第181話 入学「入学準備」

「長い間、お世話になりました。

 ギムさん、ジョムさん、ブラウンさん、シーテさん、ハリスさん」


 私は、視察団のメンバーに深く頭を下げる。

 本当に何度もお世話になったし、戦い方だけじゃなく本当に色々な事を教わった。

 そして、今の私の新しい戸籍を作成する、危ないことまでしてくれている。


 今居るのは、魔法学校の直ぐそばにある生徒用寄宿舎の近くの駐車場だ。

 私たちを乗せた商人の荷馬車は、この後、私たちを問題なく送り届けた証明書を受け取って、持ってきた荷物を売り、コウの町や村へ売りに行く商品を購入して来た道を戻っていく。

 ギムさん達も、この後は領軍に戻って正式に除隊の手続きに入る。


 私は、ギムさん達に助け出された、魔物の氾濫の被災者である村の唯一の生き残りとなっている。

 なので、次に何時会うことが出来るのか判らないので、特別に別れの時間を貰うことが出来た。


「うむ。 我々こそ何度も助けられた、感謝する」


「ああ、教わることも多かった、お互いに切磋琢磨出来たと思っているぞ」


「これでもう会えないわけではありません、また何時か会いましょう」


「元気でね、もう無茶しちゃ駄目よ」


「マイさんの夢が叶うことを祈っています」


 それぞれに声をかけてくれる。

 本当にありがたい。


「私も、皆さんに会えたこと、一緒に居られたことは絶対に忘れません。

 また、コウの町で会いましょう」


 少し涙が滲んでいるのは、この際、仕方が無いだろう。

 皆と抱擁して別れを惜しむ。


「マイさん、そろそろ良いですか?」


 魔法学校の事務員の男性が声を掛けてくる。

 別れの時間だ。


「はい。 みなさんお達者で!」


 私は、寄宿舎の方に掛けながら、手を振る。

 皆がそれぞれ手を振ってくれる。

 涙を袖で拭く。

 私の新しい人生を作ってくれた、なら、私は前を向いて進もう。



■■■■



 寄宿舎には、数十人の子供達が集まっている所だった。 私は最後で後ろの方に座る。


「皆さん、こんにちは。 私は皆さんの身の回りのお世話をする事務員の一人です。

 今日は、主に寄宿舎での生活と入学までの予定を話します」


 ここに居る子供は、主に魔法学校が無く領都から近い町で、領都から直轄されている町とその町に管理されている村で、ここ数日に領都に到着した子供達だ。

 寄宿舎に住むことになるのは、領都が管理している町と町が管理している村の子供。

 あと、領都に住んでいる比較的所得が少ない都民の子供。

 貴族の子供や裕福な都民の子供は、学術区画にある専用の宿泊施設か別荘を借りて通学する。


 魔法学校は、領都以外にも幾つかの都市にある。

 基本的には、管理されている都市の魔法学校に入学することになる、

 例外としてだけど、特別優秀な子供は領都の魔法学校に編入することもある。

 更に例外として天才的な子供は王都の魔法学校へ編入されることも有るらしい。


「寄宿舎は個室です、出身の町で部屋を近くしています、お互い助け合ってください。

 あ、男女は宿舎が別ですよ」


 個室か、昔、私が魔法学校に入ったときは4人部屋だったなぁ。

 流石、領都の魔法学校ということか。


「食事は、朝から夜の間、深夜を除き好きな時間に食べることが出来ます。

 朝昼夜の時間以外はメニューが減っているので、基本的には、3食とそれ以外の軽食という感じで使ってください」


 おおう、これも凄い。

 ここに居るのは町民、村民の子供がほとんどだ、こんな好待遇を受けた事なんて無いだろう。

 実際、驚きでザワついている。


「お静かに。

 入学まで5日ほどありますが、全て自由時間です、お好きに過ごして構いません。

 学術区間であれば比較的安全です、見て回るのもよいでしょう。

 ”入学準備期間”として有効に使って下さい。

 あと、今週分の手当も後ほどお渡しします」


 うん、早速始まったかな。

 自由でそのうえ数日分の生活費まで支給される。

 周りは浮かれているけど、すでに教育は始まっている。

 必要な衣食住が提供されている。

 でも、善意で行われている事業では無い、魔術師や魔導師になれる素質を持つ人材以外は不要なんだ、だからこれは甘い罠。


 町でも散々説明されていたけど、子供だ忘れてしまっている可能性は高い。

 一応、前の学校と同じならここで入学出来ないということは無いはず。

 その代わり、入学準備が出来てないと、かなり手厳しい叱責が行われる。


 周りを見渡す、説明をしている事務員以外の関係者もニコニコ作り笑いをしている。

 目は笑っていない、むしろ観察している感じが伝わってくる。



 説明が一通り終わり、寄宿舎の施設の案内と、学校の正門まで行って帰ってきて、お金や制服、そして学術区画の地図など受け取る。

 私に割り振られた部屋に入る。

 うん、必要最低限だね。

 机とベッド、衣装棚、それだけだ。 別に支障は無い。

 手持ちで持ってきた荷物を衣装棚にしまう。

 私服と下着が数点、身繕いをするための道具が数点。

 時空魔術に関しては、まだ使えない事に成っているので、人前で魔術を使う訳には行かないからね。

 今の私の収納空間には、冒険者として必要な道具類が一通りある。

 これはギムさん達から提供して貰った物だ、本当に頭が上がらない。

 それに、タナヤさんから、フミのお古が幾つか貰っている。


 学術区画の地図を見る。

 学術区画については、ギムさん達もよく知らないので、情報はほとんど無い。

 ん?






 学術区画の中心に、学術区画の行政を行う役所と教会、そしてギルドが2つあった。


「学生ギルド?」

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