親の七光りだとバカにされ帝国騎士団を追放されたので、もふもふ犬と冒険者をしながらスローライフを満喫する。戻ってきてくれと懇願されてももう遅いっ！～反逆の猟犬～

第15話 ギルド免許剥奪!?

　ギルマスのサンドラが嫌味な笑みを浮かべている。

　オレが偽名を使っていて『ライカ』と名乗っているが、オレがカノンだと疑っているらしい。

　「待て。ライカ。いや本当はカノンだろ。」

　オレは唾を飲み込んだ。もうバレたのか。さて、どう言い逃れしようか。

　もし言い訳してダメだったら、この街から逃げよう。

　逃げるが勝ちだ。俺にはここに居続ける理由はない。

　ノース鉱山を田舎だからと舐めていた。ギルドの情報網は恐ろしいな。早くて正確だ。

　それにしても、目だけ隠す仮面って意味がないんだな。失敗した。変装していてもバレるのであれば、ただの変態仮面になっているだけだ。

　「何のことでしょうか。私はライカです。そろそろご飯の時間なのでこちらで失礼しますね。」

　「そんな子供騙しで誤魔化せると思うなよ。」

　ふふんと鼻を鳴らして、サンドラが言った。

　「何のことを言っているのか、わかりません。」

　「とぼけるな。お前がカノンだ。」

　そう言うと、ギルマスのサンドラはドヤッと自分で言いオレに向かって指を差した。

　副ギルマスのニーナさんは引いた顔でサンドラを見ている。オレもこのおじさんは痛い人だと思う。

　ニーナさんの引いている顔、愛おしいほどに可愛いかったと付け加えておこう。

　「仮に私がそのカノンさんだったとして、その人の職種はテイマーなんですか。」

　勝利を確信して笑っていたサンドラがアゴに手を当てて、ムムムと悩んでいる。

　この人、意外と騙しやすそうだ。

　「それは確かに違う。カインは剣士か双剣使いらしい。一人で旅をしていて、帝国騎士の姿をしていると書いてあるな。」

　どうやら、帝国からの捜索書にはそう書かれているみたいだ。

　「そうですか。残念ですが、オレはテイマーですから、剣なんて全然使えません。一応剣は持っていますがうまく使えません。飾りみたいなものですよ。」

　「うるさい。うるさい。オレが言うからお前がカノンだ！　捕らえて帝国に差し出してやる！　憲兵こいつを捕まえろ！　」

　よくこの人がギルマスが務まるなと思う。ギルド職員も人材不足なのかもしれないな。

　ニーナさんは日頃からギルマスの対応の尻拭いで苦労しているのが目に浮かぶ。

　かわいそうだと思う。

　正直、同情する。

　サンドラの命令で二人の憲兵がオレに詰め寄ってくる。

　憲兵くらいであれば瞬殺できるが…憲兵を無傷で倒せばオレがカノンだと証明するようなものだ。

　困った。どうしよう。

　グルルルル！　と大きな声でライカが唸る、驚いた憲兵が距離を取る。

　「なんだ。この犬は！　俺様に逆らうって言うのか！　」

　ギルマスのサンドラに至っては、腰を抜かして床に座り込んでいる。

　それでもライカを指差し、文句を言っている。

　その負けん気は賞賛に値するが、ギルマスは犬が吠えただけで腰を抜かすのは単純にダサい思う。

　「お前たち、びびるな。カノンを捕まえろ！　」

　憲兵が捕縛しようと、俺にジリジリと近づく。

　その時、副ギルマスのニーナさんがサンドラに怒り出した。

　「いい加減にしてください。サンドラさん。私たちへの依頼は帝国にカノンさんがいた場合に報告するだけです。捕縛命令は出ていません！　何でもかんでも、自分の気分で決めないでください。おかしいですよ！　」

　憲兵はニーナの勢いに押されて、止まった。

　憲兵はどうして良いかわからないらしく、サンドラを見つめる。

　「ニーナは俺の言うことを聞いていればいいんだ。オレはギルドマスターだぞ！　お前らカノンを捕まえろ！　」

　サンドラが叫ぶが、ニーナも負けていない大きな声で言い返す。

　「サンドラさん、ふざけないでください。勝手なことをするのであれば、帝都のギルド本部に報告させていただきます。ギルドを私有化して、勝手な行動をするのは許せません。副ギルドマスター権限で本部に報告いたします。」

　そう言うと、ニーナは何かを書き出した。本部に報告書でも書いているのだろう。

　「まっ、待ってくれニーナ。それだけは辞めてくれ。そうだな。うむ。確かにニーナの言うことも一理ある。憲兵も今日のところは戻ってくれ。ご苦労様。いいか緊急事態は急に起きるものだ。いつまでも警戒を怠るでないぞ。」

　そう言うとサンドラは憲兵の背中を押して、ギルドから追い出そうとする。憲兵は納得できない顔を浮かべているが、しぶしぶとギルドから出て行った。

　サンドラは多分、頭は良くないと思う。自分の考えが正しいを思い込むのは盲信だ。そういう奴は戦場ではすぐに死んだ。

　「すみません。勘違いだったのであれば、オレも宿に戻りますね。」

　「ふんっ。運が良かったなカノン。次に会う時は必ず尻尾を掴んでやるからな。」

　そう言うと、サンドラさんはいい加減にしなさいと言われて、ニーナさんに叩かれた。

　おじさんが泣きそうな顔をしているのは見たくはない。

　お辞儀をして、ギルドを出ようとすると、ニーナさんと目があった。ニーナさんはサンドラにバレないようにオレにウインクした。

　ニーナさんはオレがカノンだってことを分かっているな。

　それでも秘密にしているのは、オレがギルドの貴重な戦力とみなされているからなのか。それとも嵌めて、帝国に差し出すつもりなのか。

　どちらかと言えば、前者な気がする。直感がそう告げている。ライカも懐いているようだしニーナさんはいい人だ。

　ニーナさんを信じてもう少しだけ、このギルドにお世話になろうか。

　カノンがギルドのドアを開けると、街中に緊急の鐘が響わたった。