも、そんな事を考えていたのに、気が付いたら魔導師の格を与えられてコウの町の時空魔術研究所の所長の職を与えられた。
与えられたんだ、自分の力で掴み取っていない。
贅沢な悩みだろうけど、自分の中で納得できないで気持ちが宙ぶらりんに成ってしまっている。
魔導師になりたかった、それは最初は魔法が使えたことからの憧れだった。
そして、時空魔術師として漠然と兵役に就いていた。
退役したとき、故郷が無くなっていた、理不尽な理由で この国の束縛から逃れたいと思った。
そして目標を失って、残っていた魔導師への思いに縋りながら、当てもなく宿屋の店員と冒険者としての生活をしていた。
大切な人が出来た、こんな私を無条件に受け入れてくれた。
その大切な人達を守りたかった、いや、失うことの恐怖から無我夢中になっていただけだ。
そして、死んだ。
なんか暗くなってきたので気持ちを切り替えよう。
本当の私は、元 北方辺境師団 輸送部隊に所属していた時空魔術師で、退役を期に色々ありコウの町の冒険者となり、7年前の魔物の氾濫の際に死んだことになった。
理由は分からないけど、死んだことになってから2年後にダンジョンから若返った姿で生還したんだ、何でだろう?
兎も角、実年齢と外見は一致していない、そして生還してからの成長は著しく遅く、6~7歳で通用してしまう幼い外見のままだ。 不本意だよ。
私が研究所の所長になったのは、王都の貴族の養子にならずに庶民の出のまま、魔術師としての実績も殆ど積まずに魔導師になってしまったため。
貴族にとって上位貴族相当の魔導師が貴族の出身では無いのが非常に困るようだね。
扱いに困っての処置らしいけど、貴族の派閥争いやらに巻き込まれずに済んだので結果として良かった。
未成年(15歳で成年)なのもあって、王都への召喚されることも無く、
結果として、コウシャン領の魔法学校として記録上おそらく初めての魔導師として卒業し、研究所に赴任したんだね。
私はこれからどうするべきなんだろうか?
■■■■
さて、私の1日を紹介しようかな。
研究所に併設されている家の私の部屋で目が覚める所から始まる。
日課の運動をして軽く汗を流す。
こぢんまりとした沐浴場で身体と顔を洗っていると、シーテさんが起きてきた。
同じ家の中で暮らしていて、助手をしてくれている元 領軍 遊撃部隊 視察団でベテランの魔術師だ。
挨拶を交わしながら、陽気の話題をする。
期の初めで、暖かい日が増えてきた、冷たい水が心地よい。
食堂に行くと、朝食の準備が整っている。
身の回りの世話をしている職員のナカオさんが挨拶してくれる。
ナカオさんも一緒に暮らしている。
元々 大きな宿屋の店員だったのだけど後進に道を譲って研究所に来てくれた。
料理も得意で、美味しい朝食を出してくれる。
それをシーテさんと一緒に食べる。
食事が終わると、研究所に向かう、屋根続きの廊下を歩くと直ぐだ。
コウの町から研究所の警備をしてくれる守衛さんが来て前日から警備してくれている守衛さんと交代している。
私は守衛さん達に挨拶する。
立場上、魔導師は中位貴族相当なので気軽な挨拶でも畏まった返礼が帰ってくる。
もう少し砕けても良いと思うのだけどね。
研究室は、ガランとしている。
研究所自体が稼働を始めて間もないので仕方が無いかな?
私の机に向かい、椅子に座る。
良い椅子だけど今の私の身体には大きすぎるね。
クッションを入れて調節している。
シーテさんと今日の研究の打ち合わせをする。
シーテさんは私の秘密のほとんど全部を知っているので気兼ねなく話せる。
研究を始める、今日は近くの森で魔術の行使をしながら薬草や野草の採取をする。
探索魔術の実施研究だ、特性の植物を検知する方法を検討している。
今までの魔術では検知する対象の魔力の反応を検知していたが、その方法では植物のように元々持っている魔力が少ない事が多い場合は検知が困難になる。
魔力反応に頼らない探索魔術を試している。
成果は出ていない、試したことが全部空振りに終わる。
昼頃に一度戻るとコウの町へ行く領都からの荷馬車が私宛の荷物を届けてくれていた。
また、私から町への手紙も預かって貰ったとのこと。
守衛さんに礼を言い箱を研究室に運び込んで貰う。
領都の宰相様から書籍や文具類などが届いた。
当面は少しずつ書籍などを増やすそうで希望の書籍があれば伝えるようにとの事だ。
お昼はナカオさんに作って貰ってある軽食を食べる。
ナカオさんは住み込みで働いて貰っているけど時折買い付けにコウの町へ行ったりしている。
今日は交代で来た守衛さっん荷馬車に乗せて貰ってコウの町へ行っている。
今日中に帰れないので、夕食と明日の朝食の準備がしてあった。
この辺は臨機応変かな。
それにナカオさんの親族がコウの町に住んでいるので定期的に帰宅するのも大切なことだ。
午後は予定を変更して早速来た書籍を読んで過ごす。
シーテさんと書籍の内容を話し合いながら、その内容の考察をする。
開け放たれた窓から、研究室の中を心地よい風が流れる。
色々な意見を出し合うのは凄い楽しい。
守衛の人たちも特に仕事は無いので、自主訓練や研究所周辺の施設の掃除とか畑の手入れなど雑用をしている。
よほどの事がなければ、かなり自由にしてよいと通達しているからね。
研究所の入り口で立ちっぱなしなんて非効率な事は、来客の予定がない限り必要ない。
夕方になり研究を適当な所でまとめる。
研究所を閉める。
守衛さんにも一言伝えておく。
守衛さん達は基本的に自分達のことは自分達で行うので、私達は声を掛ける程度の付き合いしかない。
不必要に親しくならないようにしている、とシーテさんが言ってた。
夕食になる、私もシーテさんも実のところ料理は得意では無い。
それでも、ナカオさんが下ごしらえまで終わった状態にしてくれてあるので、それなりの料理は出来たよ。
コツはレシピ通りに作るだね。
立場上の都合があるので、ナカオさんは一緒に食事をしてくれない、守衛さんもそうだ。
なので、食事はシーテさんと2人で食べることがほとんどだ。
たまに視察団の人たちが遊びに来るぐらい。
夕食後は自由時間だ。
宰相様が送ってくれた物品の中に盤上ゲームがあったので、シーテさんと遊ぶ。
シーテさんは遊んだことがあるので、手加減して貰って五分五分だった。
また、物語が書かれている書籍も読む。
明かりは魔導師と魔術師だ光属性の魔術を贅沢に使うので部屋は明るいね。
フミも1度遊びに来てくれた。
ギムさんとジョムさんが護衛して連れてきてくれた。
対外的には世話になった人を客人としてもてなすという形だ。
フミが来てくれたときは、夜遅くまで話し込んでしまった。
宿屋タナヤを空ける必要があるので、本当は私の方から行きたいのだけど、私がコウの町へ行くときは立場上、最初に町長と面会する必要があるので内緒で行く必要がある。
これも一寸問題がある、顔自体はそんなに知られていないけど、逆に知らない人が歩くと目立つ。
なかなか難しい。
夜に沐浴場で身体を洗う、私もシーテさんも水属性の魔術を使えるので、お湯で気兼ねなく身体を洗える。
たまに一緒になるので身体を洗い合う事もある。
うん、シーテさんの たわわな たわわに、へこむ。
一度だけ、守衛の1人が夜遅くに家に来たことがある。
夜這いだ、シーテさんに一目惚れしたらしいのだけど、職務中の行為は駄目だね、シーテさんが結界を張っていたので直ぐにバレた。
彼はその後、研究所の守衛に来ることは無かった。
ただ、シーテさんがコウの町へ行ったときに、声を掛けられたらしい。
シーテさん曰く、ケチョンケチョンに振ったとのこと。
夜が更けてきたら、自分の部屋に戻って就寝する。
部屋には物が少ないので特にやることも無い。
ベッドに横になる。
探索魔術を行使して周囲を確認する。
シーテさんや守衛さんの反応があるだけだ。
あと、シーテさんの結界魔術の痕跡。
たぶん私が探索魔術を行使したのに気がつかれて居ると思う。
寝る前のお約束になりかけている。
考える。
そろそろシーテさんに収納空間に入れることを明かすべきではないか?
一度、収納空間に入ったときに、シーテさんが私の反応が無くなったと慌てさせてしまった。
それ以来、収納空間に入れずにいる。
他人を収納空間に入れること、これは未だ試していない。
群れウサギやイノシシで確認したけど、人間ではまだだ。
シーテさんに話したらどうなるか?
すでに転移を知られている、その転移に付いての研究もいずれやらないといけない。
私の転移は遠隔取り出しと自身を収納することを併用して行う時空転移だ、自分自身を収納することが出来ることを話さずに研究は出来ない。
うん、話そう。
方針を決める。
どう話すのか考えているうちに、いつの間にか眠っていた。
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