第109話 前兆「魔物の発生」
現在、東の森で薬草採取の依頼をしている、マイです。
温かくなった中、野草や山草も沢山出てきています。
探索魔法を使うと、私の他にも何人かの採集者の反応がある。
この温かくなった時に採集できる野草・山草は期間が短いので、かなりの人が森に入っている。
一応、戦える冒険者も一緒に入っているが、なんとなく緩和されてしまっている。
森に入って、頭の中のスイッチが切り替わり、兵士寄りの思考になると、その危険性に思い至り不安になった。
戻ったら、冒険者ギルトでジェシカさんに注意喚起をお願いしようかな。
私は、前回の熊の魔獣の討伐が評価されたのか、単独での森の立ち入りが許可されている。
今回は、誰かに見られる可能性があるので、採取場所を選び周りを確認しながら遠隔収納を使用する。
時空転移や収納空間に入るのは封印だ。
今回の採取も特に問題は出なかった。
採取量がちょっと少なかったが、誤差の範囲かな。
冒険者ギルトに戻って、ジェシカさんからゴブリンが発生したことを知らされた。
「マイさん、ゴブリンが北の森の西側で発見されました、問題なく討伐されていますね。
特に脅威がある魔物では無い事が伝わっていたので、けが人も出ていません」
「それは良かったです。 で、ダンジョンの方は?」
「それが、見つからなかったんです。
それで、マイさんに確認のため行って頂きたいのですが、良いでしょうか?」
「ええ、それは問題ないのですが、急いだ方が良いですね」
「はい、ダンジョンが長く存在するのは良くないので。
場所は、この辺ですね、片道1日かからずに行ける所です」
ジェシカさんが冒険者向けの地図で指さしながら説明してくれる。
北の森だけど確かに遠くはない。
「では、明日から1泊2日で、指名依頼ということで受けます。
薬草採取の依頼として受けた方が良いですか?」
「いえ、ダンジョンの確認の為で良いでしょう。
ある程度は周知されているので問題ないと思います。
あと、他の冒険者と一緒に行って貰いましょう」
「他の冒険者?」
今までソロで行動してきた。
出来れば、今回もソロで行きたい所だけど、どういう意味だろう?
「マイさんも知っている、クルキさんのチームです。
実力も人格も問題ないと思いますが、単独の方が良いですか?」
あ、いつも若い冒険者に色々世話をしている、おじさんのチームか。
もしゴブリンが出たとしても、人出が多い方が楽だから、良いのかな?
「判りました。
おじさんのチームなら信頼できますし、大丈夫です」
私から積極的に他の冒険者チームと合同で活動するのは始めてかもしれない。
待ち合わせ場所や時間を決めて、冒険者ギルトを後にした。
■■■■
「すいません、急ですが明日から1泊2日で北の森に確認のために入ります」
「え、明日からまた森に行くの? 何か起きたの?」
宿屋タナヤに帰って、明日の予程を話すと、フミが反応してきた。
「いえ、確認のためですね。 私かシーテさんでないと確認出来ないことと、急いだ方が良いので」
「危なくは、ないよね?」
「大丈夫ですよ、確認している限り危険性は低いです。
それに、冒険者ギルトで会ったの覚えないますか?
あの、おじさんのチームと合同です、実力のあるチームなので信頼できます」
私は、気負い無く話す。
それが伝わったのか、フミも安心したようだ。
「うん、でも気を付けてね」
「もちろん、命を大事に、でいきますよ」
不安は少ない、でも油断はしない。
安全だと思って行って、状況が違っていた、そんなことは普通にある。
だからこそ、今回は実力のある冒険者チームと組むことにしたんだ。
「さ、マイは身体を洗って着替えておいで、もうすぐ夕食にするよ」
オリウさんが、マントを脱いだだけの私の背中をポンポンと叩く。
厨房からは美味しい匂いが漂ってきている。
宿泊客への配膳は終わっているみたい。
「はい」
「あ、桶の準備してくる、水の方もまだ余裕かあるから」
フミも、帰ってきたばかりの私を足止めしたことに気が付いたのだろう、裏庭の洗い場の方へ準 備しに行った。
もしかして、一緒に身体を洗うつもりかな?
うん、フミも入ってきた。
少し熱めのお湯にして、身体を洗う。
背中をフミが洗ってくれたが、たわわな、たわわが時々当たった落ち着かない。
桶の大きさ、もう一回り大きく出来なかったのかなぁ?
夕食の後、湯上がりのほてった身体で、食器を下げに行ったら、宿泊客の息子さんかな若い子が赤くなってしまった。
主に、フミの胸を見ながら……。
■■■■
翌日。
何時ものように準備をして、宿屋タナヤの皆に送り出される。
集合場所には、丁度、おじさんのチームが集まる所だった。
「よう、嬢ちゃん、今回はよろしくな」
「おじさん、クルキさん? よろしくお願いします」
「うちのメンバーを紹介するぜ。
俺は、剣士でリーダーのクルキだが、おじさんで良い。
弓と槍、斥候も兼ねている、シグル、おれと組んで長いな。
剣士で俺の息子のオルキだ、若いが使えるぞ」
うわ、戦闘寄りのチームだった。
ん、息子?
「えっと、息子さんが居ると言うことは、以前はメンバーが違うのですか?」
「ああ、元々は俺の嫁が盾役で居たんだか、息子の嫁が産気づいていてな、2人目だから孫の面倒を見るために残った。
オルキの実力については、俺が鍛えたから問題ない」
あう、孫が生まれるというのに参加しないでよ。
「あの、そんな状況なら、私一人でも構わないのですが?」
「いや、町の問題だ、嬢ちゃんだけに任せられないぜ。
嫁も義娘も、納得している」
失敗したかもしれない。
彼らを死なせるわけには行かない。
足かせかもしれないな。
頭の中は、戦いのモードに変わってきている。
冷徹な判断が出てくる。
「危なくなった時は、自己責任になってしまいますが、大丈夫ですか?
私は、逃げることに関しては多分、一番ですよ」
「ああ、戦うのは俺たちの役目だ。
戦闘になったら距離を取ってくれ」
そこまで言われたら仕方が無い。
「判りました。
でも、敵わない相手の場合は、直ぐに逃げて下さい」
「判っているぜ、孫の子供の顔を見ないで死ねるかよ」
おじさん、ひ孫が生まれるまで生きるつもりなのか。
少し、安心する。
北の森に入る。
場所は、分かり易い場所だから、問題なく到着する。
この辺は、流石にベテラン冒険者だ。
ゴブリンと戦った場所には、目印となる棒が立てられていた。
「ここのようだな」
「では、探索魔法を使いますね」
探索魔術を行使する。 魔術と言うと後々面倒なので魔法と言うことにしている。
反応は無い。
うーん、何も無い所で魔物が発生する?
どういうことだろう。
「反応は無いですね、少し周囲を調査して、その後 拠点を作りますか」
「判った、が、なんか変じゃないか?」
おじさんが、周囲を伺いながら怪訝そうな顔をしている。
言われて気が付いた、さっきまであった小動物の反応が無い。
これは魔物が発生した時の現象に似ている。
っ、探索魔術に依存しすぎしてしまった。
「確かに、ちょっと警戒をお願いします」
私は、更に探索魔術を精密に行使する。
と、反応が出た。
ゴブリンが発生した場所だ。
ダンジョンに似た反応だがもっと異質で気持ち悪い。
ゾクッ
イヤな予感が走る。
「ゴブリンが発生した場所から離れて、何かある」
「何かって、なんだ嬢ちゃん!」
私が離れるのと併せて、全員が距離を取って包囲する。
ヌルリ
黒い塊が空中からしみ出すように現れる。
「何だありゃ?」
「判りません、けどイヤな予感がします、戦闘準備を」
全員が武器を構える。
黒い不定形の塊がグネグネ動く。
そして、ゴブリンが、ボトッと落ちた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます