第4話『検証』
さて、まずは封筒を作らねばなるまい。
(確かこのあたりにパトロンから届いた手紙の封筒を溜めておいたはず……)
私は使用済の封筒を取り出し、慣れた手つきで裏返し貼り合わせる。
「教授…… 巧すぎっす……」
「なんだ!! その目は、下手なよりも巧いほうがいいだろうが」
「でもなんだか……」
「なんだ!! はっきりいいたまえ!!」
「セコイ」
「黙れ!! セコイっていうな!!」
「だって、教授が言えっていったんじゃないすか」
「うるさい!! ほら出来たぞ」
私は作った封筒をエドガーへ渡す。
するとエドガーは新聞紙を鋏で切り始めた。
「じゃあ、お札の代わりはコレを入れるっす。で教授、封はしたんすか?」
「ああ、この両面テープでな」
「じゃあ、これで完成っすね。で教授、どんなふうに入れたんすか? なるべく正確に再現してほしいっす」
「どんなふうにって、普通にこうしてだな……」
私は封筒を受け取ると、一番上の引出しへ押し込んだ。
「入れたってよりも詰めこんだって感じっすね」
「うるさい!! 入れば同じだ」
間違いではないがエドガーに指摘されると腹立たしい。
「でもこれで教授のいう『封筒にお金を用意して引出しに入れた』っていう状況の再現は完了っす」
「まあそういうことだな。あとは鍵をかけたはずなんだが、どうする?」
「そうっすね……教授が引出しを開けた時はかかってなかったんでしょ?そのままでいいんじゃないすか?」
「そうか……なんだか釈然としないが、まあいいだろう」
「ところで教授? あとはどうしてたっすか?」
「あとは研究室の方へ行き、窓際で桜を見ていたのだが」
「じゃあ行ってみるっす」
私達は窓際へ行きヒラヒラと舞う桜を眺める。
桜の花弁が幾重にも降り積もり絨毯のようである。
(あぁ、やはりここの桜は綺麗だ。心が和む)
「教授? そういや腹減ったっすね。なにか食べるものないっすか?」
せっかくの桜が台無しである。
エドガーには桜を愛でる気持ちは無いのだろうと半ば諦めつつ給湯室の冷蔵庫へ向かうのだった。
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