バウンダリ編 第2話 発見

 病院から帰り、制服を確認する、今3年だからほとんど着る期間がないわねと嫌味を言われる、実は1月前に新学期に合わせ制服を買ったばかりだったのだ。

「もう伸びないでしょうね?」

「えーー、分かんない」

「え~、明日も買いに行くのは、さすがにやめてちょうだい」

「善処します」


 どうすれば善処になるのかは分からないが、とりあえずそう答える。


 夕飯の時に、妹と父さんに説明した、父さんは高2の時に1年で10cm位伸びたそうだが、流石に1晩では無いなと笑っていた。

 妹:深見 凛(ふかみ りん)12歳は、反応なしだ、ちなみに朝目覚ましを止める犯人はこいつだ。


 風呂から出て、部屋でボーッとしているとふと、昼のテレビで見たD因子の話が頭の中に浮かんだ・・・

 すると、目の前に何か流れを持った煙が見える、んっ煙?いや霧か? なんで上から下へ・・いや、ちょっと斜めか、手を伸ばして見るが何も感じない、が体に少し吸い込んでいる?


 手を伸ばしたまま、意識的に手の中に入ってくるように考える・・・すると掃除機のように手のひらが霧を吸い込みだした。

 少し体が熱くなる、慌てて止めて体に入った霧を意識すると、血液の流れに沿って移動しているのが分かる。

 何だこれ?

 手のひらを見ながら霧を集めるように意識すると、最初は小さな旋風が起こり、やがて球になった・・・霧だからあまり集めると濡れそうだと思ったら、いきなり霧の球が水の玉になった・・・・


 何が起こった?? 今もまだ水の玉が手のひらの上で回転している・・・


「えっ・・」


 どうしよう、濡れたら困るので窓を開け外を見る、人が来ていないのを確認し道路へ水の玉を捨てた・・・・すごい勢いで飛んでいき道路に当たったというより着弾した「ドン」という音が響き渡り少し周りが振動する。


 周りの家で幾つかの部屋が明るくなり窓が開く・・・


 少しの間、窓をあける音とかしていたが、やがて静かになった。


 自分の手のひらを眺めながら、ふと霧が見えてないことに気がついた。

 あれ?と意識するとまた見え出した。

 意識をそらすと、また見えなくなった・・・


 意識次第か・・・


 体の中を流れる霧に意識を集中し動かしてみる、動かした先が暖かくなる、これはなにかに便利だなと考えながら、マグカップを握ると取手がくだけた、うわっと思い落下しかけたカップ本体を空中で捕まえる・・・そして・・握りつぶしてしまった・・・


「熱つー」


 風呂上がりで、首にかけてあったタオルで床を拭く・・・

 なんて日だ・・・・


 くだけたマグカップを掃除して、霧を意識しながらなんとなく、動画で有名になった超ショートストロークの1寸パンチを突き出した、パンチとは思えないボッと言う音を出した、それと同時に床からもミシッという嫌な音が・・・。


「へっ」

 

 まるで拳の通った所の空気がなくなったかのように、穴が空いたイメージが見えた・・・実際は不明だが、とても危険なことがわかった。


 その後ベッドに転がり霧が何かを考えながら、まるで物語に出てくる魔法みたいなことができることに興奮していたが、気がつけば寝ていた。

 意識を失いながらそういえば、昨夜は寝てなかったと思い出す。


 目覚ましが喚き出す少し前に、目が覚めたので起き出しトイレへ、顔を洗いダイニングへ行くと「今日は伸びて無いようね」と母さんから確認が来た。

 やはり制服代が響いたようだ。


「ああ今日は、異常がなかったよ」

 と言葉を返す。


 朝食を、もぎゅもぎゅと取り、部屋に戻ると新しい制服を着込んで学校へでかけた。


 昨日休んだだけなのに、長く休んだ気がする。

 教室に到着しドアを開け、入ると一部の視線がふとこっちを見た後、流すように別に向いたと思ったら向き直って来た・・・


「「「おおっ!」」」


「どうしたんだお前、整形か?」

「馬鹿かお前、整形でたった一日でこんなに背が伸びる分けないだろうが」


「じゃあどうしたんだよ?」

「分からない」

「分からない?」

「ああ」


「寝ていたら、体中が痛くなって気が付いたらこうなった」

「なんだそりゃ、訳が分からないけど、いいなあ・・・180cmくらいか?」

「そんなにはない177cmくらい」

「すげえ」


 ワイワイしていると、先生が来た。


「おお、深見?・・・深見だよな?・・・無事に来れたか、体調はどうだ」

「今日は問題ありません」

「よし、それじゃあ明日の遠足・・・じゃないダンジョン見学について説明する、プリントを後ろに回してくれ」


「よもつくにダンジョンに明日行く、集合は学校でいつも通り8時20分持ち物はリュックに詰め込めるだけ、手は常時空けておけるようにな、ゴミは各自持ち帰りだからゴミ袋も用意すること、入ダンは10時から3階まで潜り食事して帰ってくる出ダンは14時だまたバスで帰ってきて15時解散だ」


「ああそうだ、武器は持ってくるなよ、毎年馬鹿なことをするやつが出るが、周りにはD探索の専門家が付いてきてくれる」

「探索者以外が武器を持っていると、立派な銃刀法違反だ逮捕されるぞ~分かったな」


 ダンジョンか、大昔からある謎の多い遺跡? 洞窟だったりもするから、なんて言えばいいんだろう。


 授業が終わると、明日の持ち込み用にいつもの友人と一緒に買物に行った、そして必ず誰かが言い出すバナナ問題、誰も持って行かんだろうそんな物、言い出したのは爺さんが子供のときだって言ってたし。


 でもうちの爺さんのときは、出身がトオサなので遠足には酒盛り用の酒は何本までですか?っていうのが流行っていたって言ってたな。

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