第十五話 ~入学前~ お説教
ラランの家は父は魔法診療所、母は医療診療所を開業しており、自宅の敷地内にそれぞれ建屋を設けて各々診察を行っていた。
ギリアムは診察の合間に
「トーマス、ちょっといいかな。ラランの事なんだが・・・・」
ギリアムは父トーマスに事のすべてを報告した。
ラランの基礎知識習得は問題ないこと、ただ実技が全く進まないこと。
ルルンとカミールの方がコツを掴み、すでに初期の蛍の魔法を習得しつつあること。
実技が進まないことで、ラランのやる気が下がってしまっていることを手短に説明した。
トーマスは黙って聞いていたが、
「ギリアム、いつも感謝している。ラランはよくやってるとは言い難いようだね。
最初に上手くいかないなんてことはよくある話だ。それなのにもうやる気が見えないなんて、甘えているにも程がある。
すこし甘やかしすぎたのかな・・」
「トーマス、ラランはよくやってはいると思う。本人も上手くいかない理由がわかっていないようだ。コツは掴んでいるみたいなので、きっかけさえあれば急成長すると思うんだが・・・・、何か・・・何かが・・・」
そこまでギリアムは言うと考えて黙り込んだ。
「ギリアム、最初に上手くいかないことなんて、君は教え子で散々見ているだろう?ラランは落ち着きないところがあるし、すぐに結果を求めようとしすぎなんだ・・。全く。ラランには私からも言っておく。引き続き頼むよ。もういいかな。次の予約が入ってるんだ。」
ギリアムは首を横に振ると、トーマスの診察所から出るとドロシーに次の講義の予定を告げて、屋敷を去った。
*
ラランはその日、夕食の後で父の部屋で散々お説教を食らうことになった。
たった一か月の講義程度で結果が出ないからと投げやりなこと、ギリアムにお礼も言わず勝手に部屋で閉じこもって出てこなくなったこと。
そもそも魔法とは・・・・心構えとは・・・日頃のラランのおてんば具合・・・
魔法とは全く関係ないところまでほじくり返されて注意され、ラランはうんざりした。
「ララン、いいかい?魔法というは日々の積み重ねなんだよ。すぐに結果を求めようとするのはラランの悪い癖だ。始めた以上はできるようになるまでがんばるんだよ。それは約束だ。それから日々のおてんば具合だけど・・・」
また延々とお説教がくりかえれる。
(また・・・最初に戻っちゃった・・・)
ラランはげんなりして反省したように
「はぁい・・」
と適当に返事をする。叱られると余計にやる気なんていうものは失われるものだ。
ラランは怠けている訳でも頑張っていない訳でもないので悲しくて悔しくてわかってもらえないことにがっかりした。
長いお説教で父の部屋から解放されると、ラランは大きなため息をつく。
(がんばってるんだけどなぁ・・・)
父に言われたこと、自分が出来ない場面を思い出すと涙が浮かんでくる。
『無理して頑張らなくていいよ』
もしかしたらそんなこと言ってくれるんじゃないかと思ったりもしたけど、甘かったようだ。
またできないことを続けなければいけないことに憂鬱になりながら、ラランは部屋に戻ってベットに潜り込んだ。
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