第十三話 ~入学前~ 進まない実技
その次の実技の講義でも、ラランは上手く『蛍』の魔法を発現させることができなかった。
今日もギリアムからの、
「ここまでにしましょう・・・」
の言葉で終了となった。
ギリアムを見送り、がっかりしながらラランは部屋に戻ると、ばったりとベットに倒れ込んだ。
疲れとギリアムの言葉が頭をぐるぐる回る。
「うまく集中が最後の段階まで続いていないようですね。
集中を切らさず、最後まで魔法の力を手のひらから外まで送り出すようにしてみましょう。」
と繰り返し教えてくれたが、ラランには疑問があった。
手の平のところまで力が来ているのは感じている。
外に出そうとすると力が道に迷っているように身体の中に逆戻りしてしまうのだ。
集中が続かないことがギリアムは成功しない原因だと言うがどうにも違う気がする。
ラランは光の紋章のクッションに顔を押し付けながら足をバタバタとして悔しがった。
「なんでできないんだろう・・・」
ぽつりとつぶやいたラランは考えようとすると・・・
その内、失望と疲れで眠りの淵へゆっくり落ちていくのだった。
実技を始めて一ヶ月、六月に入ってもラランの魔法が進歩することはなかった。結果は全て初日と同じ…いや、今では光すら出なくなり手の平に蜃気楼のように小さな揺らぎが見えるだけであった。
あれだけやる気に満ちていたラランは、最近ではすっかり意気消沈して口数も少なくやる気もあまり見られなくなっていった・・・。
「はぁ・・・ごめんなさい。」
小さくラランは声を振り絞るようにつぶやくと下を向く。
最初こそ慰めや励ましの言葉をかけてきたギリアムも眉間にシワを寄せて考え込むばかりで何も言ってくれなくなった。
それよりも最近はチラチラと覗くように庭に出て様子を見に来てラランの真似をするルルンとカミールはラランとギリアムの様子を見ながら、自分たちも真似をし始めた。
始めの頃こそ形だけだったが、その内にルルンとカミール両方ともコツを掴んだのか、手の平から光を出しつつあり、二人の方がよほど魔法への可能性を大いに感じさせ始めていた。
ラランはその様子を見て胸がチクチクと痛んだ。
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