第七話 ~入学前~ ラランの素質
ラランが十二歳になる春のこと、ある夜母マリアが食堂で一息ついていると、父トーマスが隣に座った。子ども達も使用人も休んでいて夫婦二人の時間だ。
「どうしたの?今日は無口ね。」マリアが静かにトーマスに話かけると、
「もう、ラランも大きくなったね、そろそろラランにも魔法を教えようかと思っているんだ。」
マリアは驚きはしなかったが、とうとうその日が来たか・・・と思った。
「そうね、素敵だとは思うけど、ラランはがどう思っているかじゃないかしら・・・」
「ラランの左耳の後ろには、証があるのは君も知ってるだろう?
それに、あの銀髪の鮮やかさ。
ラランには間違いなく素質があると思うんだよ。
素質があってその力を活かさないなんて、そんな勿体ないことできるかい?
魔法の教育は、ラランを伸ばすには絶対に必要だよ。」
トーマスは熱っぽくマリアに語った。
魔法を使う力があるものは身体のどこかに証と呼ばれる痕がある。
入れ墨のようにはっきりとしたものであったり、ミミズ腫れのような形で現れることもある。それに加えて見た目でわかるのが体毛・頭髪に違いがでる。
トーマスのエーベルス一族は光の魔法を得意としており、光の魔法の使い手は金髪、もしくは銀髪。ダレンのように赤い髪を持つものは火炎の魔法・・・・といった具合におおよそ見当がつくのであった。
力が強ければ強いほど、証ははっきりと、頭髪や体毛は鮮やかになる。
ラランの証は左耳の後ろにはっきりとではないものの、入れ墨のような光の証の形が浮かんでおり何より銀髪の鮮やかさは兄弟随一であった。
父が期待するのも無理はない。
「あなたの情熱はわかりましたけど、ラランがどうしたいかだと思うわ。
人を救いたいとはラランは望んでいると思うけれど、
それが魔法を使ってなのかそれ以外なのかははっきり聞いたことはないの。
あの子が学びを選べばいいんじゃないかしら?」
マリアの最もな意見にトーマスはしばし黙って考えた後。
「ラランにどうしたいか聞いてみよう」
との結論に至ったようだった。
マリアは穏やかに微笑んで、
「それがいいと思うわ、温かいお茶入れるわね」
とトーマスの肩を優しくなでた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます