第42話 日常「馬での旅」
町を出て2日目。
馬は
2日を経過して、冒険者3人の事が判ってきた。
3人は、同じ村の出身で、いわゆる幼なじみだ。
冒険者としての仕事は村の農作業が忙しい時期以外でしているという、比較的冒険者としての活動の比重が多い。
剣士でリーダの彼マイトは、面倒見がいいが お人好しの部分があり、思ったことをすぐ口にしてしまう浅はかなところがある。
とはいえ、裏表がないので、扱いやすそうだ。
最初にあったときの態度は、カイにそそのかされたらしい。
斥候の彼カイは慎重派かな、ヘラヘラとしているがムードメーカーとしての役割をはたしている。
意図的にしているようで、時々イラッとするような言葉や極端に下手に出て、有利な方向に話を進めようとしたりする。 気にしすぎないのが良いかな。
魔法使いの彼女ハル、チームの頭脳だ。
2人をほっとけなくて付いてきた感じ。 紅牙の安全と利益を考えて行動している。
魔法学校には入学できなかったが、その魔力の量は戦闘で牽制できる程度の威力はある。
人前ではしっかり者の雰囲気があるが、マイトに気があるのか時々可愛らしい態度だ出て居るね。
この国では、基本的には何かしらの正職を持っているが、次男以下は仕事が少ない事が多い。
それをカバーするのがギルドによる副業だ。
彼らも普段は、牧場の雑用や警備、農作業の雑用などを受けている、この国の普通の冒険者だ。
この国は、約500年前に統一されて以降は、大きな戦いは起きていない、と言われている。
今回は関係ないが、専業の冒険者も居て、500年以上前に壊滅した都市の遺跡調査やダンジョンを調査すること、大型の魔獣を討伐することを専門にしている冒険者も居る。
馬上で周囲への光魔術の索敵魔法を時々使いながら、考える。
と、ハルが横に並んでくる。
「マイ、魔術を教えられないのって、何で?」
先日の野宿の時に、ハルから魔術を教えてほしいと言われた、で定型文のお断りをしたのだけど、諦めていないようだ。
「別に意地悪や秘密主義という訳ではないですよ。
前提ととして、魔法の基礎技術を学ぶ必要があります。
それを教える事ができるのが、話したとおり魔導師、または魔法学校が認定した魔術師の先生になります。
何度も聞いたと思いますが」
「で、ですね。
私はどんな風に学んだかは伝えられますが、その意味を私は全て理解していません。
中途半端な理解で魔術というものを教えることは、誤った知識を広める可能性があると言うことで、厳重に禁止されているんです」
ハルは納得していない顔をしている。
「それに、魔法学校に入れなかった人が使用すると、自分の能力以上の力を使ってしまう危険があって、最悪死にます。
その責任は、たとえ自己責任だったとしても、教えた者の責任も問われます。
だからこそ、魔術師は魔法使いに魔術を教えることは無いです」
伝わっただろうか?
魔術は魔力を効率よく精度良く、そして最大に使いこなすための技術だ。
不完全な知識で使用すると、自身を傷つけたり、予想外の魔法を使ってしまう可能性がある。
「うん、言っていることは判るんだけど、やっばり魔術を使いたいという気持ちはなかなか捨てられないなぁ」
ハルはまだ、後ろ髪が惹かれているようだ。
たぶん、チームとしての役割としてもっと役に立ちたいのだろう。
この分だと、魔法を使うコツなんかを聞かれる可能性は高いなぁ。
草原を風が抜ける。 肌寒い。
探索の魔法を使う、いまは光魔術で日中の光が満ちている状況では使い勝手が良い。
基本魔術は魔術師なら一通り使える。
探索魔術は、周囲の様子の変化を捉えるもので、上位の使い手では正確な場所や大きさも判別できる。
私にできるのは、ぼんやりと変化があるのが、なんとなく判る程度だ。
探索の魔術に反応が出る。
「約30メートル先の左手、草むら付近に反応。
たぶん、小型の獣の群れ?」
基本的に探索魔術は見通しが良ければ指向性を持たせて40メートルぐらいは行く。
全方位なら20メートルが精一杯だけど。
斥候のカイは、俺の仕事って……とぼやいていたが、安全の方が優先だ。
「おっ、群れウサギだ。狩っちまおう」
斥候のカイが、先行して弓を打っていく。
上手い。なれた様子で5本の矢を一気に打ち出していく。
3本命中、残りの群れウサギは森に逃げていく。 村では狩人もやっているのかな。
とはいえ、リーダーの判断を仰がずに勝手に行動するのは普通無い。
この辺は長く付き合っている仲間の阿吽の関係というのだろうか?
「カイ、急いでいるって知っているよね。
で、何で狩りなんてしてるの?
処理している時間があると思ってる?」
ハルがジト目で言う。
「わ、判っているって、新鮮な肉がほしかったんだって」
ハルに馬の手綱を渡して馬を預け、大慌てで仕留めた群れウサギの処理に走る。
ケントさんが苦笑いをしている。
ああ、単純に新鮮な肉が食べたかっただけか。
私もハルと一緒にジト目で見る。
それからしばらく移動して、3日目は、村に泊まれた。
宿の人に群れウサギを使った夕食を出してもらった。
煮込み料理は、美味しかった。
村の宿は、男2人と女2人、依頼者1人の部屋割りで休む。
ハルと二人きりになる。
「マイさんは、兵士さんでいいんですよね。
なんで、冒険者しているんですか?」
「未成年だからですね、徴用期間が終わって、成年までの間は普通に休暇期間というわけです」
「じゃ、将来は兵士かぁ。 いいな。
安定した職業でしょ。 最近は危険じゃないし」
現実を知らない人にとっては、軍にいるというのは花形職業で安定した収入が得られると思われるだろう。
「軍に入るのは、正直勧められないですね。
故郷に戻れる時間は短いですよ。
あと、戦争は無いですが、戦闘は多いです、でなければ私が徴用されたりはしません」
「うっ、そうなの?」
「盗賊が多いですけど”他も”多いです」
伝わるとは思わないが、西の遊牧民族が侵入して村や町を略奪するとか、東の盗賊団はちょっとした軍隊並みの武装をしていたりとか、そして、少ないが村や町規模での反乱はある。
「領軍に入った方が、いいかもしれませんが、どこに配属されるか判らないのは同じです。
そして、戦闘命令があればどんなに理不尽でも一切反論せずに戦う必要があります。
それが兵士です」
「……それ、で、良いの? マイさんとしては」
「良くないですよ、でも軍というのは、そういうものです。
全体で一つの生き物のように動きます。
そうしないと、負けて死ぬのは自分と仲間たちです。
そして、その後は守っていた国民が犠牲になります」
「私は嫌だなぁ。 そんな責任背負えないよ」
うん、気持ちはよく判る。
私は、成人したら正式に軍に入るのだろうか?
あれ? 私の生まれた村、国に対して反逆した。
その生き残りを入隊させたりするかな?
んー、判らない。
「でもハルさん、3人で依頼をしているときに、全員が別々のことを言い出したら何もできずに最悪は全員死にます。
規模とか違うところはありますが、いざという時にどうするのかよく話し合った方が良いですよ」
「そうだね」
ハルはそう言うと、ベットに潜り込んだ。
私もベットに入って天井を眺める。
私は指示を受ける側で、考えて指揮することは無かった。
でも、これからはどうすれば良いのかな?
目を閉じて睡魔に身を委ねた。
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