第二十五話 ~入学前~ 染み出る異変
いつの間にか眠ってしまったらしく、ラランはベットの上で目が覚めた。
カーテンの間から光が差し込んでいる。
どうやら今日はいい天気のようだ。
腫れた目をこすって部屋を見渡す。
昨日のまま散らかった教科書と、黒いスス。
残念ながら昨日の出来事は夢ではなかったらしい。時計を見てみると、まだ朝の五時。家族はまだ起きてはいない時間だ。
夕飯も取らず、お風呂にも入らなかったので口の中も身体もベトベトして気持ちが悪い。
何より、泣きすぎて腫れた目が痛い。こんなに泣いたのはイタズラをして父に叱られて泣いた時以来だ。
とにかく冷やしたくて洗面所に向かうことにした。
「はぁ~目がいた・・・・」
まだ眠っている家族を起こさないように静かに部屋を出て、ソロリソロリと洗面所に向かう。
窓から外を改めてみると、今日もいい天気で空が美しい。
気を取り直して今日は何をして過ごそうかなと思う。
(お腹空いたな・・・朝ごはん多めに用意してもらおう、ハチミツあるかな・・・)
静かに居間を通り食堂の横を通り過ぎ、洗面所に向かう。
頭がかゆくポリポリ掻いて髪を触ると、寝ぐせがすごい。
「ふわ~・・・」
ポンプで水を出してコップで水を汲んで口をゆすぐ。
次に洗面器に水を張り、顔を洗って目を冷やす。
冷たさが心地よく、何度も繰り返して顔にパシャパシャと水をかける。
(今日は水遊びもいいかもしれないな・・・はぁ・・・お腹すいた)
顔を拭いてシャキっと目が覚めたところで鏡を見る。ブラシで髪をとかそうと思った途端・・・・・。
鏡に写った自分を見てラランは悲鳴を上げる。
「キャぁぁ!!!お母さま・・・来て!!早く!!!」
突然の大声に寝巻のまま母とドロシー、少し遅れて父が飛んで来た。
母がラランを見るなり息を飲んだ。
「ララン、どうしたの!・・・こ・・・これは・・・何・・・?」
ラランの美しい銀髪の頭がまだらに黒くシミのような箇所があり、黒いカビが広がったように銀髪の箇所と黒い髪の箇所が点在していた。
母が心配してラランの顔をよく見ようと手のひらでラランの顔を包むとラランの髪をかき上げた。どうしたのか様子をよく観察しようとすると、また母は驚きのあまり声を詰まらせた。
「・・・ララン?」
ラランの右の瞳の一部が黒くなっていた。
ラランは不安そうに母を見つめる。
「お母さま・・・・わたし、どうしちゃったのかな・・・・。」
ドロシーがラランの様子を見てオロオロとする。
「ララン様、一体何をなさったのです?インクで何かお絵かきでもなさったのですか?」
ドロシーは布を濡らしてラランの髪を撫でる。
「・・・私、何もしていないよ・・・。」
ラランは不安そうに母の寝巻の一部をきゅっと握り、母からの言葉を待つ。
母マリアはラランの身体を撫で、髪と瞳以外に異変の箇所を探す。
その一歩後ろから父トーマスが無言で立ち尽くし、その様子を見守る。
ラランは自分を診察する母の横から父の顔をそっと見る。
その眼があまりに鋭くて、怖くなり母の方にすぐ視線を移す。
(・・・どうしよう・・・・怖い・・)
自分の異変も恐ろしかったが、父のあの眼の方が恐ろしく感じた。
あの眼には覚えがあった。
そう、父が自分に向けるあの視線は、魔物を祓う時の邪悪なものを見る眼だったから。
ラランは母にぎゅっと抱きついた。
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