第十話 ~入学前~ 魔法までの歴史と道のり

 どこで魔法の学習をするかという話になり、やはり二人で集中して学ぶのあれば、ラランの部屋がいいというギリアムの提案で、リビングから移動してラランの部屋に向かうことになったが気の利いた会話の一つもなかった。

(ちょっと怖そうだな・・・)とラランは思ったが、そんなことを口に出せるはずもなかった。

ギリアムは見た目通り、怖そうで落ち着いた物腰の教師だった。真面目で厳しそうで言葉一つ一つに重みがった。

ラランはこの日のために綺麗に片づけた自分の机に向かって座る。

その傍らにギリアムが立つと、そっと二冊の本と美しい光の紋章の刺繍が沢山入ったノートを一冊手渡された。

『光の魔法のはじまり~成り立ちと歴史~』

と書かれた本には、最初の光の魔法使いが神々しく表紙に描かれている。

『光の魔法~初級編~』

の本には紋章が表紙に大きく描かれており裏表紙にはこの本で学ぶ魔法陣が判子のよに綺麗に並んで描かれている。

「この本を使って今日から少しずつ学んで参ります。

私も父上もこの本から学んで参りました。

今日はまず、光の魔法の成り立ちと歴史からです。

それから、このノートは私からの贈り物です。重要なところ、繰り返し書いて覚えて欲しいことをこちらに書いてください。それでは初めていきましょうか。」

(ありがとうございます)とノートのお礼を言う前に授業が始まってしまう。

ギリアムは冗談を言ったり、和ませることを言うような人物ではないらしい。

ギリアムの言う通り、バタバタと新しい匂いのする本を慌てて開く。

「それでは、さっそく初めてまいります。まず、目次から三ページ目・・・」

ギリアムの言う通り、三ページ目を開く。

なんだか学校の授業の続きのようで、あくびが出そうになった。

さすがにまずいとあくびを噛み殺し、ギリアムの言う通りの場所を目で追う。

(早く、魔法の練習にならないかなぁ・・・・)

ギリアムの読み上げる声を聴きながら、ラランはもう一冊の魔法の本に視線を飛ばす。

それを見透かすようにギリアムから声がかかる。

「ララン様、魔法を使ってみたい気持ちはわかりますが、まずは何事も基本から。

魔法は心構えがまず第一です。

光の魔法は魔法の中でも知識と心構えが重要になってきます。

ここはきちんと頭に入れておきましょう」

静かだが厳しく圧を感じる物言いに思わず背筋が伸びる。

こちらの考えはお見通しらしい。

「はい!」

真面目そうに返事をして、視線を本に戻す。


(勉強するって、なんでも面倒なんだな・・・)

ラランは手に持った本の分厚さを指で触って確かめ、この先を思いやった。

魔法の実践まで道のりは遠い。









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