第四話 ~幼少期~ 夏の間の遊び相手と夏休みの終わり

 ダレンは顔の青あざと引き換えに遊ぶことを許された。

ラランとダレンは庭で思い切り水遊びをし、ルルンとカミールもそれに加わった。

寒くて震えるまで遊んで水がめが空っぽになるまで遊び、その後はドロシーに捕まってシャワーを浴びせられ、おやつを食べた。

楽しくて楽しくて、あっという間に時間が過ぎていった。

ラランとダレンはまた、魔法使いと魔法騎士ごっこをした。

ルルンは囚われのお姫様役、カミールは伝説の魔物になりきってダレンを追いかけまわした。ダレンがやられるとラランが回復魔法で助けて、再び魔物に立ち向かうストーリーだ。

家が壊れるとドロシーが何度か注意しに来たが、伝説の魔物よりそちらの方が迫力があって怖かった。

そのうち、伝説の魔物役のカミールより、ドロシーから隠れたりやっつける作戦を立てたりして四人は盛り上がって遊んだ。

夕方になるとザンドが迎え来て、ドロシーと立ち話をしてダレンを連れて帰った。

ザンドもラランの家に遊びやる方が、ダレンのやる気につながることが分かったようで、しぶしぶながら承諾したようだった。

「ご迷惑でしょうに申し訳ないが・・・」

ザンドは頭をガリガリ掻いて申し訳なさそうに頭を下げた。

ドロシーは家主も承知しているから大丈夫ですよと笑うとやっとザンドは安心したようだった。


そこから毎日、午後ダレンはラランの家に遊びに来るようになった。

仲良くなるにつれて、ダレンはいろいろなことをラランに話した。

自分は帝都に住んでいて、魔法騎士の一族であり強い魔法騎士になってお城に仕えるようになるんだということ。そのために帝都から夏の間ザンド叔父さんのところに一人で来ているのだということ。たまに母様が恋しくなること。剣を習いたかったけど、槍の方がいいからと槍を習っているのだということ。

帝都はたくさんおもちゃが売っていて、ラランにも見せたいということ。

帰る日にちが待ち遠しかったけど、今は帰るのも嫌だと思うことがあるということ。

ラランも自分のことを同じくらい喋った。

父と同じように証が自分にもあって、光の魔法使いになるんだということ。

魔法で困っている人達を助けてやるんだということ。

ダレンがもしも悪い魔法使いに会ったら自分が必ず助けてあげると言った。

「それじゃどっちが騎士かわからないだろ!」とダレンは口に空気を膨らませた。

そして二人でまたケラケラと笑った。


こうしてラランの夏休みが終わる一週間ほど前、ダレンが帝都に帰る日が来た。

帰るのだと伝えに来たダレンの目には大きな涙が浮かんでいた。ラランもそんなダレンを見て泣いた。

帰りたいと泣いていたダレンが帰りたくないと泣くなんて・・・と叔父のザンドは驚いていた。夏休み世話になった礼にとザンドはラランの家に山ほど野菜とお酒を置いて行った。トーマスとマリアによろしく伝えてほしいと言うと、ドロシーはわかりましたと答えた。

「ララン、また来年来るから!」

ダレンは力強く言った。ラランは何も言えず、うんうんと頷くしかできなかった。

ダレンは何度も振り返り手を振った。

ラランもルルンもカミールも見えなくなるくらい手を振り見送った。

来年また会えるようにとラランは祈り、夏休みが終わろうとしていた。


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