第17話 帰郷への道「町」
各自、朝食を済ませると、町への移動が始まった。
荷馬車のおじさんは、逆方向から来た馬車の人にも注意をした。
顔見知りとのこと。
「あの、馬車の彼にも知らせても良いでしょうか? 知り合いなんです」
「判断は任せます。 私に出来ることは多分ありませんので」
「感謝します」
それから町までの間は、特に何も無かった。
男の子が私の話を聞きたがった位か。
男性も私への興味が失せたのか、眠りについている。
町に着く、宿屋を幾つか紹介して貰い、また、明日の集合場所と時間を確認する。
基本的には、朝の鐘が鳴ってから、適当な時間を待って出発だ。
正確な時間なんて、普通の国民は必要ない。
朝の鐘と、太陽が頂上に来たときの鐘、日が沈むときの鐘の3つで行動する。
男性は、この町で用が出来たと荷馬車を離れた。
おじさんは、役場への連絡をすると分かれた。
若い男性は、何時も利用している宿屋に荷馬車を移動させていく。
幾つかの荷物を納品し、また購入するのだそうだ。
そろそろ、背嚢に入れてあった食料を補充しておきたい。
収納の空間には十分な携帯食の備蓄があるが、それを利用するのは一人の時だけにしたい。
町の宿を2件周り露店で買い物しながら評判確認して、清潔そうで他の女性を含む団体の客が宿を決めている所を見て、その宿に決めた。
宿を決める時は店員の値踏みするような目でなんとなく判る。
軍に居たときも、少人数で急いで荷物を運ぶ事があった、そのようなときは飛び込みで宿を取る。
大抵は断られないが、軍に対して良い印象を持ってる所だけでは無い。
軍人でもお酒が入ると横暴になる人も居る。
過去に嫌なことがあったら、表面的には丁重でも目は侮蔑の視線を投げかけてくることもある。
宿を取ると、背嚢も収納し、買い物をする場所を聞いて、町に出る。
この町は、私の進む町の方向とは別の町への道があり、宿場町として大きめの規模になっている。
到着は昼過ぎだったので、露店も店じまいし始めている。
私は、携帯食と硬パン、チーズ、乾燥肉を購入する。
価格は、要塞の町で購入したより少し安かった。
見たことも無い野菜とか有ったが、今は用がない。
宿に戻り、湯とタオルを注文する。
身体を拭き、頭を洗う。
私の水魔法はコップ一杯の水を出すので精一杯なので、飲み水として使用する。
汚れていた肌着も洗い、部屋に干す。
そういえば、収納している間に乾くのだろうか?
今度試してみよう。
汚れた水は、裏庭の側溝に捨てる。大抵の町は、裏通りに下水用の水路がある。
上着やズボンは、よほど汚れない限り洗わないけど、そのうち洗いたい。
窓から外を見て日がかなり傾いているのを確認し、夕食を取りに食堂に行く。
宿屋は食堂と飲み屋を兼ねていることが多いので、酔っ払いが出てくる前に食べ終わって部屋に戻りたい。
労働者の彼らは、夜の鐘が鳴って仕事終わりにやってくる。
「少し早いですが、夕食いいでしょうか」
「大丈夫ですよ」
食堂には、すでに数人の客がいる。
2人用の小さい机に座り、定食を頂く。
定食の種類は2種類、焼き肉か肉スープだ。ほとんどの宿では定番のメニューで味付けが違うだけ。
私は、肉スープと、追加でサラダを注文した。
生野菜は出来るだけ、毎日食べた方が良い。
これも、一緒に任務に就いた兵士たちからの言葉だ。
理由は知らないが、病気になりにくいとか言っていた。
私は成年していないので、お酒を飲まない、その分だと思えばいい。
肉スープは、調理が良いのだろう、柔らかく煮込まれていた。
固い乾燥肉に飽きているので、軟らかい肉は嬉しい。
パンも十分美味しい。
サラダは、種類が少ないが量があったのでよしとしよう。 ドレッシングは酸っぱい果汁と塩と油かな? サッパリしていてペロリと食べきった。
夜の鐘の音が響く。
食べ終わるころ、一日の仕事を終えたであろう人がどんどん入ってきた。
「ごちそうさま」
店員に声を掛けて、部屋に戻る。
長居すると、女性ということで絡まれる可能性が高い、部屋への階段を上る。
遠目には男女どちらか判らない格好をしているが、何人かは、私が女性で有ることに気が付いて見ている。
ここは宿泊客以外は部屋のある2~3階へは入れないことになっているが、知り合いを装ったり店員の目を盗んで来る人はやっぱ居るだろうね。
なので、3階に行く振りをして足音を多分聞こえないだろうけど、偽装してから自分の部屋に行く。
部屋に入ると暗い。窓からの日差しはもう弱い。
明かりも有料で、オイルランプが普通だ。
私は光魔法でろうそく程度の光を出せるので不要。
購入した物を背嚢に詰める、買い忘れはないな。
余計に購入した物は、収納空間に適当に収納する。
昨夜は徹夜したので、早めに寝て疲れを取っておきたい。
床下からの喧騒を聞きながら、眠りについた。
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