第188話 入学「商業区域」
朝になる。 少し夜更かししすぎたかな眠い。 入学まであと3日。
ベッドから出て、日課の柔軟と筋肉トレーニングをする。
このあたりの地理が判ったら外を走るのも良いかな?
汗が粒になって流れ落ちる、だけど、5歳児として見ても私の体力は貧弱な方だ、力尽くで襲われたら対応できない。
魔術が以前と同じかそれ以上に使えるようになっているのだけが救いだ。
沐浴場に行って、沐浴着に着替え汗を洗い流す。
まだ水が冷たいけど、おかげで目が覚める。
昨日着た私服と寝間着と下着を洗う、そういえば自分用の沐浴着か、確かに少しごわついている、けど買う必要があるかと言われれば微妙かな。
部屋に戻り、洗濯した服を干す。
今日やることを確認する。
商業区域を確認する、あれが欲しい。
鉄串だ、私が遠距離攻撃をするとき、刺突武器とてしとても優秀だった。
それに可能なら、収納爆発を行うための岩だ、今の私は収納空間内がガラガラだ。
必要な物はいくらでもある、保存食も沢山確保したいし、予備の武器も揃えたい。
ショートソードが欲しいけど、今の私では振り回されてしまう、ナイフが精一杯だ。
そのナイフも遠距離攻撃だと何本も欲しい、けど、値段が問題になる。
使い捨て前提で使用するなら、品質も低くて構わない。
学術区画の北東にある商業区域かな生徒が作った品質が悪い物が有るのは、でも、入学が近いこの時期に必要な物が揃うか判らない。
悩む、商業区域を見て回るのは最低限にして復習を行おうか、近くの雑貨屋も見ていない。
巡回馬車の経路を確認する。
うん、まず雑貨屋を見て、その後、北西側の商業区域に行く。
魔法学校で使われる商品というのは確認しておきたい。
その後、商業区域を巡回している馬車で北西の商業区域に行って鉄串を探す。
今日はそれだけ、で戻って復習をする。
朝の鐘が鳴ったので、食堂に行く。
うん、子供の数が増えた、入学前にやることに気が付いた子から又聞きして慌てだしたのかも知れない。
事務員さんへ話しかける子も多い。
事務員さんは必要最低限の回答をいやな顔もせずに何度もしている。
朝食は昨日と同じだけど肉の味付けが違ってた。
食べていると、ナルちゃんが子供達を連れて入ってきた。
今回は、私を見つけられずに席に着いたね。
一緒に居る子供達も少し焦り始めているのもそのせいかも。
私がお盆を返却して、食堂のおばちゃんにお礼を言う。
「ごちそうさまでした」
「あいよ」
無愛想だけど、人の良さそうな感じがする。
ん? 肩に手を軽く触れられる。
「あ、この前の事務員さん、おはようございます」
「おはよう、マイちゃん。
所で何かした? 今年の子は動きが速いんだけど」
「私は何も。
たぶん、ナルさんが知り合いの子供達を連れて回っているのが影響したのだと思います、目立ってますから」
「なるほどね、で、そのナルちゃんを動かしたのはマイちゃんと」
「私は私がやることを話しただけですよ、どうするか判断したのはナルさんです」
事務員さんが私の頭にポンポンと手を置く。
うーん、何で私は頭に手を置かれることが多いのだろう?
「今日は西と東の商業区域に行く予定ですが、お店は開いていますか?」
「ん、開いているけど、どうだろうね」
含みのある言い方をする。
何かな?
「勉強の方は何とかなりそう?」
「ええ、中古屋で良いノートを見つけたので、それを使っています」
「ほほう、中古のめぼしいノートや良い物は、領都に住んでいる人が買い占めてしまったはずだけどね?」
「不要紙の束から見つけました。
残り3日で勉強できる範囲が記載されていれば十分だったので、初等教育の途中までで十分ですから」
うん、本当は学校が始まるまでに出来る復習の範囲が記載されていれば十分だった、あのノートを見つけられたのは幸運だったね。
あ、また事務員さんが私の頭をぐりぐりする、今度は手を置いて止める。
少し、頬を膨らませて、遺憾の念を伝える。
「やるじゃない、その調子で頑張ってね。
ま、今日は多分駄目だから早く帰ってきてね」
クスクス笑う事務員さんが手を振りながら事務員室の方へいってしまった。
どういう意味だろうか。
ともかく、移動しよう。
部屋に戻り、空の鞄を背負う。
最初の雑貨屋は、色々あった、ただ日用品が中心で直ぐに必要になりそうな物はないかな。
そして、そのまま北側に歩いて移動して、商業区域に入る。
建物の雰囲気が変わる。
食べ物を売っているお店は今回は今回は関係ない、保存食は欲しいけど、それは採取のような森に行く依頼を受けられるようになってからでも遅くない。
金物屋を見つける、実用品を扱っているような店構えだ、早速入る。
「こんにちは」
「出てけ」
何?
ええっと、何か問題があるのだろうか、唐突な事に呆然とする。
いや、呆然としていたら駄目だ。
「なんで入っては駄目なんですか?」
とりあえず、入り口の外まで下がって訪ねる。
「嬢ちゃん、魔法学校に今年入学する生徒だろ、だったら駄目だ、生徒の身分証がなければ何も売れない」
あ、そういうことか。
私はまだ入学していない、立場としては入学予定の子供で、まだ生徒ではない。
だったら、決まっている。
「商品を見せてください、入学したら直ぐに買いに来たいので、それも駄目でしょうか?」
奥で商品棚の整理をしていた、気難しい恰幅の良いおじさんが、ジロリと私を見た。
私は、おじさんの目を見つめ返す。
少しの時間が過ぎる。
「見るだけなら勝手にしろ」
「ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げて入店する。
うん良い品質の実用品がそろっている、主に調理器具や金属食器と少し工具かな? あ、調理器具を調整したり直したりするのに使うのか。
業務用の網や鉄鍋の棚のを見ていたら、あった! 鉄串だ、長さも良いし先端が尖っていて片方は三角に丸めてある。
値段も手頃だ、これは買いだね。
そして、食器のナイフ、安いし先端が尖った形状のもある、使い捨ての武器のナイフより安い。
耐久性は期待できないけど、遠距離攻撃に使える。
「もし商業区域で別の見に行くのなら無駄だ、入店させないだろう。
身分証が出来てから来るんだな。 入店時に身分証を提示してから入るんだ」
あ、この人 面倒見が良い人だ。
この店は品質も良いしひいきにしたいな。
「親切に教えてくれて、ありがとうございます。
欲しいのが幾つかあるので、また来ます」
「ああ、勝手にしろ」
鼻の頭をボリボリかきながら、出てけと手でしっしと合図する。
ぺこりと頭を下げて、店を出る。
事務員さんに今日は駄目と言われたけど、うん、良い店を見つけられた。
今から戻るのは早いけど、自室で復習するのも良いかな?
学術区画の外の森の様子を知りたいけど、入れるようになるのはまだ先だ、今知る必要は無い。
商業区域の他の店を見る、買い物をしている人が居るが、子供は何かを提示してから入店している。
たぶんあれが身分証なのだろう。
学生ギルドでも入学後までは依頼を受けさせる気が無かったのかもしれない。
私が依頼を受けると言えば止められていたと思う。
もちろん、勉強を見て欲しいというのはアリだと思うが、安いとはいえ手当のほとんどを使ってしまう、少し裕福な人向けだろうな。
兎も角、商業区域に関しても、入学後だね。
学校の施設も入学しないと使えないし、そうなると残りの日数は復習につぎ込んだ方が良さそうだ。
少しだけど重要な成果を得られて、満足。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます