第102話 貴重な4日間②
集中治療科の廊下の時計は午後10時をさしていた。ニコラスは手術を必要としたが、術後の経過はきわめて順調で、担当の医師が言うには驚くほどの回復ぶりを見せている。
待合室には彼の両親がいた。息子の容態について説明を受けたばかりだった。警察からは、ニコラスが大学院でプレッシャーにさらされていたこと、殺人事件に関与した疑いがあったこと、しかし他の人物の供述によって容疑は消えたことなどを知らされた。
携帯端末に残された文章を見せられると母親は涙を浮かべ、父親はその肩をしっかり抱いた。今は息子との面会を心待ちにし、寄り添って椅子に座っている。
レンツォはその光景を廊下から眺め、立ち去ろうとして足を止めた。
考える時間はほとんどなかったが、自分がどうしたいかは分かっている。何を望んでいるかも。
スマートフォンでチャット画面を立ち上げ、マイクに向かって言った。
「ステファニア、ひとつだけ言いたいことがあるから聞いてほしい。君はおれにとって大切な人だ。この関係がどこに向かっているのか知りたいと言ってたけど、今なら答えられると思う。連絡がほしい」
そして音声メッセージに既読がつくのを待たずに車へ向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます