第弐骨 頭《こうべ》④
■参
警察は予想外にも僅か数分という早さで僕らの前に現れた。
驚いている僕らに、『
「死体を見つけたっていうのは、おたくさん達ですかね」
「えっと……はい」
余計ややこしくなりそうなので、櫻子さんに黙ってるようにアイコンタクトしてから、僕は山路巡査の質問に応じた。
「死体って言うか、骨だけなんですが」
「骨?」
「ええ、多分頭蓋骨の一部じゃないかって」
「これなんですけど」と、僕はおそるおそる山路さんに頭蓋骨を差し出した。
「……これ、本当に人間のなんですかねえ?」
山路巡査が、
「あの……そうらしいです」
「へえ? 犬とかアザラシとか、そんなんじゃないの?」
確かにこれだけじゃ、人骨とはわかりにくいだろう。どう説明しようか一瞬僕が
「
「……おたくさん、随分詳しいね」
例の如く、人を
「君が無知なだけだ」
「櫻子さん!」
このままではまずい。途端に悪くなった空気を払うために、僕は慌てて二人の間に入った。
「あの、櫻子さんは、大好きだった
「検死に?」
露骨に「
「ええ。正確には、大学の法医学教室の先生らしいんですけど、警察の依頼で遺体の解剖をしていたそうです。今はもう、ご病気で引退されているんですが」
言ってもいいかと、櫻子さんの表情を
すると、みるみるうちに山路巡査の表情が変わった。
「へぇ! 先生の!?」
「あ、やっぱりご存じなんですか?」
「ご存じって……そりゃあキミ、有名な先生でしたから!」
どうやら、僕の想像以上に叔父さんの神通力は強力らしい。山路巡査は「そうですか、
「そういう訳で、多分、櫻子さんがいうのに間違いはないと思うんですよ」
「はぁ……じゃあ、そう
「事件、ですか?」
やっと受け取る気になってくれたらしい山路さんが、僕に手を伸ばしてきたので、やや乱暴なぐらいに急いで頭蓋骨を押しつけると、山路さんは頭蓋骨を受け取り損ねてしまった。
「ひぃッ」
ほとんど同時に僕と山路さんは悲鳴を上げて、二人でお手玉のように頭蓋骨を空で転がす。二人ともキャッチしようと阿波踊りしたのも空しく、結局僕らは骨を砂の上に落としてしまった。ヤバい。こんな事をしたら、絶対に
「それで、事件とは?」
そんな僕らの
「え、ええ、すぐ近くで、ホトケさんが見つかりましてね」
「すぐ近くって……海でですか?」
「そうですよ。ここから五kmも離れていない所で。水死体なんですけどね」
お手玉騒ぎの冷や汗が乾く間もなく、そんな近くで……と、僕は背筋がぞっとした。下手をしたら、その死体を僕らが見つけていたかもしれない。
「だから、てっきり見つかったホトケさんに関係あるかと思って、飛んできたんですけどね。一晩やそこらじゃ、こんなに
苦笑いを浮かべながら、山路さんは櫻子さんの腕の中の頭蓋骨に、もう手は伸ばさなかった。平静を装ってはいるものの、どうやら彼もこの骨に触るのが嫌らしい。
「それで、すぐここにいらしたんですね? 随分早いものだから、ちょっとびっくりしてたんですよ」
「ははは、じゃあ内緒にしておいたら、仕事熱心だと思われたんですね。言うんじゃ無かったかな」
山路さんは
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