第221話 2年目「期末試験」
あっというまに暑い日々が過ぎ、肌寒くなってきた。
服も厚着になり、時々吹く寒風をしのいでいる。
期末試験が近づいてきた、当然だけど収穫祭も近い。
学術区画では収穫祭を大々的に祝う事はしていないので、一部の生徒は他の区画へ行って遊ぶ相談もしている。
2年での期末試験は、魔術師の素質が有る生徒を選ぶための選抜に近くなっているとのこと。
筆記の問題も、実技の内容もより応用性や実用性を求められる。
クラスの雰囲気も試験対策で余裕が無さそうだ。
反面、チーム同士での交流も生まれている、特に野外での依頼では仲が良くなったチームと合同で受注している。
薬草採取にはナルちゃんステラちゃんも参加している。
この辺も、評価の一環であることを気が付いていて出来るだけ受けるようにしている。
森で効果範囲の広い魔法を使ったり出来ることもあるからね。
それと、私たちのチームの魔法の練度が他のチームの生徒よりも頭一つ抜きん出ているのも、他のチームが交流を持ちたがっている理由だと思う。
他の生徒への説明は、ナルちゃんステラちゃんに出来るだけやってもらっている、これは教えることで学べることも多いから。
実際、私も2人に教えることで自分に足りていない知識とか再確認することが出来たからね。
誰かが言っていた、
『1つのことを教えるためには10のことを理解している必要がある』
本当かは判らないけど、合っていると思う。
そして、2年の3名が卒業した。
領軍への徴兵だ、元々大きな魔力量と強力な魔法を行使する事が出来た子で、共に卒業後は領軍を希望していたので良いことだろうね。
スロウクくんも含まれていた。
魔術師ではなく準・魔術師とかよくわからない称号がついていた。
後で職員さんに聞いた所、魔術師として卒業が内定していない生徒を徴兵したりする場合、その所属先で学習することで魔術師へ育てるための一時的な立場だそうです。
魔術師に成れるかどうかは、判らない。
寄宿舎の食堂でこじんまりとだけど、壮行会が行われた。
壮行会も終盤になって、スロウクくんが私の所にやってきた。
彼とは結局 仲良く話す機会は無かったなぁ。
「マイ、なんだ、その、色々キツい言い方して悪かったな」
「え、スロウクさん、特に気にしていませんよ」
「なら良いんだ、俺、領軍の輸送部隊に配属されることになったんだ」
「そうですか、でも収納していない状態なら強い火属性の魔法も使えますし、剣の腕も凄いので色々活躍できそうですね」
「ああ、ありがとう。 向こうでも元気にやるよ。
その、なんだ、ありがとな」
「いえ、どういたまして?」
スロウクくんが立ち去る背中を見る、なんだろう凄い真面目になった?
何人かの女生徒が私の周りに集まる、何事?
「ねえねえ、スロウクくん、あれマイに気があるよ。
マイとしてはどうなの?」
「え、どうとは?」
「あちゃー、脈なしか。 彼の恋もここまでか」
「まあ、ちゃんと告白できない点でヘタレね」
「そこは、若いと言ってあげましょうよ、ウフフ」
「マイも罪作りよのう。 この小悪魔ちゃんめ」
えっと、判らない、首を捻る私の頭をみんなしてワシワシなでるのは止めて欲しい。
本気で意味がわからないんだから。
すでに2年は30人を切っている、入学当初は1年は100人前後だったそうなので、もう1/3だ。
■■■■
期末試験が行われた。
過去を含め2度目になる私でも学び直したりして苦労した、特に筆記は忘れていたことが多い。 実技に関しては個人的に自信あるんだけどね。
試験結果は昨年同様に発表されなかった。
私の結果は、ほぼ満足できる結果だったと言っておこう。
これから1週間は魔法学校が休みになる。
昨年は学術図書館で本を読んだんだっけね、その後はステラちゃんの実家と商業区画で収穫祭を楽しんだっけ。
今年もステラちゃんの実家からお呼ばれしたので、了承した。
幾つも確認したいことが出来たので、今年も学術図書館に行くことにした。
基本的には時空魔法に関する書籍、次に6属性に関する論文、そして例外魔法に関しての論文。
時空魔法に関しては、その特性をもっと詳しく知りたい。
6属性、私は6つの状態と定義しているけど、そうなると属性に適正があるというのに納得がいかない、それを調べたい。
そして、例外魔法、なぜそんな物があるのか、根本的な問題だけど納得できる説明を読んだことが無い、そして私が納得できる理論も持っていない。
今回は大盤振る舞いで、2日も通った、貯金の半分が吹っ飛んだよ。
理由は、調べたい内容の幅が広く、1日ではとても確認しきれなかった事にある。
図書館の職員さんも庶民の生徒が2日続けてきたので、あきれたというかビックリしていた。
そしてまた、部屋にこもって考察を続けて寝不足ですね。
おかげで何かつかめた気がする。
収穫祭も楽しかった、そしてナルちゃんが働くことになった経緯も、ステラのお父さんより知ることが出来た。
「ステラさんのお父さんが務めている商会がコウの町との交易を強化したいと考えているのですか?」
「ああ、今、この周辺の町で一番 復興が進んでいるのはコウの町だ、復興に必要な物資を扱っている店は復興支援で忙しくてコウの町 以外の復興中の町に力を向けている。
せいぜいコウの町から来る商人の相手をする程度だな。
でだ、私が勤めている商会は何方かというと日常必需品を扱っている、なので、ここでコウの町との繋がりを深くて起きたい訳だ」
「今のコウの町は、東の町との交易が中心で、役場からの依頼で領都まで購入しに来ている程度。
で、時々、店舗が共同で領都に買い付けに来る位なの、これを定期便を作ってやりとりしようと考えている所。
なにより東の町の商人に中間マージンを取られているので価格を抑えれないのが大きいの」
「ナルさんのお店が領都の商会と繋がりを持ちたがっていたので、これを利用しようというわけですね」
ステラちゃんのお父さん、ナルちゃん、ステラちゃんの説明で、大体判った。
ナルちゃんのお父さんのお店は東の町との交易は別の商店に占有されてしまい手が出せない、なら、領都と交易をしたい。
ステラちゃんのお父さんが務めている商会はコウの町との交易を占有したい、その思惑が一致したんだ。
だから、ナルちゃんとステラちゃんが商会で働けることになったんだね。
東の町は、領都に向かう街道の要所になっていて国内の商品の卸販売が多い、領都からの商品も含まれる。
でも、領都からの商品は主に工業区画での商品と商工業国家から来る輸入品になる、直接買い付けに行きたいだけの魅力があるのだろうね。
「マイさん、ステラがお世話になっているお礼というわけでは無いですが、年明けから試験的に定期便を出します、片道約50日前後ですね。 最初は数台でしょう。
手紙も取り扱います、マイさんは無料はまずいので低価格で配送しますよ」
これは嬉しい事だ、コウの町と領都では直接取引をする商人はいなかった、これが定期的に行き来するように成るのなら、フミとも連絡が取りやすくなる。
「私としては嬉しいのですが、良いのですか?」
「ええ、それと、ステラが退学した後の魔法学校のコウの町の生徒との中継ぎをお願いしたいという思惑もあります」
「ぶっちゃけていますね」
「はい、ステラから駆け引きをしない方が良いと聞かされていますので」
「判りました、コウの町の出身者に伝えるようにします。
学術区画の商会へ行けば良いと伝えれば良いのですね?」
「はい、手紙に関しては採算度外視で構わないと聞いているので格安で受けてもらえると思ってください」
手紙のやりとりは、ほとんどが目的地に向かう旅人や旅商人などについでに運んで貰う、届く保証は無い分 価格も安い。
でも、定期便の商人の馬車なら確実性は上がる、慣習として安く引き受けているそうだ。
その後、ステラちゃんの実家で夕食を頂き、寄宿舎に戻った。
話の内容から、だいたい察した。
ナルちゃんとステラちゃんは年明けに退学するつもりだということに。
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