第61話 ダンジョン「帰還」
午前中に冒険者ギルドに到着する。
受付窓口では予定より遅れたことを聞かれたが、事前打ち合わせ通り、調査に時間が掛かって無理せず1泊したこととして報告した。
今は、会議室の中だ。
ギルドマスターと視察団のメンバー、そして私。
私、居る必要ある?
ギムさんが、本当の顛末を私の収納爆発の件だけぼかして話してくれた。
「ダンジョンに関しては、問題なく終わってくれて良かったです。
ですが、魔獣ですか」
渋い顔をするギルドマスター。
魔獣の増加も魔物の氾濫の前兆と言われていた、知っているのなら気にはなるのだろう。
「領主にも報告は上げます。
おそらく、近隣の探索依頼が定期的に出る可能性が高いですね。
この町に、冒険者を専属にしている人はどの程度?」
ギムさんが、領軍の視察団 団長としての話をしている。
ダンジョンか又は、魔物の情報を定期的に調査する必要性があるのか。
「今、コウの町では専属の冒険者チームは居ません。個人では居ますが害獣駆除程度ですね。
正直、マイさんが一番の適任なんですが」
「む、マイ君は専属の冒険者ではないのかね」
「はい、宿屋の店員をしつつ、冒険者として活動しています。
宿屋の暇な時間や、指名依頼を中心に処理している所ですね」
私が補足する。
町に居る元兵士で一番若く、また、4人しか居ない魔術師の一人である。
ギルドとしても、目を掛けて貰っている。
「ふむ、未成年であるからか。 成年したら、王国軍に復帰であるかな?」
ジョムさんが、際どい所を聞いてくる。
出身の村が反乱で殲滅された、なんて情報は知らないだろう。
「王国軍へは要請があればですね。 私の収納容量は少ない方なので、呼ばれる可能性は何とも」
濁らせて答えさせて貰う。
というより、本当に判らないんですよ。
「兎も角、専属の冒険チームを早急に編成するか、招集した方が良いな。
ダンジョンが発生したときに、後手に出るのは避けたい」
ギムさんが提案する。
ギルドマスターも同意する。
「ええ、幸い、冒険者の比重が多い者も居ます。
条件を提示すれば専属になる可能性は高いでしょう」
話し合いは続く、正直、関わり合いたくない話ばかりだ。
ようやく開放されたのは、日が傾いてきた頃だ。
よくあれだけ話すことがある物だ。
私には、定期的に森に入って、薬草採取のついでに森の調査依頼が追加された。
薬草が採れなくても、入って森の様子を確認するだけで収入になる。
あと、それに伴って、コウの町の周囲の森の詳細地図も見せて貰えることになった。
うーん、良かったと言って良いのか?
■■■■
宿屋タナヤに帰ってくる。
「ただいま」
勝手口から入る。
声に気が付いたのか、フミが顔を出す。
「あ、マイお帰り、昨日帰ってこなかったから心配したよ」
フミが駆け寄ってきて抱きしめてくる。
こらこら、服が汚れるよ~。
痛いのは我慢。
「フミ、午前中には戻れたんですが、報告に付き合わされてしまって疲れました」
「あー、何となく判るな。 今日は泊まり客が2組で3人5人なの。 手伝える」
「問題ないですよ。 といっても配膳くらい?」
「あ、水浴びしたいんだって、水汲み場から水を汲んできて欲しいんだけど。
あと、お湯を沸かさないと」
「判りました、水汲みなら荷物を置いたら直ぐに行きます。 暗くなるまえに終えたいですね。
お湯は、夜ですか? 魔法で温めても良いですよ?」
「うーん、これは聞いてみないと、疲れているでしょ」
気を遣ってくれる。
嬉しいものだ、無理はしない、これに限るな。
ホコリっぽい身体なのに、フミは気にせず、ハグして頭をワシワシしてくる。
私もそれに身を任せて、力を抜く。
オリウさんが、気が付いて出てきた。
「あ、マイお帰り予定から遅れたんで心配したよ」
「オリウさん、ただいま。 調査が少し長引いて念のために追加で1泊したんです。
で、午前中には戻ったんですが、ギルドで報告に同席していたらこんな時間に」
「お偉いさんの話は長いからね。
ゆっくり休むかい?」
「いえ、お客さんがいるのなら仕事します。
昼間は座っていただけですし。 疲れていません。
早速、水を汲んできますね」
「ああ、お願いするよ。
あんた、マイが戻ってきたからおかず増やしておいてくれ」
「おう、判った」
奥からタナヤさんの声が聞こえる。
「タナヤさん、ただいま戻りました」
「おう」
料理中のタナヤさんは、ぶっきらぼうだ。
料理に集中していることが判る。
でも、優しい声だ。
部屋に戻る。 布団がふかふかになっている。 干しておいてくれたんだな。
服に取り付けていた装備を外して収納する。
貰ったショートソードを取り出して見てみる。
私に武器の価値は分からないけど、不思議な蒼い光沢のそれは、芸術品のようでもある。
大切に収納した。
さて水汲みだ。 マントを着て、樽を収納して水汲み場へ行く。
人手が少なくなった町を歩きながら、考える。
ダンジョンの発生とダンジョンコア。
領軍の視察団がダンジョンの発生状況を調査して管理している。
国命で、かなり本格的に。
そして、魔物と、魔獣。
偶然なのだろうか?
偶然に片付けるには、引っかかる所が多すぎる。
魔物の氾濫が起きたら、果たしてどうなるのだろうか?
私一人で何とか出来る問題では無いのは判る。
でも、なにかできないか考えてしまう。
もう一つ、時空魔法で、見る。 引っかかっていたことだ。
収納空間からの攻撃、2つの場所から攻撃できる。
時空転移、目視できる先に収納空間を利用した疑似転移ができる。
もしかしたら、収納空間経由で、遠距離を見る事が出来ないか?
収納空間の中の様子は頭の中に思い浮かべることが出来る。
では、遠隔取り出しの場所から外を見ることは可能では?
目視の範囲ではあるが、別の視点から周囲の状況を確認することが出来る。
これは、遠隔攻撃の精度も上げる可能性も秘めている。
実現したい能力だ。
そして、通常魔法の威力の底上げ。
シーテさんに感謝だ。私は、魔法学校では時空魔術に注力して学習していた。
他の通常魔術や基礎魔術は、学習は十分だが、実践が伴っていなない。
欠けている基礎魔術の習得も課題になる。
やることが多くなった。
まずは、水汲みかな? 水汲み場で樽を出して水を貯め始めた。
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