バウンダリ編 第4話 終息

 ギャアギャアとなにかの鳴き声が近づいてくる、それも10や20じゃ利かない、大量に来る気配がする。

 流石に先生も、

「みんな逃げろ、2階へ行くんだ! モンスターは階を超えてこないはずだぁー」

「にげろぉー」


 やっと皆が状況を把握したのか逃げ始める、だが足場が悪いためスピードは出ない。

 どんどん鳴き声と足音は近づいてくる。


 奥の方で、声が聞こえる。

「たすけてくれー・・・モンスターの氾濫だぁ・・・」


 最悪だ・・授業でも習ったが氾濫時は入り口からもあふれる、2階に上がってもだめだ・・・


「先生、武器はないのですか?」

「はあはあ、無い、探索者の武器は、皆持っていってしまった」

「そうですか」


 俺は、霧を体内で循環させ軽やかに走っているが、今こんなことを伝えても直ぐにできるとは思えない・・・

 そのうち、後ろに大量のモンスターが見えてきた、やばい後ろの方の生徒が追いつかれてしまう・・・

「おおい、ともやぁ逃げろうぉぉ!」


 もう、モンスターに飲まれてしまう・・・・

 立ち止まり、先日の水を思い出す、手のひらに水の玉を作り打ち出す・・・


 水玉に当たったモンスターの上半身がくだけ飛ぶ、良し使える自分だけではなく周りの霧も使って連続して打ち出す、数が足りないので周辺にも水の玉を作りそのまま打ち出す・・・


 その様子を回りの生徒や先生が、呆然と見ていた・・・


「あれって、魔法?」

「そうだよ、どう見てもそうでしょう」

「深見・・・いったい?」


 導人が攻撃を始めてから、モンスターはこちらに近づいて来れなくなっていた。


 やがて30分も経つと、奥から現れるモンスターはいなくなり氾濫は収まった。


「はあ、疲れた‥‥」

 気が付くと、みんなが周りを囲んでいる。

「あれ? みんな無事?」

「ああ、お前が攻撃してくれてからは、一切こっちに来なくなったからな、であれは魔法か?」

「魔法なんですか?」

「なんとなく水の球を作って打ち出していただけなんですが・・・」

「自分でもよくわかりません」


「どう見ても、魔法だろう、他にも何かできるのか?」


「えーと、周りに霧みたいな物があって、それを体内に取り込み循環させると力が強くなります」

「ほかには・・・」


 手のひらに霧を集め、燃えろと念じると炎が球体となった。


「ほかにもできるみたいですね」


「すげー」

 周りにいた、友也や達男が騒ぐ。


「とにかく、助かった、おおい、みんな集合! 点呼を取ろう」


 探索者は残念だが全滅のようだ、が生徒は全員無事だった。

 みんな何とか、地上に戻り探索者協会へ報告、その中で導人の使った魔法について報告しない訳にはいかず、報告を受けた探索者協会は騒然となった。

 後日導人は呼び出され、実演することになる。


 史上初の魔法使いとして、のちに賢者とされる深見導人の伝説の始まりとなった。

 後日、霧は名称を魔素とされ、今まで謎とされていた法則の原因と認識された。


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