第二十三話 ~入学前~ ない方がいい才能

 しばらくの沈黙の後、ギリアムが先に言葉を発した。

「トーマス、ラランは闇の魔法の使い手だ。これは間違いない。彼女の属性は”闇”

何だと思う。」

トーマスは先ほどの喜びから一転、非常に険しい表情になった。

「・・・ラランが闇・・・。」

魔法が使える一族の中で、一人だけ属性が異なる場合考えられる理由は幾つかある。

両親が異なる属性の魔法の場合、どちらかの属性を受け継ぐがマリアは魔法が使えない一族の出身である。他に考えられることは不貞、呪い、凶の兆し・・・などあまり良い方向に考えられることは多くない。

特に闇の魔法と言うのは、呪い、暗闇、命を脅かす魔法が多いため、あまり良いイメージがない。

パっと突然現れる異属性の者は一族の中でとても目立つため、噂の種や好奇の目で見られることが多い。

とりわけ、光の魔法の一族の名家と呼ばれるエーベルスの中で、闇の魔法の使い手が現れることなど、聞いたことがない。

前代未聞、青天の霹靂、他に言葉が見つからない。

トーマスにとっては、困惑を通り過ぎて怒り、屈辱の感情が腹の底から湧き上がるのを感じた。

「なんてことだ・・・」

「トーマス、ラランに魔法をこのまま続けさせるか考えなければならない。

君も驚いているだろうが、彼女が一番戸惑っているはずだ。」

「ラランが魔法を使えない方が、まだよかった。才能がない方がまだマシだ。

なんでよりによって、闇の魔法なんだ・・・。

じゃああの髪は?首の証は?一体どうなってるんだ?」

トーマスの口調が荒くなる。

「才能なのか、もともとの素質なのが、それとも外部から何かの干渉があって今の状態なのか・・・それはわからない。思い当たる節はないのか?」

「あるわけないだろう!」

声を荒げて、ドンとテーブルをこぶしで叩く。グラスの酒が大きく波打つ。

「・・・すまない、ギリアム。今日でラランの魔法実技は終わりにしてくれ。次からはルルンとカミールを頼む・・・あの子たちはマトモなんだよな。」

「あの子たちに関しては問題ないだろう。もう『蛍』もできるようになっている。」

「・・・そうか、よかった。」

「ラランの事はどうする?」

「あの子のことは、これからはっきりさせる。ギリアム、魔法医の手配を頼む。

私はあの子の解呪を始める。マリアにも頼まないとな・・・」

解呪と聞いて、ギリアムははっとした。

「トーマス、解呪は必要ないのでは・・」

そう言いかけると、

「呪いじゃなければ、こんなことになるわけないだろう!

・・・こんなこと・・・。」

ギリアムは怒りに顔を歪めて何かを考えるトーマスにかける言葉も見つからず、黙る。

「本当に、ラランはもう講義をしなくていいんだな?ルルンとカミールには言っておいてくれ。」

「あぁ、すまないが頼む。料金は二人分にしてもらって構わない。

それから、魔法医の手配忘れないでくれ。」

「・・・わかった。これで失礼する。」

「・・・あぁ、すまない。」

そういうとトーマスは考え込むように顔を両手で覆った。

その様子を見てギリアムは立ち上がり、ドロシーに帰ることを伝え屋敷を後にした。

「魔法医か・・・。」

ギリアムは虫の声を聴きながら、ラランのことを考える。

歩きながら気が進まないが自分が知っているツテを考えながら魔法医の見当をつけ始めた。





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