第22話 帰郷への道「エピローグ」
「しまった見失った。」
林の影から男が出てくる。
風体は、村人そのものだ、特徴も無い服装と顔つき。 ただ目つきが鋭く、周囲を警戒していた。
マイが帰郷することは、領主経由で連絡が来ていた。
そして、帰郷する村が反乱を起こした村であることから、マイは注意人物とされていた。
もっとも、反乱の首謀者との繋がりもなく、反乱も軍に所属している時に発生したものだから、念のための確認だ。
旧村民を埋めた小山で、町に移り住んで生き残った旧村人中の一人と別れた所までは確認した。
悲しんでいる様子はあるが、怒りや憎しみの様子はなかった。
荷物も持たず、町に戻るのは多少無謀だが身軽で月明かりがあれば翌朝には着けるかもしれない。
距離を取って後を付けようとした所で、姿を見失ってしまった。
「先回りするか」
風の魔術を行使して、追い風を作り、走る。
夜の鐘が鳴る前には着ける。
マイが既に町に戻っていることを聞いて男は驚く。
輸送部隊に所属していたことは、資料で知っていたが、何かしら高速移動する手段を持っていたのか?
只の時空魔術師ではなかったのか?
疑問は尽きないが、他の仲間と連絡を取る。
トムの店に寄って、そのまま町を出たことを確認した。
何処に向かったのか? 領主の居る都市の方面に向かったのは判っているが、ここままま追跡するべきか。
男は近くの倉庫に入り、中に居る男性に報告する。
報告を受けた男性は暫く考えて、追跡の終了を判断した。
もし、魔術師として活動すれば、その行動は何らかの形で入手できる。
必要なのは、国に対して反乱を行う一派であるかどうかである。
その可能性は、無いと判断された。
また、時空魔術師を反乱の一派に取り込もうとする動きも無かった。
倉庫の中に居たのは、この町の町長だった。
「どうやら、ここではない何処かでやり直すようだからな」
トムと奥さんとのマイの会話は全て把握していた。
トムは今も、この国に反意を持つ者が接触してくるのを期待してのエサとして監視されている。
トムが生かされたのは、反乱の芽を全て摘むため。
「領主様に報告して、そろそろ監視の縮小を願いますか」
町長は、肩をほぐしながら、倉庫の奥に姿を隠していった。
■■■■
翌日、荷馬車に村の山菜や毛皮を積んだトムが帰宅する。
トムが帰宅すると、奥さんからマイが町を出たことを聞く。
「何処に向かうのかなぁ?」
「聞いていなかったの」
「聞けなかったよ、ただ、たぶんもうこの町にも村にも来ることは無いと思う」
「そう、恨まれてそうね」
「いや、恨むと言うより、何だろう? もっと別の、そう見限った感じがした」
「見限るって? 判らないわねぇ。
夕食にしますか?」
「ああ、お願いするよ」
奥さんは、夕食の準備をするために台所に向かう。
部屋の窓は少しだけ開いていた。
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