第82話 探索「昔のダンジョンコア」
いやいや、落ち着こう。
まず、この辺りは視察団のチームが探索しているはずだ。
その上で、何かを探知した。
探知の反応は微弱だ。
見落としていた可能性は少なくてもある。
もしくは、最近生まれたダンジョンかな?
兎も角、反応があった場所に移動する。
ダンジョンコア向け探索範囲は、特定の物に絞った探索魔術としては数十メートルと広くない。
とはいえ、濡れた落ち葉が積もった土の中を歩くのは大変だ。
反応が近くなった。
ショートソードに手を掛けて、直ぐに抜けるようにする。
周囲への注意も忘れない。
少し木々が入り組んだ所を注意深く歩く。
そこに有ったのは、小さいが崩れた斜面だった。3メートル位?
探索範囲を狭くして、さらに精度を上げてみる。
土の中から反応がある。
近くの木の枝を拾い、その場所の草木と土を慎重にどけていく。
あ、移動した。
木の枝で動かした時に移動したらしい。
注意深く見ると、前回見つけたダンジョンコアよりも更に2周りは小さいダンジョンコアが有った。
土にまみれている。
推測だが、ダンジョンが生まれたが、他の獣が入り込んで、ダンジョンコアを取り除いてしまったのだろう。
もしくは、ものすごく浅く、雨風で飛ばされたのかもしれない。
土の中にあったと言うことは、それなりに昔の物かな?
周りの土ごと包み、収納する。
探索魔術の反応が消える。 これで間違いないようだ。
「ふーっ」
一息つく。
そうか、こういうダンジョンだった痕跡も見つかる可能性はあるのか。
その後、薬草採取と探索を続けた。
ダンジョンコアの反応は無かった。
拠点とする山小屋に戻る。
この山小屋は冬の間はほとんど使われていないようだ。
通常、山小屋には悪天候で閉じ込められた時のために、食料や毛布などが置かれていることがある。
それが綺麗に無くなっていることは、今は使用していないということだろう。
建物自体もしっかりしているので、放棄されたとは考えにくい。
隅に積まれていた薪を使って火を起こす。
お湯を沸かしながら、今日の成果を確認する。
薬草は買い取りしてくれる最低量は集まったが、通常の薬草採取では赤字になる量だ。
少なくても5倍は取らないといけない。
探索が主なので、絶対に集めないといけないわけじゃ無いけど。
そして、ダンジョンコアだ。
おそらく、自然発生し何らかの理由で自然に消滅した未発見のダンジョンのコアだろう。
もしかしたら、一般で思われているよりダンジョンという物は多く発生している可能性がある。
ダンジョンの探索は今までは発生したことを目視確認しか行われてきていないので、情報が足りていないだけかもしれない。
とにかく情報が足りていない。
もし、1日1~2個で土の中からダンジョンコアが見つかるようなら、少し面倒だ。
今日だけでは判断出来ないけど、場合によっては探索の計画を見直す必要がある。
そして、ダンジョンに遭遇する可能性が少し高くなった、と思って良い。
もちろん、ほとんどが今回のダンジョンコアが作るような、小規模な物だろうけど、そうじゃない可能性は捨ててはいけない。
外が暗くなってきた。
干し肉とパン、チーズで簡単な夕食にする。
■■■■
さて、今まで先送りにしていた時空魔法について検証をしよう。
今回のはかなり特殊だ。
収納空間を通して別の角度または遠くを見る。
これだけだと、訳が分からないか。
整理しよう。
今の私の時空魔術を挙げると。
基礎として、自分の収納空間の内容は頭の中に思い浮かべることが出来る。
自分自身を収納し取り出すことが出来る。
また、取り出す時には、周囲の状況を確認することが出来る。
次に、遠隔収納と取り出しが可能だ。
自分の見た場所に限定されるが、一度見て場所を確定できれば、その後は見ていなくても問題ない。
これを組み合わせることで、擬似的な転移が可能だ。
これらを使用して、色々出来るようになった。
今回は、自分自身を収納していない状態で、収納空間を経由して遠隔取り出しの周囲確認を行う。
そうすることで、別の視点を得ることが出来る。
空が見えるのなら、視界の効かない森の中でも、上空から周囲を確認することが出来る。
遮蔽物が有っても、その向こう側が見えれば、反対側からも見ることが出来る。
遠隔攻撃は今まで遠くで見るしか無かったが、攻撃する場所の視点で攻撃できる、命中率が格段に上がるだろう。
良いことずくめのように思えるが、どんな制約があるのか判らない。
さあ、検証だ。
まず、対象となる遠隔取り出しの位置を意識する。部屋の隅だ。 それだけ、魔力も消費しない。
次に、自身の収納空間を意識する。 ごく微量の魔力を消費するが、回復の方が早い。
遠隔取り出しを意識する、自身の魔力が消費され始めたのが判る。 回復量より多くの魔力を消費し始めている。
取り出す位置の周囲確認を行う。 見えない。 ただ何となくボンヤリと何かがある。
一旦、止める。
やっぱり、遠隔取り出しでの周囲確認が問題になったか。
何が問題なのかを確認するため、時空転移の手順を分解して、自身を収納空間に収納する所で止める。
魔力の消費は、自身の収納をした時と変わらない。 大きく魔力を消費するのは遠隔で自分を取り出す時だろう。
収納空間から遠隔取り出しを行う場所の周囲確認を行う。
問題ない、魔力の消費も回復量より多いが気にするほどでは無い。
収納空間から、元々の位置へ自分を取り出す。
魔力の消費は、自身の収納と取り出しの時と変わらない。
んー。
ここで問題になるのは、通常の空間から自身の収納空間を観察するのと、自身の収納空間から遠隔取り出しの周囲を確認する所で、上手くいっていない。
何故だろう?
もう一度、自分の収納空間を確認する。
「あ」
収納空間にある物は、その物体が頭の中に思い浮かべられる。
直接見ているわけでは無い。
対して、収納空間から通常の空間を確認する時は、視覚で見ている。
これでは、上手くいかないのは当然だ。
方法を考える。
どちらか一方に合わせる。 合わせようとすると、どちらかに無理が来る。
では、思い浮かべるのと視覚を収納空間の中で変換して、私は収納空間の中を確認するような感じにすれば良いのではないか。
方向性は決まった、試してみよう。
だけど、ここで気力が尽きた。
今日はこの辺にしよう。
私は、自身を収納空間に入れると、少しずつ快適になってきている場所で、身軽な服装になり、ベッドには入って寝た。
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