第14話 ダンジョンを攻略しよう
翌日、昼間でぐっすり寝てから、まずは商会で一週間分の食料を調達する。
地下四十階であれば一週間くらいあれば、踏破できるだろう。
ライカは魔獣の肉を好んで食べるが、あまり美味しいものではない。オレは食料があったほうが幸せだ。
さっそくダンジョンに行く。
ライカも元気が有り余っている様だ。今までクッド村を出てからほとんど戦っていないもんな。オレと手合わせするだけだと物足りないのだろう。
一階ではスライムやゴブリンが出現するとニーナさんは言っていた
初めてのダンジョンだし、警戒して歩くか。
……
オレは一度も剣を振ることなく十階まで到達した。
ライカが魔獣を察知して、魔獣が気づく前に駆け出し、噛みつく。
魔獣を全部一撃で倒した。
久しぶりに戦闘できて血が沸き立つなと思っていたが、拍子抜けだ。このままどんどん進もう。
十階、二十階と十階毎に強いボスが出るらしい。
十階のゴブリンロードはライカの一撃で首が飛ぶ。
二十階はウルフロードだ。フェンリルの笛があるからなのか、襲ってこない。むしろお腹をこちらに向けてどうぞお通りくださいと言わんばかりだ。
ライカも戦う気がないらしく、大人しく戦わずに通過した。
二十階を過ぎてからはオレも退屈で戦いたくなってきた。
ライカに下がるように言うと不服そうに唸るが、言うことを聞いてくれた。
オークが群がって多く出てくる。オークの肉はうまい。保管してライカにも食べさせよう。
全て一撃で屠る。
まるで豆腐を剣で斬るかのような感覚だ。
魔獣が弱いのか。オレが強いのか。いや剣が良いのだろうな。剣をくれたフェンリル様々だ。
三十階のオークロードも対峙するが恐怖を感じない。
剣は使わず、ライカと魔法だけで倒すか。
オークロードは大きな斧を振り回しているが、知能は低い。
ライカのスピードに追いついていない。
オークロードが攻撃しようと斧を振りかぶると、オレがサンダーアローを使い、足止めする。
足が止まったところにライカが首元に噛みつく。
オークロードが苦しそうな声をあげ、床に倒れ込んだ。
これで終わりだ。拍子抜けにも程があるな。
せめて四十階のボスでは楽しませてほしい。
30階を過ぎると骸骨剣士が出てきた。アンデット系の魔獣だ。
剣を持っていて、当たりはしないが。
何と言っても数が多い。三十体はいるのではないか。こんなに多くの骸骨剣士が出るとはニーナさんから聞いていなかったが、問題はない。
ライカと上手く連携しながら突破する。
骸骨剣士一体一体は弱く少し物足りないが、まあ良い退屈しのぎにはなる。
四十階のボスは骸骨ロードだ。
手が四本あって、剣を四本持っている。動きが早いと言っていたっけ。
オレは剣を抜く。ライカには待機を命じた。タイマンだ。
四本手があるということは四回攻撃が飛んでくる。
速度アップのバフをかける必要もないだろう。
全て避けられる。
躱して、躱して、躱して、躱して、反転しながら斬る。
それを繰り返すだけ。
骸骨ロードは骨だけで構成されていて、肉はないから血が出ない。
ふむ。骨だから叩き割れば良いのか。
四発躱して、思いっきり足を剣でひっぱたく。
手応えあり。
骸骨ロードの足の骨が折れて、膝をつく。
オレは後ろに下がり、後はライカに任せよう。
躱す良い訓練になる。
その後、必死の抵抗を見せる骸骨ロードであったが、やはりライカの速度には着いてこれず、骸骨ロードの攻撃は当たらない。徐々に削っていった。
数分は経っただろうか。
骸骨ロードが床に倒れ込んで動かなくなった。
魔石と装備品を落として消えたみたいだ。
魔石と骸骨ロードの剣を拾う。
もうこのダンジョンでやることはない。
オークの肉をライカに食べされて、休憩したら戻ろう。
ライカが骸骨ロードの魔石を欲しそうな顔で見ている。
魔石は食べれないと思うが、ライカに上げるか。
ライカに渡すと食べた。
ライカが光に包まれる。大丈夫だろうか。ライカを観察すると楽しそうに駆け回っている。
どうやら無事らしい。
フェンリルに聞いておけば良かった。ライカが魔石を食べるなんて聞いていないぞ。
ギルドに戻って、換金でもしよう。ダンジョンで命のやり取りができると期待しすぎたオレが悪かった。
◇
ギルドに戻る。夕方か。往復数時間で戻ってこれた。街に戻る前に仮面を付ける。
ニーナさんに話しかける。
「ニーナさん。こんにちは。」
「あっライカさん。こんにちは。これからダンジョンに行くんですか。初級冒険者ですし、気をつけてくださいね。」
「いえ。今戻ってきたところです。素材を買い取ってほしくて。」
オレは骸骨ロードの剣とオークロード、ゴブリンロードの魔石を机に出した。
「えっ。」
ニーナさんが戸惑っている。
「これは、ライカさんが取ってきたんですか。」
「ええ。まあ。そんなところです。」
しまった、何も考えなしに素材を出してしまった。Eランクなのを忘れていた。
「調べますので、少々お待ちください。」そう言うと検品室へ素材を持ってニーナさんが出ていった。
一時間は待たされただろうか。日ももう沈んでいる。
「ライカさんお待たせしました。素材全て本物でした。こちらの金額で買い取らせていただきます。」
ニーナさんから差し出された袋の中を見ると金貨30枚は入っている。帝国騎士の一カ月の給与と同じ金額だ。一日で一カ月の報酬を貰える。なんて冒険者は楽に稼げるのだろうか。
「ありがとうございます。」お礼を言うと、ニーナさんが小声で話しかける。
「ライカさん。注意してくださいね。普通の冒険者は骸骨ロードを倒せません。ギルドマスターも警戒していました。色々と理由があると思いますが、目立ってますよ。」
オレは苦笑いするするしかなかった。
商会に直接売りに行けばよかったな。
「ニーナさん。ありがとう。気をつけるよ。」
そう言って、去ろうとすると、ギルマスのサンドラが現れた。
「待て。ライカ。いや本当はカノンか。」
もうバレたのか。警戒しながら、オレは唾を飲み込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます