第57話 ダンジョン「探索2」
ギムとハリスが探索を続けている一方。
ジョムとブラウンも探索を続けていた。
「ジョム、何か痕跡はあるかい? 私には全くなのだけど」
「無いですね、本当にこれっぽっちも。
ダンジョンの跡の所だけでした」
「うーん、森の様子も全く普通だ、ひと狩りしたいね」
「ブラウン、探索の手を抜いてはいけませんよ。
でも、そうなると一番の懸念はマイさんですか」
「マイちゃんなら問題ないよ。
朝起きたときに、ハリスがマイに浄化魔法を掛けている所を見た。
で、マイちゃん特になんともなかったから、大丈夫だね」
「それは良いことです。
本当に、魔物の気配や残滓が見つかりません、これは、全く発生しなかった。
か、もしくは、気配や残滓を消せるほどの魔物が出たか」
「で、実際、どっちの可能性が高いのかな?
ジョムの考察として」
「前者でしょうね。
実際、ダンジョンコアを見ましたが、あれほど全く魔物の残滓が無いのは初めてです。
魔物が発生していない証拠でしょうね」
「だとしたら、もう本当に森の散策だなぁ。
ひと狩りして良い?」
「ブラウン、シカ肉も十分あるので、美味しい鳥を希望します」
「りょーかい」
「探索も忘れないように」
「重ねてりょうかい」
ブラウンは、愛用の弓を手とって、獲物も探し始めた。
『ブラウンは、狩猟している時の方が、探索の精度が上がるんでよすね』
ジョムは、やれやれというポーズを取って、探索を再開した。
太陽は、頂上を過ぎている。
そろそろ戻りながらの探索にしよう。
「ブラウン、ここまで来た所にあった水場に取り敢えず向かいましょう。
そろそろ引き返しても良い頃です」
「ん、そうだなね」
■■■■
「むーん」
はい、現在絶賛、魔術を行使中のマイです。
通常魔法の訓練を、シーテさんの指示の元行っています。
私が、3年目で徴用され、特例で魔術師になったという話を聞いて、魔術の授業を始めてくれたのです。
今は、手の上に火の玉を作っている。
「うん、やっぱり基本はしっかりしている。 魔術についてかなり勉強した?」
「2年目3年目は、上位5人には入っていました」
「だよねぇ、魔術の技術や理論の知識は私以上だもん。 魔導師志望だったの?」
「はい、今でも魔導師になりたいとは思っています。
まぁ、例外魔法を使っている時点で夢なんですが」
「いや、正直、知識量は魔導師の育成する学院に入れるレベルかもね。
私は、そこまで届かなかったから判らないけど。
あ、ほら魔力供給が乱れている」
どうも私が通常魔術を上手く使えていないのは、魔力放出量の制御が出来ていないせい、らしい。
特性のあった時空魔法に関しては、魔力放出量の制御は自然に出来ていたので気が付かなかった。
成果は出ている。
親指ほどの火をだすのが精一杯だったのが、今は握りこぶし大まで大きくなっている。
「で、温度の制御。これは出来るでしょ」
「はい、温度を上げます」
赤い炎から、黄色みがかった赤、オレンジ色に変わる。
温度が上がっている、手に掛かる輻射熱も熱い。
温度の制御は、基礎魔術でどの属性の魔術でも習得が義務付けられている。
大抵は、水を凍らせる、沸騰させる、から学ぶ。
火は、その次で特性がある人が中心だ。
「上手くいっているようです」
「うん、さすが優等生、飲み込みが早いね。
当面は、魔力放出量の制御の練習かな?
どうやら魔力量は十分あるみたいだし」
「軍でひたすら時空魔法を使い続けていましたからね。
自分でもよく魔力切れを起こさなかったと思います」
以前にも書いたが、魔法使いや魔術師は色々な制約がある。
時空魔法の場合、魔力が枯渇したら収納することが出来なくなって,収納空間にある物を吐き出してしまうというのもよく聞く。
私の場合は、出し入れの時のみ魔力を消費するので、魔力が枯渇しても、回復すれば大丈夫、だと思いたい。
精神的に疲れたので、一休みする。
空を見上げる。 だいぶ太陽が傾いてきている。
「そろそろ夕食の準備をしましょうか」
「そ、そうね。 何を作ろうかしら?」
ん、シーテさんの様子がおかしい。
もしかして料理は苦手?
いやまて、私も料理は作れる種類は片手ぐらいだそ。
「シーテさん、何が食べたいですか?」
「あ、肉の煮込みかな?」
「でしたら、シカ肉を薄切りにして煮込みましょう。
あと、パンで野菜と挟んで食べれば良いかと」
「良いんじゃないからしら」
「では、パンの方をお願いします。
私は煮込みをやりますので」
シーテさんがホットしている。パンを切る位なら問題ない感じだ。
さて、焼くか煮るかなら何とかなる。多分。
野菜スープも作るかな、一応 最低限食べれるものは作ってきた。
今回は、2つの鍋を使う。
1つは、シカ肉を脂身を入れた後、投入して炒める。
焦げ目が付いた所で、赤身があっても気にせず、調味料を投入、ワインを少し。
あとは、煮込むだけ。
野菜スープは、塩味だ。勘弁して欲しい。
味は…微妙だ。うん、判ってた。
そんなことしていたら、ギムさんとハリスさんが帰ってきた。
ハリスさんが少し味見をして、幾つか手を加えたら、普通に美味しい料理に変身した。
私とシーテさんが感動していると、微妙な顔をしていたけど。
料理が完成してしばらくして、ジョムさんとブラウンさんも戻ってくる。
鳥が数羽、背負っている、狩ってきたのか。
「おっ、良い匂いですね。 これはマイさんが?」
うん、シーテさんの料理の腕は共有されているようだ。
「一応。 ただ、ハリスさんにまともにして貰いました」
うん、正直に言おう、明日の料理を頼まれても困る。
「あ、そうなんですね。
でも手直しで食べられるようになるのなら才能あるよ」
シーテさんが、膝を抱えて座り込む。
地面に何か書いてる。
「と、とにかく。夕食にしましょう」
夕食中。特に何も無かった事が共有される。
「明日は、ここから東側を探索して、そのままコウの町へ戻る。
全員での移動だ。
東に進むと街道に出る、その街道を通ってだから明日中には戻れるだろう」
全員が頷く。
その後は、雑談となったが最後に、ギムさんから爆弾が。
「なんだ、料理が出来ないのは女性陣のみか」
がーん。
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