第六話 ~入学前~ 魔法のない生活

 月日が経ち、ラランが十一歳になる年の夏になった。

あれから毎年ダレンが夏になると遊びに来ていたが、叔父のザンドが少し寂しそうに「今年はダレンは来ない、一家とラランによろしく」

と伝えに来た。

ラランはがっかりしたが、少しホっとした部分もあった。

毎年、着々と魔法騎士として武術と魔法を身に着けていくダレンと比べて、

自分は何も成長していないと感じていたからだ。

七歳の秋に自己流の魔法に失敗して以来、ラランは魔法と一切関わりを持とうとしなくなった。いや、関わっていけないと思ったのだ。

今まで大好きだった魔法から離れ、別なことに熱中しようと思った。

友人と今まで以上に積極的に遊ぶようになり、魔法の代わりにキラキラするアクセサリや余った布でブローチやぬいぐるみを作ることに熱中した。

以前であれば父の仕事場ばかり覗いていたが、

今は母の診察室を覗いては簡単な手伝いや掃除を手伝った。


母マリアは最初とても驚いた。

あれほど魔法に憧れていたラランが、急に自分の手伝いをするようになったからだ。

しかし、年頃になってきて女性としての母性が少しずつめてきた程度にしか思わなかった。なぜなら興味の対象が変わったことよりも、自分の手伝いをしてくれることが嬉しかったからだ。

そのまま何事もなくその年は過ぎ穏やかな時間が過ぎていった。






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