第2章 帰郷への道

第14話 帰郷への道「荷馬車の中」

 さて、軍務から外れ、現在死人扱いのマイです。


 荷馬車に揺られながら、これからの事を考え中です。

 死人扱いから生き返る為の手順を確認する。


 まず、故郷の村の村長に、用意されている書類へのサインをして貰う。

 何故それが必要なのかを記載された書類も用意されている。

 内容を見たが、5年の軍務を満了し、円満に退役したようなことが、難しく書いてあった。


 それを村を管理している町の役場まで移動して,提出して受理して貰う。


 こうすることで、私は村の住人(この国の住民)として再登録されることになる。


 魔術師であるので、それから町に出て職を探すのも選択肢になる。

 魔導師になることを諦めてはいないが、なによりまず安定した生活基盤を得ないことには始まらない。



 なんで、住人として登録されることに必死になっているかというと、この国で生きていくのに、住民であるのと無いのでは、大きな違いがあるからだ。



 この国は、王国となってる。 名前はトサホウ王国。

 約500年前に幾つかの国が、一つにまとまって出来た国で王制をひいている。

 この国にある物は、原則として全て王の所有物である。

 人も物も何もかも。

 で、王よりそれらを貸し与えられて生活しているのが国民になる。

 その国民を管理するための権利を貸し与えられたのが、貴族を含む支配階級。

 貴族は、領主や町長などに管理する権限の一部を貸し与えて、末端の国民を管理する。


 支配階級の権力が絶大と同時に、管理する側は、その責務が強く求められる。

 町の発展や農耕の開拓、勉学の普及、いろいな事をしている。 人口の増加は最優先だ。

 流行病や、大量の失業者、飢饉によりる餓死者、盗賊による被害、そんなものを出したときには、管理する側の者はかなり強烈な罰を受けることになる。

 簡単に、一族もろとも首が(物理的に)飛ぶ事も珍しくないそうだ。


 だから、貴族やその下で管理する立場の者は、必死になって管理する。

 国民より贅沢をしているが、やり過ぎれば首が飛ぶ。

 そのおかげで、国民は比較的安全な環境での生活が保障される。

 とうぜん、その見返りでの労働力や成果を出すことは求められるが、国という檻の中で生きていく分には、飢える心配が無い。



 それだけが生きる道ではないけど。



 この王国内で、私の知っている限り、王国の支配下に入らない組織が3つあるらしい。


 一つ目が、教会。

 宗教だ。 これはこの王国だけでなく、この大陸全体に根付いている。

 王国も無視できない一大勢力とのこと。

 この王国内では、創造神を讃えている宗教のみが国から認められている。

 他の宗教もあるが、見つかれば排除されるので、密かに活動している、らしい。

 正直、協会関係者に会っても布教されなかったので何とも言えない。


 二つ目が、ギルドと呼ばれる組合。

 国という枠を越えて活動するため、国民の庇護下に無い人たち、らしい。

 ただ、国と競合している訳ではなく、共存しているというのが正しい所かな?

 王国も存在を認めて、一定の利益を納めていることで、上手く利用している。

 大きいのは、商業ギルド、次に冒険者ギルドで何でも屋、他にも魔術師ギルドだってある。


 ごめん"らしい"を連発しているのは、正確に教会やギルドという組織を知らないからなんだ。


 三つ目が、犯罪者。

 組織ではないけど。 犯罪者は、この王国においては人権が無いといっても良い。

 軽犯罪程度であれば、罰を受けることで罪を償ったことになるが、重犯罪と呼ばれる行為をした者は、残りの人生を重労働だけで生きていくことになる。 やり直しは無い。

 そういう所から逃げた人が、盗賊になったり犯罪者ギルドや闇ギルドを名のっているらしいが、詳しいことは判らない。



 私は、二つ目のギルドの1つ魔術師ギルドを選択肢に入れてもいいかもしれない。

 通常、魔術師・魔導師や一部の魔法使いは、国の管理下に置かれる。

 魔術師ギルドの人員は、国から管理下に置く必要が無い力を持っている者が寄せ集まって作られているギルドではないか、と推測している。


 国の管理下に無い魔術師は、それだけでたいした力も価値も無い魔術師であると言われる。

 仕事も足下を見られやすく、立場も必然的に低くなる。

 そういうことに見くびられないように対抗するために集まり、対応しているのだろう。


 おそらくは、魔術師ギルドに入っても、魔導師への道は無い。

 かといって、国民として生活しても、自分の時空魔法は都合良く使い回されるだけだだと思う。

 まずは魔術師ギルドと接触して、どのような組合組織であるのかを確認したい所だ。




 荷馬車が石を踏んで、揺れる。


 考え事の中から我に返る。


 御者はいつの間にか若い人に変わって、おじさんは器用に眠りこけている。

 家族連れ3人は、とりとめもない話をしている。

 そして、男性が1人は、目を閉じている風を装って、薄目で荷馬車の中を見ている。


 何事もなければ良いけど。

 この荷馬車に積まれている荷物は日持ちする野菜や日常製品、襲う価値のあるものでは無い。

 客は、男の子を含む家族3人と、男性1人、そして私。。

 盗賊や犯罪者が狙われる可能性が一番大きいのは・・・若い女性である私か?

 まぁ、そんなことは無いと思うけど。




 ここは一つ、私は狙う価値がないですよアビールが必要かもしれない。

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