第100話 流転「南の森の探索」
北の森の視察は特に問題なく完了した。
やっぱり、人手があると、効率が違うね、森の中域付近まではほぼ全域を確認できたよ。
ギムさん率いる視察団一行は、引き続きコウの町に留まって領都からの指示待ちとをするとのことになった。
その間、待機ではなく私の森の探索を同行するというか手伝う事になった。
名目は、よそ者が薬草採取の依頼の手伝いがてら、時間潰しをするという体裁だ。
宿泊も、宿屋タナヤを定宿とすることにした。
胃をしっかり捕まれちゃいましたね。
それからは、3日休んで、2泊3日で探索を行う事を続けた。
西の森、その北側と南側も無事に探索を終わることが出来た。
その間、私の修行も続けられた。
ブラウンさんが、腕力に頼らない戦い方を。
シーテさんからは、通常魔法の技術を底上げして、実用レベルまでにする事を。
それぞれ目標にして鍛えて貰っている。
それだけではなく、ジョムさんからは大盾を使った防御力が強い相手に対しての戦い方を。
ギムさんからも、圧倒的に強い相手に対して対応する方法を、けっこうスパルタ気味に相手をして貰っている。
兵士の頃に学んでいたことが、最低限で、そして自分の身を守ることに特化していたことに気が付く。
兵士の頃の皆は、子供の私を死なせないようにしてくれていたのかな。
そう思うと、輸送部隊の皆とはまた会いたいと思うようになった。
私の攻撃力向上は、都合良く使われるためにの準備とも取れるけどね。
でも、領軍にスカウトされるほどの実力のある元冒険者チームで、視察団のチームという遊撃部隊の精鋭部隊の人達の教えを受けられるのだ。
これほど恵まれていることはない。
今は、南の森の探索をしている。
とはいえ、南の森は他の森と比べて小さい、多くは平原が続いていて、林が点在している感じだ。
見晴らしが良いので、シーテさんの探索魔術が届くこと。
数回の探索で全体を確認できる。
なので、探索に来ているのか、修行を付けて貰っているのか、曖昧になってしまっている。
南の森の探索も2日目の夜。
拠点にしている場所で、恒例となった夕食後の私の批評会が始まった。
「うむ。 マイ君は持久力はある、が決定打となる攻撃を打ち込めるだけの力の不足がどうしても目立ってしまうな」
ギムさん。
輸送部隊を舐めないで欲しい、場合によっては、ほとんど休憩無しで輸送しなくてはいけない事もあるし、長距離の輸送もある。
背嚢に30キロ背負って、一日中歩き続けるのだって普通に出来る。
今も出来る……かな?
兎も角、輸送部隊は荷物を持って移動し続けることが多いので持久力だけは身についたりする。
「刺突系の武器も、身体が小さいのでリーチを取れないから優位に持っていけないのが問題ですね。
でも、剣捌きは守りに入れば、一般兵でも崩すのは難しいでしょう」
ブラウンさんが、私の成長を批評してくれる。
私の剣技は基本的に相手の攻撃を躱して、一撃離脱の逃げるための物だった、うん、子供の私にはこれが精一杯だよ。
で、ブラウンさんから、相手の関節や首などを切り裂くことで倒す方法を教えて貰った、でも、決定的にリーチが足りないので、相手の懐に潜り込むように戦わないといけない。
結局、根本的な解決にはなっていないのが悩ましい所だったりして。
「通常魔術に関しては、大分成長したわね。
実戦で使えるかは、これからだけど、10メートル位ならどの属性でも攻撃魔法が使えるわ。
威力不足はあるけど、これなら接近させない戦い方も出来ると思う」
今回の修行で一番の成果は、シーテさんからの通常魔術の指導おおかげで、威力を底上げできたことだ。
私は、魔法学校の頃は時空魔術に魔術の技術を学ぶことを注力していたため、基本6属性を使えるにも関わらず、威力は最低限の悲しいもだったからね。
けど、シーテさんの指導のおかげで、実戦でも何とか使える所まで引き上げる事が出来た。
シーテさんの攻撃魔法を見ると、圧倒系に見劣りするのだけどね。
「堅い敵との戦い方も様になってきた。
とはいえ、マイとは相性は良くないので、基本的には急所を突いて回避するしかないのだかね」
ジョムさんとの修行は、正直 手も足も出なかった。
どうやっても防御を崩すことが出来ず、ジョムさんレベルだと、防御の隙を狙うのも出来ない。
相手をするとしたら、翻弄して体力が尽きるのを期待するしかないという、そういう戦い方になってしまうと思う。
「うむ。 格上相手に対しては、慣れているな、受け流しも上手いし、距離の取り方も良い。
攻撃手段が無いから、これも回避し続けて隙をみて攻撃か逃げるしかないがな」
ギムさんとの修行は、ハッキリ言って死ぬ思いの連続だった。
木の棒とは言え、暴力的な威力で振り回されるのを必死に回避するのだから生きた心地がしない。
修行じゃなければ、石でも顔に投げて、ひるんだ隙に逃げ出していたよ。
「結局の所、私は中距離の魔法で相手を近づかせずに、一対多にならないようにして、1対1で弱点攻撃をして相手を倒す。 しかないみたいですね」
「だね」
私が、膝を抱えて、判りきっていることをグチる。
シーテさんが、同意してくれるけど、追い打ちです、ザクッときました。
「うむ。 そうなると、チームを組むのはやはり難しいな。
支援攻撃も弱く、近接しかないが打たれ弱い。
現状では、ソロで行くのが良いであろうな」
ギムさんが言う。
毎回、結局は、そこに落ち着いてしまう。
いや、本当は遠隔での収納魔法を利用した遠隔攻撃がある。
他にも、時空転移や、視覚を飛ばす遠隔視覚もあるので、チームで戦う際には有効だと思う。
イザとなれば、自身を収納するという避難も出来る。
でも、それはそのまま、私の秘密を知らせることになるし、これを知られた時に私の身柄がどう扱われるのかが判らない。
申し訳ないけど、これは今は誰にも話せない。
「でも、皆さんに鍛えて貰ったおかげで、ソロでも今まで以上に出来そうです。
感謝しかありませんよ」
「そう言って貰えると、こちらも嬉しいね。
さて、明日はコウの町へ帰還だね、早めに寝ようか」
ブラウンさんがまとめる。 すっかり日も暮れてしまった。
寝るといっても、夜の番は男性陣がやってくれるので、私とシーテさんは気兼ねなく寝かせて貰う。
テントの中で、シーテさんが私を見て居る。
なんだろ。
「ねえ、マイちゃん。
今も、魔導師を目指してる?」
何を聞いてくるかと思ったら、そんなことか。
「はい、それが絶望的に不可能なのは判っています。
でも、私に今残っているのはこれだけなんです」
「そう。 私も力になれれば良いんだけど」
「ありがとうございます。
でも、私自体、どうやったら良いのかも判らないので、将来、何か頼りたくなったらお願いしますね」
私は、シーテさんに笑って答える。
どんな笑顔に見えただろうか?
魔導師への道のりは、全く見えない。
本来は、魔法学校から、領都の魔法学校か王都の魔法学院への推薦され、その中で優秀な結果を残して始めて国に認められて魔導師になれる。
現在、魔導師になるのにはこの道以外にはない。
私は、魔法学校を魔術師として卒業してしまった。
それは、魔導師の資格が無いと判断されたのと同じだ。
だから、今の私が魔導師になるための道は無い。 でも、諦めるわけにはいかない。
「シーテさん、私は諦めない、それだけで今は十分です。
私が生きている意味は、それしかないんですから」
■■■■
翌日、予定通りコウの町へ帰還した。
冒険者ギルトで報告をしようとしたら、ジェシカさんが私達に別室に行くように促す。
何かあったのかな?
別室に移動すると、ジェシカさんがギムさんに告げた。
「領都からの手紙が届きました」
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